【プジョー 2008 クロスシティ 試乗】走りもデザインも造り込まれた、本命と呼ぶべき一台…森口将之

試乗記 輸入車
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プジョー 2008 クロスシティ
プジョー 2008 クロスシティ 全 16 枚 拡大写真

特別仕様車というと、メカニズムはいじらず、エクステリアやインテリアをドレスアップして特別感を高めたというのが良くあるパターンだ。ところが3月に発売されたプジョー『2008クロスシティ』は違う。エンジンやトランスミッションを一新し、シャシーにも手を入れているからだ。

これまで『2008』が搭載してきた1.2リットル直列3気筒にターボを追加するとともに、トランスミッションは5速の2ペダルMTからトルコン式6速ATにスイッチした。駆動系には、ESC(エレクトリック・スタビリティ・コントロール)のON(ノーマルモード)/OFF に加え、「スノー」、「マッド(泥・ぬかるみ)」、「サンド(砂地)」の3モードを備え、滑りやすい路面での走行をサポートするグリップコントロールを採用。車高は15mmアップし、ホイールは16インチから17インチへと拡大しており、タイヤはグッドイヤーの「ベクター 4シーズンズ」となっている。

このうちエンジンはターボ化によって、最高出力は82psから110ps、最大トルクは12.0kg-mから20.9kg-mと、トルクについては倍近くになった。おかげで従来の2008とは別次元の力強さ。最大トルクをわずか1500rpmで発揮するので、発進直後からターボの恩恵が受けられる。このクラスのクロスオーバーモデルとしては軽い、1230kgの車両重量も貢献しているはずだ。プジョーの3気筒エンジンは、自然吸気時代から4気筒並みの滑らかさと静かさで定評があった。この面もターボ化でさらに向上している。力に余裕が生まれたので、エンジンをさほど回さずに走れることが大きい。

車高やホイール/タイヤの違いもあって、低速での乗り心地は他の2008より固めだが、ガチガチには感じない。ボディ剛性が高いおかげもあるけれど、鋭いショックを絶妙にいなす猫足は、この2008クロスシティでも健在だ。それでいて身のこなしは軽快。ステアリングを切った瞬間、ノーズがスッと水平に移動するようなフィーリングもまたプジョーそのものだ。未舗装路では、余裕のある最低地上高と4シーズンズタイヤ、グリップコントロールが、想像以上の走破性を見せてくれた。

加えてエクステリアやインテリアに施されたフレンチ流ドレスアップがまた絶妙だ。専用色のエメラルド・クリスタルは、大人っぽいグリーン。そこにオレンジがアクセントのサイドステッカーを組み合わせたところが粋だ。さらに17インチのアロイホイールやドアミラーをブラック基調として光り物を抑えるなど、アウトドアテイストのアピールのしかたを良く分かっている。

インテリアもファブリックシートやレザーステアリングにグリーンのステッチ、フロアマットにはボディサイドと同じストライプを入れ、ドアのグリップはざらっとした手触りのシルバーとするなど、細部まで手抜きなし。フランスの美へのこだわりを改めて教えられる。シートの中身は他の2008と同じ。座り心地とサポート感の良さにあらためて感心する。一段高く座る後席は、身長170cmの僕にとって余裕の広さを持つだけでなく、背もたれを倒すと座面が沈み込んでフラットに畳める、凝った仕掛けも備えている。実用性や快適性を大事にするプジョーのブランドイメージはしっかり継承している。

圧倒的に元気になったパワートレインと、オフロードの走破性もアップさせたシャシーを、フランスらしいセンスの良いアウトドアファッションで包み込んだ。これを特別仕様車扱いしておくのはモッタイナイ。本命と呼ぶべきだろう。デザインから走りまで、すべてがベスト2008だった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

《森口将之》

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