道路や橋を点検するデンソーのドローン…産業用初の可変ピッチ機構

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デンソー 技術開発センター Robotics開発室 室長 加藤直也
デンソー 技術開発センター Robotics開発室 室長 加藤直也 全 12 枚 拡大写真

デンソーは4月8日、デンソー ディースクエア(愛知県刈谷市)にて、同社が開発した産業用ドローンの概要説明と飛行デモを、メディア向けに行った。

デンソーが今回披露したのは、開発コード「HDC01」と呼ばれる開発機。道路や橋などの社会インフラを点検するための産業用ドローンだ。姿勢制御技術に関してはデンソーが開発し、機体に関してはラジコンヘリコプター大手のヒロボーとの共同開発となっている。

機体直径は1040mmで、市販ドローンとしては大型だが、産業用UAV(無人航空機)としては小型というサイズ。4つあるプロペラの直径は15インチ(約38センチ)だ。機体やプロペラなどの主要部分はカーボンファイバー製で、重量は現時点で4.7kgだが、今後はもっと軽くしたいとのこと。カメラやジンバルなどを搭載するための、いわゆるペイロード(最大積載量)は約2kgとなっている。

最大の特徴は、姿勢維持と運動性を制御するため、デンソーが開発したコントロールユニット「D-CORE」を搭載していること。これによって、橋梁の裏側や側面にぶつからないように、一定の距離を維持しながら近接・定位を行う安定性や、強風や降雨の中でも作業できる耐候性、衝突を回避する安全性を実現している。

D-COREの肝と言えるのが、産業用マルチコプターで初という可変ピッチ機構による4翼連動姿勢制御。可変ピッチ機構によって、上昇側の揚力だけでなく、下降側の力も可変できるため、固定ピッチでは難しかった安定した姿勢制御(定位性)を実現。例えば、風などの外乱を受けた場合、元の位置・姿勢に復帰する時間は、従来では数秒から数十秒だったものが、数秒から一瞬に短縮されるという。

また、可変ピッチ機構によって、固定ピッチでは難しかった真下への素早い下降も可能になった。こうした運動性の向上は、作業効率のアップに貢献するという。

連続飛行時間は、現時点で約9分半。姿勢制御や安定性に優れるため、飛行時間に対しての作業時間は、従来の産業用ドローンより長くなるという。搭載するリチウムイオン電池は、もちろんワンタッチで交換可能。操縦は今のところ人間が遠隔操作で行うが、将来的には自動化もしたいという。

産業用ドローンの中でも性能的にはハイエンドだが、デンソーではあくまで機体の販売ではなく、社会インフラの点検という「サービス」の提供を事業として考えている。仮に販売するとしたら、多くの市販ドローンが数万円~数十万円であるところ、「少なくとも一桁は違うが、軍事用よりは安い」(デンソー)とのこと。開発費については明らかにされなかったが、特許は多数出願しているという。

今後は2016年上期に、機体と制御の改良と検証を行ない、下期には改良機によって、早くも橋梁点検サービスのモニターへ移行する予定だ。

《丹羽圭@DAYS》

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