【レクサス GS F サーキット試乗】猛烈な嵐でもその鋭さは十分伝わる「凄セダン」…中村孝仁

試乗記 国産車
レクサス GS F
レクサス GS F 全 16 枚 拡大写真

12月11日である。ご存知だろうが関東一円を猛烈な嵐が襲った日だ。こんな天気で477psもあるハイパフォーマンスマシンを富士スピードウェイで走らせるのは憂鬱の一言であった。

だが、そうは言っても予備日があるわけでもない。安全確保のため、完熟走行をアウトラップを含め3周。本番をアウトラップを含めた4周を2本走った。まあ瓢箪から駒かもしれないが、その卓越した安全性能や、ずば抜けた直進安定性などは体感できた。

それにしてもただの雨風ではなかった。持って行った傘は見事に壊れ、公道を走った際は道路を落ち葉と叩き折られた枝が占有する始末。当然ながらサーキットでは横風にかなり不安を抱いていたのだが、結果から言えばそんなものは杞憂だった。

完熟走行は安全確保と路面状況を確認するため、ストレートの最高速度を150km/hに制限された。午前組は130km/hも出すとハイドロプレーニングに襲われそうな状況だったというから、少しはましだった。しかし、そのアウトラップ、無防備にしかも何の考えもなく1ターンのゼブラに乗った瞬間、クルマはものの見事に滑り出した。慌てて修正。そして、こんな濡れた日はゼブラを踏んではいけないことを痛感し、以後乗らないように気を付けた次第である。

1ターンを抜けて100Rまでには2本の川が、その後300Rにも川があって、後半のティルケコーナーでは川らしきもの発見できなかったが、まあ滑るのなんの…。かなり気を使ってスロットルを開けているつもりでも、すぐにずるずるとくる状態。本来トルクベクトリングをはじめとした安全デバイスが効いているはずなのだが(もちろん切るなの指令)、そんなものは無関係にずるずると行く。ストレート上にはほとんど水たまりもなく、150km/hは安全圏だった。

と、コース状況を確認した後、1本目はマニュアルモード、スポーツSプラス、TVDはサーキットをチョイスしてスタートである。コース状況はほとんど変わっていなかったので、特に100Rと後半のティルケコーナーに不安があった。例のASC(アクティブサウンドコントロール)も、こんな日だと効果は薄く、ひたすら路面から巻き上げる水しぶきの音が室内を支配する。

それにしてもNAV8の加速フィールは気持ちよいの一言である。こんな日でも、直進さえ保って、スロットルを注意深く開けば、グイグイと加速する。その代り、少しでも乱暴なアクセル操作をすれば、クルマはすぐに横を向こうとする。ギアチョイスはいつもより1速上げて走行。それでも状況はインプレッションをするというものではなく、ひたすらクルマをコントロールすることに専念しなくてはならなかった。

2本目はATモードでスポーツSプラス、TVDはサーキットで走行開始。時間が経って、そこそこ乾いている部分も出てきたが、滑りやすいという状況にはほとんど変わりなく、コーナーでは慎重にならざるを得なかった。

一つだけ気になったのは、サーキット走行に合わせたシフトスケジュールとなっているはずの8速AT。確かにシフトアップも素早いし、レブリミットいっぱいまで回していくのだが、そのいっぱいの部分で時としてシフトアップをするべきかどうか迷うことがあった。エンジンはサチュレートしてバッバッバッバと息つきをしているのだが、シフトアップしないことが数度、実はこれが100R手前で起こる。すでにブレーキングゾーンなので、そのままブレーキを踏むとここでシフトアップ。これは少し困った。しかし、気になったのはそれだけ、基本すべてクルマ任せなので、マニュアルモードよりも安心してサーキットを走れる。まあその分つまらないともいえるが、ATモードでも結構走れることが確認できたのは何よりだった。

ストレートエンド、と言ってもだいぶ手前でブレーキングに入るのだがトップスピードはおおよそ240km/h弱だった。この状況でそのスピードを出しても不安要素は一切なし。恐ろしく直線安定性に優れる。

本来は晴れたドライ路面で走りたいクルマである。当然ながらライバルはメルセデスAMGやBMW M。パワーは向こうが上かもしれないがお値段はだいぶお安い設定だから、敢えてこれというチョイスをする人は多いと思う。因みにお値段消費税込み1100万円である。

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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