世界の話題作がエントリー、SFの頂点を決める「星雲賞」の懐広さ

エンターテインメント 話題

日本SF大会と日本SFファングループ連合会議が実施する星雲賞が、2015年の作品を対象とする第47回の参考候補作を明らかにしている。星雲賞は国内の幅広いSF分野を対象に、日本SF大会の参加者が優秀な作品や活動を顕彰するものだ。
1970年にスタートし46年にも及ぶ歴史を持つことや、SFファンが選ぶことから注目の高い賞である。参考候補作はその投票のために主催者がピックアップしたもので、事実上のノミネートの役割持つ。日本長編部門、海外長編部門、日本短編部門、海外短編部門、メディア部門、コミック部門、アート部門、ノンフィクション部門、自由部門の9つの部門にそれぞれ6~10の候補が挙げられている。

やはり大きく注目されるのは日本長編部門だ。日本の現在を代表する作家が並んだ。梶尾真治(『怨讐星域』)、神林長平(『絞首台の黙示録』)、円城塔(『エピローグ』)らすでに受賞経験のある者も多い。今年の日本SF大賞特別賞受賞の牧野修(『月世界小説』)や、刊行開始から27年経った2015年に完結した『タイタニア』(田中芳樹)、新鋭オキシタケヒコ(『波の手紙が響くとき』)、ベテラン実力派上田早夕里(『薫香のカナピウム』)、宮内悠介(『エクソダス症候群』)らどの作品も傑作だ。
昨年の受賞者である藤井太洋は、『アンダーグラウンド・マーケット』で再び名前が挙がっている。藤井は日本短編部門でも「従卒トム」と「公正的戦闘規範」の2作品がリスト入りした。2015年も波に乗った1年だったようだ。

アニメファンにお馴染みなのが映画やテレビ作品、舞台などを対象とするメディア部門だ。第46回に『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』、第43回に『魔法少女まどか☆マギカ』のようにアニメが賞に輝くことが多いからだ。過去10回の受賞作のうち7作品もがアニメである。
第47回参考候補作は、8作品のうち5作品がアニメーションである。GAINAX原作の『放課後のプレアデス』、現在もブームが続く『ガールズ&パンツァー劇場版』、骨太な設定が魅力の『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』。牧原亮太郎監督、WIT STUDIOがアニメーション制作の『屍者の帝国』は、原作が第44回日本長編部門の受賞作である。変わったところではイスラエルのアリ・フォルマン監督による海外作品『コングレス未来学会議』がピックアップされた。
アニメ以外では、カルトな人気が一大ムーブメントに広がった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、第42回に『第9地区』で受賞の経験があるニール・ブロムカンプ監督の『チャッピー』、『スターウォーズ フォースの覚醒』がもし受賞すれば1981年第12回の『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』以来のシリーズからとなる。

コミック部門も『シドニアの騎士』(弐瓶勉)、『鉄のラインバレル』(清水栄一×下口智裕)とアニメ化のある作品が含まれる。逆に他の作品は、今後の映像化を期待したいとも言えるだろう。
ノンフィクション部門は、アニメ関係者に話題騒然の『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』(著:牧村康正、山田哲久)がリストアップされた。有力候補は多いがアニメファンには気になる。

今回挙げられた参考候補作品から、第55回日本SF大会(いせしまこん)に参加するファンが投票を行う。その結果は2016年7月9日と10日に三重県鳥羽市に開催されるいせしまこんで発表される。

日本SFファングループ連合会議 http://www.sf-fan.gr.jp/
第55回日本SF大会(いせしまこん) http://www.sf55.jp/

2016年 第46回星雲賞参考候補作

[日本長編部門]
『波の手紙が響くとき』 オキシタケヒコ
『エクソダス症候群』 宮内悠介
『怨讐星域』(全3巻) 梶尾真治
『絞首台の黙示録』 神林長平
『タイタニア』(5巻完結) 田中芳樹
『月世界小説』 牧野修
『アンダーグラウンド・マーケット』 藤井太洋
『エピローグ』 円城塔
『薫香のカナピウム』  上田早夕里

