『ETC2.0』メリット呼びかけ…再セットアップに助成金

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ETC2.0セットアップをしたことの証明書
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2000年4月以降、普及が進んだETCは今年9月末には車載機の総セットアップ累計6800万件を突破。一方で普及が進まないのがDSRC車載器で、国土交通省はその機能をフル活用できる「ETC2.0」を8月よりスタートさせたが、3月末まで再セットアップ助成も実施中だ。

◆ETCとETC2.0の違い

そもそもETCで使われている無線通信はDSRC(狭域無線)と呼ばれるもので、路側と車両側との間で双方向通信ができることを特徴としている。電波自体は従来のETCでもETC2.0でも同じだが、変調方式を違えて通信速度が異なっている。ETCでは1Mbpsなのに対し、ETC2.0では4Mbpsとその差は4倍もある。つまり、より多くの情報がやり取りできる“進化形ETC”がETC2.0というわけだ。

すでに2011年からは従来のETC機能に加え、路車間通信による「ITSスポットサービス」を高速道を中心に展開。DSRC車載器であれば、道路上で発生した様々な事象をカーナビの画面上に表示して告知してきた。今後は「ETC2.0」へと機能アップし、“道路を賢く使う”サービスとして、走行情報をビッグデータに活用して渋滞考ルート探索に反映させる。さらに2016年以降は料金所の乗り降りでターミナルチャージがかからなかったり、経路別の料金優遇策も講じていく予定になっている。

注意しておきたいのは一部報道であったETC2.0の告知だ。国土交通省の資料によれば「ETC2.0は8月販売開始(7月より一部先行)」とあるため、これをそのまま受け取ると8月以降販売されたものだけが対象になるように思える。報道内容もこれに沿って書かれたものと思われる。ところが実際はそうではなくて、既に販売されてきた「ITSスポット」対応のDSRC車載器でも再セットアップすればETC2.0対応車載機へバージョンアップが可能なのだ。

◆7月1日以降セットアップしたDSRC車載器はすべてETC2.0対応

この件について国土交通省に確認をしてみた。担当者によると「8月以降販売されたDSRC車載器は確実にETC2.0対応車載機となるが、従来のDSRC車載器でも再セットアップすればETC2.0として使えます」という。

ならば、どうしてこのような告知を行ったのか。「8月以降セットアップすると車載機は自動的にETC2.0として登録されるため、この時期以降にDSRC車載器を購入すれば確実にETC2.0となるという意味で“販売開始”としました」と担当者は説明する。

しかし、この表現では「8月以降に販売されたDSRC車載器でないとETC2.0は利用できないのか?」と思われても仕方がない。しかも、DSRC車載器については、登場当初から名称が何度も変更され続け、ようやくETC2.0で落ち着きそうな状況だ。一部メディアで誤った報道がされたこともあり、利用者間でDSRC車載器に対する誤解が生まれるのもやむを得ないだろう。

ところが、この件を販売店に確認するとスケジュールについて別の話が出てきた。「7月1日日以降からはETC2.0でセットアップできるようになっている(イエローハット千葉ニュータウン店)」というのだ。先の担当者によると「販売店によって対応にバラツキがあったため、完全対応となる時期を示すために“8月”としました」という。

いずれにしろ、ETC2.0をフル機能で利用するには再セットアップが必要。それ以前にセットアップしたDSRC車載器でETC2.0をフルで使うにはもう一度セットアップし直す必要がある。とはいえ、現時点ではETC2.0ならではのメリットは受けられない上に、3000円前後のセットアップ費用を再び支払うのは少々納得がいかない気もする。

◆再セットアップ料金のうち最大2700円を助成

国交省はETC2.0普及促進に向け、10月29日より「ETC2.0再セットアップサポートキャンペーン」を開始した。2016年3月31日までの期間、先着10万名限定で最大2700円を助成するもので、まずはセットアップそのものへの壁を取り払いたい考えだ。

現時点でDSRC車載器を搭載しているのは約30万台と言われているが、11月3日時点での申込はわずか467件にとどまるという。輸入車や高級車ではDSRCが標準で装備されている場合が多く、ユーザー自身がそれがETC2.0が使えるDSRC車載器として認識していない可能性も大いにあり、締切までに10万台に達しないことも考えられる。

11月8日まで開催中の東京モーターショー2015では、西4ホールの「SMART MOBILITY CITY」内でETC2.0を紹介するブースを出展しているが、ETC2.0の機能、メリットをいかにユーザーに周知できるか、抱える課題はまだまだ多い。

《会田肇》

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