日本観光の外国人が足をはこぶ新宿の天ぷら店、行列の理由

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天ぷら新宿つな八 総本店
天ぷら新宿つな八 総本店 全 5 枚 拡大写真

 爆買いできる家電量販店があれば、ブランド品が並ぶデパート群もある。さらには、歌舞伎町、ゴールデン街、新宿御苑、ハラル色を強める大久保など……。インバウンド需要を満たす街として近年、東京・新宿が外国人観光客から注目されている。

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 そんな、彼らが毎日、食事時になると行列を作っている店がある。「天ぷら新宿つな八」。創業は大正13年と、街でも老舗の一軒だ。しかし、新宿に数ある天ぷら専門店の中でも、何故つな八がインバウンドに人気なのだろうか? 代表取締役社長の志村久弥氏に話をうかがった。

■体験を求める外国人観光客のニーズ

 そもそも天ぷらと言えば、外国人に人気の料理。特に、観光客は食にも土地ならではの体験を求めるため、対面カウンターで調理のライブ感が楽しめる天ぷらは、インバウンドにおける日本食でも人気のメニューだ。

 つな八の天ぷらでは、シズル感と揚げたての美味しさが追求されている。目の前で食材を捌き、揚げ、熱々の美味しさを提供する。演出を楽しませるような雰囲気があり、観光客にとってのシャッターチャンスになっているようだ。

 そんな外国人観光客のニーズを、志村氏は“インバウンド”という言葉が騒がれる以前から体感していたという。元々、つな八には台湾からの観光客が多く、リピーターになるような個人観光客もいたようだ。

 台湾は島国かつ海洋国と、風土的には日本に近い。魚に対する食文化もあれば、揚げ物に対するシンパシーもある。さらには、貝類が好きなため、ハマグリやホタテ、アワビなどを好んで食べるという。つな八ではコースにお好みと、2つのオーダー方法を用意しているが、台湾人や中国人はお好みで料理を選ぶ傾向にあり、その点でもつな八がウケた部分もあるようだ。

「あとは、やっぱり懐加減の問題も大きいと思います。旅行で外食に出せる価格帯というと、4~5000円ぐらいが相場じゃないでしょうか。つな八では昼食2000円、夕食5000円から食べられますので、値ごろ感はあると思います」

■日本の天ぷら文化をそのまま体験する

 ここ数年でつな八の名は、徐々に口コミで海外へと広まっていった。海外の旅行会社のパンフレットなどにも掲載されるようになり、外国人観光客の急増に合わせて、店を訪れる観光客も増えたという。

 また、元々海外からの訪問客があったこともあり、店側にはある程度の備えがあったようだ。外国人向けのメニューや食べ方といった書き物があれば、英語をしゃべれるスタッフもいる。ただ、それは外国人観光客を惹きつける上で、本当に重要なものではないという。

「対面カウンターでの接客はマニュアル化できませんから、色々な職人がいてもいい。個性って大事だと思うんですよ。例え、英語が話せなくても、そこに居るだけで絵になるような職人もいるわけじゃないですか。その中で、つな八がずっと受け継いできた文化を、お客さんに自然に感じてもらう。それが最高のおもてなしだと思います」

 40代、50代の職人に明日から英語学校に通えというのは無理がある。だから、日本人が持っている礼儀を、自然な形で客に伝える。話す言葉は日本語で「いらっしゃいませ」でいい。笑顔は万国共通なのだから、笑って話しかければ、こちらの気持ちは向こうに伝わるだろう。

 ただ、日本人は恥ずかしがり屋で、外国人恐怖症なところがあるので、そこは克服する必要があるとのこと。口下手な職人には「せめて単語ぐらいは英語で話そうよ」と、志村氏は朝礼などで声をかけているという。

■大事なのは外国人観光客と常連客のバランス

 ここ3年間、つな八の売り上げは前年比で120%の伸びを更新し続けている。その一因となっているのが、インバウンド需要による客の増加だ。外国人観光客は素泊まりで外食する傾向にあるので、近いうちにホテルのコンシェルジュへと、つな八のことを案内することも考えているという。

 ただ、その一方で問題になっているのが、何十年もお店に通い続けている常連客への対応だ。その一端として行っているのが、最寄りの姉妹店「綱八つのはず庵」との棲み分け。店舗間で外国人観光客のバランスを取りながら、常連客の予約にも応えている。

「外国人の方にもリピーターになってもらいたいんです。日本には四季があるので、できることなら年に4回訪ねてもらいたい。春の花見に来られた方が、秋の紅葉を見に来たついでに立ち寄っていただければ、全然違った食材を味わってもらえると思います」

 インバウンド需要とは、所詮オリンピックまでの一過性のものだと捉えている事業者も多い。しかし、それを外国人のリピーターを捕まえるチャンスと考えれば、長期的な視点で挑戦できることもあるだろう。後編では、そんなつな八の新たな取り組みについて紹介する。

【新宿つな八(前編)】外国人が行列する天ぷら、その理由

《丸田鉄平/H14》

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