自動車向け炭素繊維複合材市場、2025年に4.5倍の3278億円…富士経済

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BMW M3のCFRPルーフ(参考画像)
BMW M3のCFRPルーフ(参考画像) 全 2 枚 拡大写真

富士経済は、炭素繊維複合材料と関連部品・装置など、11品目の世界市場を調査し、自動車や航空機など、用途別にその動向を分析し、報告書「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望2016」にまとめた。

PAN系炭素繊維複合材料(成形加工品)は、炭素繊維が持つ軽量・高強度といった基本特性の高さから、自動車や航空機、風力発電ブレードなど、様々な用途で採用が拡大している。

PAN系炭素繊維複合材料(成形加工品)は、PAN系炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたCFRP(炭素繊維強化熱硬化性プラスチック)と熱可塑性樹脂を含浸させたCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)に分けられる。2014年の世界市場は9410億円となり、2025年には2兆5586億円にまで成長すると予測する。

2014年のCFRP市場は、航空機用途と風力発電ブレード用途が中心だった。特に、材料単価が高い航空機用途が市場の過半を占めた。2025年にかけて自動車用途、圧力容器用途が伸び、数量ベースで航空機用途や風力発電ブレード用途に並ぶ用途に成長すると予測する。

CFRTPは、静電部品・摺動部品用途の伸びが市場拡大をけん引している。2020年以降、LFT-Dや連続繊維のホットプレス成形などの採用拡大により自動車用途が大きく伸び、2025年には数量ベースで静電部品・摺動部品用途を超えて最大用途になると予想する。

炭素繊維に樹脂を含浸させた中間基材は、連続繊維に熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグ/ラミネートと、非連続繊維である短繊維/長繊維を熱可塑性樹脂にコンパウンドしたペレットに分けられる。

炭素繊維の世界市場では、2014年のPAN系炭素繊維市場は1653億円となった。CFRPでは、PAN系炭素繊維が用途平均で55%前後含有される。CFRTPには、主にフィラーとして短繊維/長繊維が採用されることから、現状ではCFRP向けが市場の90%を占めているが、2020年以降、2025年にかけては連続繊維の採用が自動車用途で始まり、CFRTP向けが拡大すると予想される。

2014年のピッチ系炭素繊維市場は、153億円となった。市場の40%近くを産業用機械設備分野向けが占めており、設備投資の落ち込みなどにより、市場は横ばいとなった。しかし、業界再編の影響から需給バランスが適正化してきたため、新たな設備投資が回復に向うとみられ、今後は微増を予想する。

注目される用途の市場で自動車用炭素繊維複合材料では、2014年の市場が723億円となった。今後、自動車の燃費規制に対応するため軽量化素材として炭素繊維複合材料の採用が欧州を筆頭に拡大していく見通し。2020年にかけて電気自動車やプラグインハイブリッド車の市場投入が活発化、炭素繊維複合材料採用モデルも増加していくと予想される。

ピックアップトラックや高級セダンなどの重量級モデルでも軽量化目的の採用が想定され、2025年に市場は2014年比4.5倍の3278億円を予測する。

タイプ別では、2014年がCFRPが数量ベースで市場の8割以上を占めている。CFRPは今後もRTM成形やSMC成形など、技術改良が進むことで市場が拡大していく見込み。

CFRTPは2020年にかけて現状の射出成形より強度を高めることができるLFT-D成形が欧州で実用化されることで、準構造部品用途が増加すると予想。さらに2025年にかけて連続繊維ラミネートCFRTPの骨格・構造部品用途が増加すると見られ、徐々にCFRPに置き換わると想定する。

航空機用炭素繊維複合材料は、2014年の市場が4549億円となった。今後、ボーイングB787やエアバスA350XWBといった機体重量に占める炭素繊維複合材料比率が50%以上の機体の増産が計画されており、市場は拡大していく見通し。2020年以降も、ボーイングB777Xなど、次世代機体も炭素繊維使用量を増加やした機体の生産が開始され、引き続き市場は拡大が予想される。

航空機の構造材部品は、高品質で強度が高いオートクレーブ成形が主体であり、タイプ別ではCFRPが数量ベースで市場の98%以上を占めている。CFRTPは、CFRPと比べ強度が低いため、一部の構造材部品や内装部品に採用が限定されていたが、最近は内装材として認定を受けたCFRTPが増加しており、2015年以降、徐々に実用化されていく見通し。

《レスポンス編集部》

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