【WEC 最終戦】ウェーバー組がドライバーズタイトルを獲得…今季はポルシェが2冠

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2015年のWEC最終戦バーレーン、今回もポルシェの2台がフロントローから発進。
2015年のWEC最終戦バーレーン、今回もポルシェの2台がフロントローから発進。 全 8 枚 拡大写真

現地21日、バーレーンで世界耐久選手権(WEC)今季最終第8戦の決勝レースが行なわれ、ポルシェの17号車トリオ、マーク・ウェーバーらがドライバーズチャンピオン獲得を決めた。LMP1クラスのポルシェは2冠を達成。最終戦優勝はマルク・リーブらのポルシェ18号車だった。

前戦でポルシェのマニュファクチャラーズタイトル(メーカー王座)獲得は決定済みだが、ドライバーズタイトル争いの決着は最終戦バーレーンに持ち込まれていた。#17 ポルシェのM.ウェーバー組が、#7 アウディのA.ロッテラー組を12点リード。仮にロッテラー組が最終戦でポール・トゥ・ウインしても、ウェーバー組は決勝で3位に入ればいい。

予選では今回もポルシェが1-2を独占、アウディが3-4、トヨタ5-6という今季お馴染みの構図に。ポールの1点を追加したウェーバー組はポイントリードを13点へと拡大し、決勝でロッテラー組が優勝した場合でも、自分たちが4位でいい状況へとさらに前進した。

富士、上海と続いた雨の開戦から、3戦ぶりにドライコンディションでの6時間レーススタートとなったが、最終戦は予期せぬマシントラブル絡みで、波乱含みの展開となっていく。まず、序盤30分ほどで#17 ポルシェが約10分の緊急ピット作業を強いられる。これで王座争いは#7 アウディ奇跡の逆転の可能性が膨らんだかと思われたが、今度はレースが半分を終えようとする頃、彼らの僚機である#8 アウディに長いピット作業が発生してしまう。

レース後半、首位は#18 ポルシェ。そして#7 アウディ(ロッテラー組)が2番手で、トヨタが3-4、さらに#17 ポルシェ(ウェーバー組)が5番手、#8 アウディが6番手と続く順位関係に落ち着く。#17 ポルシェは完調でない雰囲気も感じさせる走りではあったが、周回が違う#8 アウディに抜かれない限り、ドライバーズタイトル獲得はほぼ大丈夫な形勢といえた。仮に#7 アウディが優勝したとしても、自分たちが#8 アウディの前にさえいれば、僚機#18ポルシェの順位を大幅に下げることで、自分たちは4位になれるからだ。

そしてレースはそのまま、以下のような上位結果で決着した(総合順位=LMP1クラス順位)。

1位:#18 ポルシェ(919 Hybrid/R.デュマ&N.ジャニ&M.リーブ)
2位:#7 アウディ(R18 e-tron quattro/M.ファスラー&A.ロッテラー&B.トレルイエ)
3位:#2 トヨタ(TS040 HYBRID/A.ブルツ&S.サラザン&M.コンウェイ)
4位:#1 トヨタ(TS040 HYBRID/A.デビッドソン&S.ブエミ&中嶋一貴)
5位:#17 ポルシェ(919 Hybrid/T.ベルンハルト&M.ウェーバー&B.ハートレー)
6位:#8 アウディ(R18 e-tron quattro/L.ディ・グラッシ&L.デュバル&O.ジャービス)

#18 ポルシェは今季初優勝。ポルシェ勢としては、第3戦ルマン24時間から6連勝というかたちになった。5位のウェーバー組がドライバーズタイトル獲得を決め、ポルシェは2冠達成。また、今季限りでの引退を表明している#2 トヨタのブルツは、3位表彰台でキャリアを終えることとなった。

最終戦のLMP2、LMGTE-Pro、LMGTE-Amの各クラス優勝車は以下の通り。

LMP2:#26 G-DRIVE RACING(リジェJS P2-ニッサン/R.ルシノフ&J.キャナル&S.バード)
LMGTE-Pro:#92 PORSCHE TEAM MANTHEY(ポルシェ911RSR/P.ピレ&F.マコヴィッキィ)
LMGTE-Am:#98 ASTON MARTIN RACING(アストンマーティン・ヴァンテージV8/P.ダラ・ラナ&P.ラミー&M.ラウダ)

通算9勝したF1時代、世界タイトルには手が届かなかった39歳のオーストラリア人、ウェーバーにとっては悲願の世界タイトル獲得となっている。

マーク・ウェーバーのコメント
「今日は極めてタフな戦いだった。でも、メカニックたちのスピリット、そしてドライバーたちのスピリットというものが(ファンには)よく見えたレースだったと思うよ。(レース中に懸命の作業をしてくれた)メカニックのみんなには感謝してもしきれない気持ちだ。ティモ(ベルンハルト)、ブレンドン(ハートレー)、そしてポルシェとともに世界チャンピオンになれたことを誇りに思う」

ポルシェは現行WECのLMP1クラスには参戦2年目。12~13年王者のアウディ、14年王者のトヨタを一気に凌駕しての、ドライバー、マニュファクチャラーのシリーズ2冠独占となった。かつてグループCの時代、1980年代にも当時のWECやルマンで長く覇権を築くなどしたポルシェだが、約30年が経ち、関わる人々はかなり入れかわったはずだが、レース文化への理解度深いメーカー(ブランド)とあって、そういった面での“引き継ぎ”は自然と、あるいは計画的に為されていたのだと思われる。耐久王の名は伊達でないことを、あらためて世界に知らしめた2015年シーズンだった。

アウディは序盤こそ開幕2連勝と好調な滑り出しだったが、シーズンが進むにつれてポルシェとのパフォーマンス差が開いていった。何かひとつの要素で決定的に差がある印象ではなく、諸要素で少しずつポルシェが上まわった蓄積が明確な差につながっていたようにも思えるので、捲土重来はなかなかに大変かもしれない。だがアウディとしては、21世紀のルマン/WECの盟主の地位を簡単にポルシェに手渡す気はないだろう。ドイツの名門対決、来季の展開も楽しみである。

昨季王者のトヨタは、完全に3番目のポジションに落ち着いたまま今季を過ごすこととなり、ドイツの名門2強に対して継続的な覇権を築くこととの難しさを痛感させた。ただ、裏を返せば、それは昨季のシリーズ2冠奪取が偉業だったことの証明にもなるし、また一方では悲願のルマン制覇を絶好機に果たせなかったことがいまさらながら残念にも思えてくるわけだが、とにかく2016年の戦いに再度期待したいところだ。

そしてトヨタ以上に残念だったのがニッサンである。FFレイアウトの斬新なLMP1マシンの開発を北米陣営主導で敢行するも、実戦参戦は結局ルマンだけ、しかも正直なところ、惨敗と評するしかない戦いぶりだった(テスト参戦であることを割り引いても)。来季に向けては体制面を見直して臨む決意のようだが、今度こそ戦える状態での登場を望むところである。

2016年のWECは6月のルマン24時間、そして秋恒例の富士スピードウェイ戦を含む全9戦へと拡大されて開催される予定だ。

《遠藤俊幸》

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