[日本短編部門]
「神々の歩法」 宮澤伊織
「従卒トム」 藤井太洋
「多々良島ふたたび」 山本弘
「未明の晩餐」 吉上亮
「彼女の時間」 早瀬耕
「公正的戦闘規範」 藤井太洋
「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」 田中啓文

[海外長編部門]
『叛逆航路』 アン・レッキー 赤尾秀子
『ゼンデギ』グレッグ・イーガン 山岸真
『ガンメタル・ゴースト』 ガレス・L・パウエル 三角和代
『神の水』 パオロ・バチガルピ 中原尚哉
『完璧な夏の日』(上下巻) ラヴィ・ティドハー 茂木健
『ヴァルカンの鉄鎚』 フィリップ・K・ディック 佐藤龍雄

[海外短編部門]
「良い狩りを」 ケン・リュウ 古沢嘉通
「縫い針の道」 ケイトリン・R・キアナン 鈴木潤
「罪のごとく白く、今」 タニス・リー 市田泉
「仮面」 スタニスワフ・レム 久山宏一
「継電器と薔薇」 ジーン・ウルフ 宮脇孝雄
「アルフレッドの方舟」 ジャック・ヴァンス  中村融
「ビューティフル・ボーイズ」 シオドラ・ゴス 鈴木潤

[メディア部門]
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 監督:ジョージ・ミラー
『スターウォーズ フォースの覚醒』 監督:J.J.エイブラムス
『チャッピー』 監督:ニール・ブロムカンプ
『コングレス未来学会議』 監督:アリ・フォルマン 原作:スタニスワフ・レム
『放課後のプレアデス』 監督:佐伯昭志 原作:GAINAX アニメーション制作:GAINAX
『屍者の帝国』 監督:牧原亮太郎 原作:伊藤計劃×円城塔 アニメーション制作:WIT STUDIO
『ガールズ&パンツァー劇場版』 監督:水島努 アニメーション制作:アクタス
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』 監督:塩谷直義 総監督:本広克行 アニメーション制作:Production I.G

[コミック部門]
『キラリティ』全1巻 大石まさる
『はごろも姫』上下巻 海野螢
『ラブやん』全22巻 田丸浩史
『シドニアの騎士』全15巻 弐瓶勉
『まりかセヴン』全8巻 伊藤伸平
『百万畳ラビリンス』上下巻 たかみち
『鉄のラインバレル』全25巻 清水栄一×下口智裕

[アート部門]
星野勝之
寺田克也
岩郷重力
爽爽
永野のりこ
鷲尾直広
鈴木康士
生頼範義
YOUCHAN
Redjuice

[ノンフィクション部門]
『SF雑誌の歴史 黄金期そして革命』 著:マイク・アシュリー 訳:牧眞司
『SFまで10000光年』&『SFまで10万光年以上』 著:水玉螢之丞
『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』 著:牧村康正 山田哲久
『未完の計画機  命をかけて歴史をつくった影の航空機たち』 著:浜田一穂
『ハヤカワ文庫SF総解説2000』 編:早川書房編集部
『殊能将之読書日記2000-2009』 著:殊能将之

[自由部門]
国産旅客機 MRJ初飛行 「国産初のジェット旅客機」
マツコとマツコ 日本TV系列放送 「TVを利用して不気味の谷の実験をしたことについて」
え~でる すなば+ 2015年夏 「プロジェクションマッピングを使用した画期的な砂場遊びゲーム」
ニューホライズンズ冥王星探査 冥王星探査 「人類初の太陽系外縁天体の冥王星探査」
ローダンシリーズ 500巻出版達成 「いつまでたっても候補にあげられないから」

SWから「ガルパン」「マッドマックス」「サイコパス」も、第47回星雲賞参考候補作9部門で発表

《animeanime》

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