【GARMIN eTrex 30xJ インプレ後編】山登りの“イザ”で活きる重要機能を新搭載、その実力は

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右上のクリックスティックがデザイン上でもポイントになっている。
右上のクリックスティックがデザイン上でもポイントになっている。 全 21 枚 拡大写真

GARMINからはハンドヘルドGPSの定番モデルであり、普及クラスに位置づけられる「eTrex」シリーズの新型モデル『eTrex 30xJ』が登場した。インプレ後編では、実際に使ってみながら主な機能を紹介していこう。

クリックスティックによる軽快な操作感、プリインストールの地図は“とりあえず”使えるレベル

まず操作感についてだが、本機は上位モデルのGPSMAPやオレゴンのようなタッチディスプレイは採用せず、主な操作はクリックスティックで行う。これは非常に短いジョイスティックのようなものだが、上下左右に動かせることに加えて、押すことでクリックできるのが特徴だ。スイッチはほかに本体左側に3個、右側に2個あるが、本機を右手に持つと、その右手だけですべての操作ができる。しかも、かなり分厚い手袋をしていても操作可能だ。

実際に片手ですべての操作を行うのは慣れが必要だが、クリックスティックの操作感はかなり良好。むしろ本体側面のボタンを押すのに少し力が必要なことの方が気になる。これは防水性や堅牢性を確保した結果で、かつてはGARMINのフィットネスデバイス、たとえばサイクルコンピュータの「Edge」シリーズでも同じ傾向があった。しかし、Edgeシリーズの最新モデルでは高い防水性を保ったまま、軽快に操作できるボタンに改良されている。本機もそう少しなんとかしてほしいと思ってしまうのが本音だ。

搭載されているソフトウエアのユーザーインターフェースはGARMINのハンディGPSに共通するもので、一度でも使ったことがある人なら本機もすぐに使いこなせるだろう。起動するとわかりやすいアイコンのメニュー画面があり、各種の機能を呼び出せる。通常もっとも使うことが多い「地図」をクリックすると、GPS衛星の補足が始まる。最新モデルらしく、GPSの補足は非常に高速だ。使用した範囲では、10秒以上かかることはなく、ほとんどの場合は2~3秒だった。

付属の地図はごくシンプルなものだが、ちょっと意外だったのはディスプレイの精細さだ。もはやフルHDも当たり前のスマートフォンのスペックを見慣れていると、本機の320×240ピクセルという解像度はあまりにもチープで、地図などまともに表示できるのかと思ってしまう。しかし、実際に見てみると、スペックから想像するよりずっと高精細に見える。この画面を見ると、スマートフォンの方がオーバースペックではないかと思えるほどだ。

このディスプレイに表示されるプリインストール済みの地図は、1/20万日本全国地図。ただし、これはいわばおまけのようなもので、ロードマップとしても山岳地図としても必要最低限のもので、とりあえず使えるというレベルだ。実は、GARMINのハンディGPSは地図データが別売で用意されており、実質的には、使用目的に合わせた地図を購入してインストールして使うことが前提と考えていい。

もちろん、あまり詳細な地図を必要としない用途、たとえば移動軌跡の記録用に使うのであれば、プリインストール版の地図でも問題はない。また、本機で使用できる地図はGARMIN製品だけと限定しているわけではないので、インターネットで無料の地図を手に入れて楽しんでいる人も多い。ただ、こうした使い方は無料であるがゆえに、それなりのスキルが必要になる。

◆気圧は電源を切っても記録、平均位置測定で極限まで精度を上げることも可能

本機の大きな特徴の一つが、新たに気圧高度計を搭載したことだ。さっそくその使い心地を検証、といいたいところだが、eTrexシリーズには以前から高度を測定して推移をグラフ表示する機能がある。これはGPSから割り出したものだが、GPSによる高度計測は誤差が大きく、20メートル程度はずれるとも言われる。準天頂衛星みちびきはその誤差を劇的に小さくできるが、本来3機必要なみちびきはまだ1機しか運用されていないため、いつでも利用できるとは限らない。

こういったことから、本機に気圧高度計が搭載された。つまり、従来モデルとの違いは誤差。短い試用の中では検証するのは難しい。というより、筆者は本格的な登山をするわけではないので、高度計の精度が向上する恩恵を感じにくい。ところが、試用しているうちに、この気圧高度計には面白い機能があることがわかった。気圧から高度を割り出すのではなく、気圧そのものをデータとして記録し、グラフ表示することができるのだ。しかも、気圧データの記録だけは、本機の電源を切ったあとも継続することが可能だ。

言うまでもないが、気圧の変動は天候を予測する大きな手がかりになる。ごくおおざっぱに言えば、気圧が下がってくれば低気圧が近づいているということであり、天候は下り坂。気圧が上昇していればその逆となる。実際に使ってみても、天気の変わり目は必ずそうした気圧変化があった。登山では天候の変化予測が極めて重要で、これまでも天候の変化を見誤り命を落とした例は枚挙にいとまがない。ヘビーディーティなハンドヘルドGPSにとっては、気圧高度計の搭載は非常に大事な機能と言える。ただ、気圧変化のグラフを表示する設定が少しわかりにくいのは残念なところで、独立したメニュー項目を用意してもよかったように思う。

もう一つ、本機から搭載された機能である電子コンパスは、GPSに頼らず正確な方角を表示する。GPSは移動していないと方角を割り出せないため、立ち止まって現在位置を確認しようとすると、すぐに方角がわからなくなってしまう。そうしたGPSの弱点を補うための機能だ。本機の電子コンパスは3軸タイプなので、本機を水平にする必要がなく、斜めに立てた状態でも正しい方角を表示するため使いやすい。

ほかにも非常に多くの機能があるが、GARMINのハンディGPSのこだわりを象徴するのが平均位置測定だ。これは現在地をウェイポイントとして登録する際に、GPSによる測位を何度も行い、その平均位置を取得する機能。時間はかかるが、精度を向上させる効果は非常に高い。

◆GPS専用ハードウエアがもたらすスマートフォンにはない安心感と楽しさ

地図には移動した軌跡を表示できるほか、ルート検索も可能。つまりカーナビとして使うことができる。ジャンル検索などもできて本格的なナビ機能なのだが、音声案内はなく、ブザーのみだ。これでも以前はそれなりに利用価値のあるものだったが、スマートフォンで使える無料のカーナビアプリがいくつもある現在では、敢えて使う気にはならないのが本音だ。

冒頭で本機はスマートフォンで代替することはできないと言ったが、このカーナビ機能のように、スマートフォンを使った方がはるかに便利な機能も、もちろんある。また、一般的にスマートフォンではできないことでも、アプリを活用することでできるようになる場合もあるだろう。しかし、スマートフォンを基準にして、本機のこの機能はスマートフォンでもできる、できないという評価をしていては、本機の魅力は見えてこない。

つまり、スマートフォンにできないことがたくさんできればいいというものではないのだ。たとえば、現在位置を測位して移動軌跡を保存することは、スマートフォンでもできる。しかし、実際にやってみると、スマートフォンで移動軌跡を保存するのは不便が多い。バッテリーが速く減ってしまうし、そのためのアプリをいちいち起動させておくのも面倒だからだ。専用のハードウエアがあった方がずっと便利だし、安心感が高い。

ほかの機能についても同じことがいえる。GPSのためだけに作られた本機は使い心地がよく、グローブをしていても片手でほとんどすべての操作ができる快適さは、スマートフォンとは比較にならない。登山やトレッキングが楽しくなるし、町中でも散歩やポタリングに持って行くと思わぬ発見があったりして面白い。

《山田正昭》

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