4日の「2016 TOYOTA GAZOO Racing プレスカンファレンス」にて発表された、トヨタ/レクサス勢の今季SUPER GT参戦体制。去就が注目されていた“Mr. SUPER GT”ともいえる大物選手・脇阪寿一は、GT500クラスに参戦するチームルマンの監督に就任することとなった。
02、06、09年と、トヨタ~レクサスで3度のGT500ドライバーズチャンピオン獲得歴を誇る脇阪は、一時代を築いた名選手というだけでなく、モータースポーツ隆盛のために、という意識で常に行動してきた選手でもある。だからこそ“Mr. SUPER GT”とも呼ぶべき存在感を有してもいるのだが、7月で44歳となる今年はチームルマン(#6 LEXUS Team LeMans WAKO'S)の監督に就任することが決まった。ドライバーを完全引退するわけではないが、第一線からは退き、98年から続いてきたGT500での現役キャリアには終止符が打たれることとなった。
「去年のタイ戦が終わった段階では(ドライバーとして)どん底、もう闇しかなかった状態でした」と脇阪は昨季中盤での苦悩を吐露する(昨年はRPバンドウ所属)。ただ、その後はレーサー仲間や周りの人たちの親身なアドバイスもあり、「ここから少しでも上がれたら、それは後輩たちにアドバイスできる貴重な経験になる。それはここまで現役を続けさせてもらった自分にしかできない経験でもある」との思いを胸に再浮上、最終戦では決勝ファステストラップを刻むまでの復調を遂げた。
今季も現役で、との思いも脇阪には当然あったが、「いろんなシチュエーションもあるし、(どん底から浮上して)モチベーションの高い状態のまま、今度は『トヨタさん、もっと(モータースポーツを)こうしましょうよ!』というようなことをやれますから」という彼らしい“大きな決断”で、「脇阪寿一としての第2章のスタート」に踏み切ることとなった。
この日は風邪で欠席した豊田章男トヨタ社長からも、「選手として活躍するだけでなく、イベント等を通じてクルマの楽しさを伝える広報部長的役割も担っていただいてきました。私、モリゾウの一番の代弁者です。これからも広報担当役員として、よろしくお願いいたします」とのメッセージが脇阪には届けられた。まさしく脇阪自身が思うところと一致する内容であり、今後も脇阪は多方面でトヨタの、クルマの魅力を発信するキーパーソンであり続ける。現役としての第一線を退いたことで、より一層、活躍のステージが広がることだろう。
そんな脇阪寿一の第2章を構成する要素のひとつが、かつてホンダからトヨタに移った際の最初の所属チームであり、02年には自身初タイトルも獲得した古巣(チームルマン)での采配ということになる。「今年も当然(2連覇中の)日産が強いとは思いますけど、チームトヨタとして、一丸となってまとまった強さを出していければ、と思います。そのなかで(チームルマンの)大嶋とカルダレッリが最終戦でタイトルを獲りにいってくれるようなら、いいですね」。ピットウォールにも例年以上の注目が集まるシーズンになりそうだ。
GT500に参戦するレクサスRC Fは今季も6台。ドライバー布陣は以下のように決まっている。
■2016年 GT500参戦レクサス勢
#6 大嶋和也&A.カルダレッリ(チームルマン/BS)
#19 関口雄飛&国本雄資(RPバンドウ/YH)
#36 伊藤大輔&N.キャシディ(トムス/BS)
#37 J.ロシター&平川亮(トムス/BS)
#38 立川祐路&石浦宏明(セルモ/BS)
#39 平手晃平&H.コバライネン(サード/BS)
※カッコ内はチーム/タイヤ。BS=ブリヂストン、YH=ヨコハマ。
GT300クラスに関しては既に発表されているように、名門チーム『apr』が走らせるプリウスが今季はZVW50型にベース車をモデルチェンジし、2台体制へと移行。#31を昨年プリウスで2勝した嵯峨宏紀&中山雄一が駆り、#30を永井宏明&佐々木孝太がドライブする布陣だ(タイヤは#31がBS、#30がYH)。また、GT3仕様のレクサスRC FをLM corsaが飯田章&吉本大樹のコンビで走らせる(#60、タイヤはYH)。
今季のSUPER GTは4月9~10日の岡山国際サーキット戦で開幕。タイでの1戦を含む全8戦のカレンダーで開催される。