【マツダ デミオ 新旧比較試乗】「ブランニュー」であり続けるための改良に納得

試乗記 国産車
デビューから一年あまりで早くもマイナーチェンジ。その違いはいかに?左がマイナーチェンジ後の個体で、右側の個体はマイナーチェンジ前のもの。
デビューから一年あまりで早くもマイナーチェンジ。その違いはいかに?左がマイナーチェンジ後の個体で、右側の個体はマイナーチェンジ前のもの。 全 8 枚 拡大写真

デビューから一年と少々。以来比較的注目を集めていたこのモデル。このタイミングでのマイナーチェンジ、いささか時期尚早ではないか、そんな印象を受けた方も少なからずいらっしゃるのではないだろうか。

そんなに急ぎで必要なものだったのか?こんなに「早々にマイナーチェンジしなければ行けないような出来のクルマだったのか?」など、つい外野はいろんなことについ思いを巡らせてしまうものだ。

「乗ればわかります」。試乗会に到着するとさも得意げにそう言われた。今回は、マイナーチェンジの前後のクルマを比較できるということで、これは大いに楽しみである。今回試乗したのは、同じ6速MTを搭載した「XDツーリングLパッケージ」のマイナーチェンジの前と後のモデルだ。

◆「この価格、クラスなら」という前提があった

まずはマイナーチェンジ前のクルマで横浜の街に出る。走り出すと、すぐにデビュー当初に試乗した印象が少しずつ蘇ってくる。ダウンサイジングターボ、クリーンディーゼルエンジン流行の昨今、トルクだけは潤沢なクルマは多い。それでも1500ccのクリーンディーゼルエンジンというのは日本ではなかなかお目にかかることができないコンパクトなもの。

ディーゼルエンジンに期待する低速からの豊かなトルクは、このクルマではさほど主張してこない。十分ながら、エンジンが回っていないとトルクは出ないのだ、と極めて当たり前の現実に直面することになる。常に少しだけ積極的にエンジンをまわしてあげないとならないのだが、これはなかなかユニークなものだ。 出足でバラバラっと「お行儀が悪くなる」ことがあった。ただ、それでも走り始め、それにつれてトルクもしっかりと出だせば、ダイナミックな加速をもたらしてくれる。それを味わってしまうと、この価格帯で、総合的に判断して「これ以上重箱の隅をつつく」 のはいかがなものか、とすら思える。「お行儀が悪くなる」と言ってもその程度のものだった。

そんな少し慣れを要する1000回転前後での低速域でのクラッチのつなぎにも、信号停止を3回ほど経験したら慣れてしまう。コマーシャルでもアピールするように自然にとれる「ドライビングポジション」。足を投げ出してふと手を置いたところに、アクセルペダル、ブレーキ、クラッチ、そしてハンドルがある。こういったものが「待っていたかのように」ポジションを取ることも容易だ。走り始めると視線を動かした方にクルマを進めることができる自然なステアリングフィール。窓は決して大きくはないが、大事な視界をしっかり確保している点などには、ドライバーを多いに助けるクルマ作りだと感じる。市街地から、高速道路などを小一時間ほど走って感じたのは「確かに細かい点はもっ とブラッシュアップすれば言うこと無いけれど、このくらいのクルマでこれ以上求めるのは少し欲張り過ぎか」やはりそういう感想をいだくレベルだった。

この時点で、「1年少々のタイミングでマイナーチェンジを実施すること」が、決して「見切り発車のつじつま合わせ」ということではないのだ、ということが確認できた。

ただ、マイナーチェンジの前のクルマに乗って、感じた中で「この価格帯、クラスのクルマとして」という前提が筆者の中にどこかあったのもまた事実。 デミオの開発の過程で根底に流れる「志」では、そもそも「クラスの概念を打ち破る」ということがテーマとしてのキーポイントだったと試乗の前に、開発主査の柏木氏から聞いていたので、もしかするとそうしたことが早期での商品改良に踏み切った理由なのではないか。マイナーチェンジ前のクルマで首都高速を走って帰って来た頃にはそんな予感が芽生えたのもまた事実である。

◆MC前の“引っかかり”がなくなった

そして、マイナーチェンジの後のクルマに乗り替える。まだ寒い朝、腰を下ろしたとたんにシートヒーターの温もりにほっとする。今回大幅に採用車種が増え、 試乗車では標準装着されていた。走り始めたとたんに違いはわかった。半クラッチからの、あの1000回転前後のエンジンのマナーがより良くなっているのがわかった。低回転域でよりコントローラブルになっているのだ。

同じルートをもう一度走る。自ら操る上で、何か引っかかっていたものはすべて解決されている、 そんな印象を受ける。そしてしばらく乗って、全体のマナーがおしなべて良くなったことで、ワンランク上のクルマに仕上がった印象だ。実はこれを実感するのは、高速道路や、早いペースの環境ではなく、いつも行くショッピングセンターの駐車場や、我が家のガレージかもしれない。半クラッチかクラッチが繋がったかというタイミングでのクルマの自在度が向上しているのだ。

さらにSKYACTIV-Dエンジン車では、ナチュラルサウンドスムーザーによりエンジン音の 「調律」も実施されている。良い音になった。これは鑑賞向きかどうかという観点ではなく、全ての人が快適に感じ、ノイズを低減することを主眼に設計がなされているものだ。より「運転に集中できる車室内環境づくり」への貢献度が大きい。

◆ドラスティックな改良ではないが

相変わらず元気よく走り、良好なハンドリング、しっかりと「仕事が感じられる」アシなどは良好、乗る者が若々しい気持ちになれるような造りはデビュー当初からそのままである。その点では、早速に実施された今回の明確な商品改良、既に乗り始められているユーザーの方が失望、あるいは卑屈になるようなドラスティックな改良という内容ではない。しかし、デビューした当時から今までの時間の中で、自社のラインナップに対して適切な問題意識を持ち、それを しっかり俯瞰し、しかるべく商品に反映されている。

一年前も、今も「ブランニュー」であり続ける為。そんなメッセージを今回の商品改良には感じた。決して 自動車メーカーとしては大きくない規模のマツダだからこそできる、小回りの良さの顕われと言える商品改良だと言えるだろう。

《中込健太郎》

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