【スズキ バレーノ 試乗】走りなら迷うことなく「XT」だが、経済性は「XG」か…会田肇

試乗記 国産車
スズキ バレーノ 1.0Lターボ「XT」セットオプション車
スズキ バレーノ 1.0Lターボ「XT」セットオプション車 全 14 枚 拡大写真

軽自動車で相次ぎヒット作を出し続けて来たスズキが、昨年辺りから小型車シフトを鮮明にしている。新型『ソリオ』のヒットに続いて『イグニス』を発売したと思ったら、今度は『バレーノ』をラインナップに加えた。しかもこのバレーノはインドで生産された“輸入車”である。

スズキの説明によると、バレーノは「日本で開発され、テストやチューニングはヨーロッパ。生産はインド国内の生産子会社『マルチ・スズキ・インディア』で行われる」という。全生産量の3分の2はインド国内で販売され、残りは日本やヨーロッパでも展開する、バレーノは紛れもなくスズキの“グローバル・コンパクトカー”と言っていい存在なのだ。

また、「インド製造に対して不安視する向きもあるが、日本と同等の最新鋭設備を投入しており、品質面で問題はまったくない」(スズキ)とする。

ラインナップは1.2リットル4気筒・NA「デュアルジェットエンジン」+CVTと、1.0リットル3気筒・直噴ターボ「ブースタージェットエンジン」+6速ATの2タイプ。ボディサイズは、全長3995×全幅1745×全高1470mmとなり、全長の割に横幅がある。これは全長で税額が変わるインドの税制が関係しているとのことだが、いずれにしろ、全幅が1700mmを超えることで日本では“3ナンバー”となる。

また、ラインナップで上位モデルなのは排気量が小さい1.0リットルモデル「XT」だ。オートエアコンやディスチャージヘッドランプ、オートライト機能など、上級モデルでは定番の仕様を標準装備。一方でXGはこれらが非搭載となる。ただ、バレーノが最大のウリとしているミリ波レーダー方式の衝突被害軽減システム「レーダーブレーキサポートII」はどちらのグレードにも標準装備となっている。

運転席に座ると、適度な視界と幅広さを感じさせるが、室内から高級感はあまり伝わって来ない。ダッシュボードはシボは造ってあるものの素材は硬質樹脂で構成され、エアコン周辺のスイッチ類も質感もイマイチ。モール類も少々チープ感を感じさせるのだ。むしろ、バレーノで評価すべきは3ナンバーボディならではの横幅のゆったり感。この感覚を軽乗用車並みの価格帯で買えるのはバレーノならではの魅力と言っていいだろう。

走りは圧倒的に1.0リットルターボの「XT」に分がある。1tを下回る軽量ボディと、「1.6リットル相当のトルク」(スズキ)を発揮するエンジンとアイシン製6速ATの組み合わせが実にリニアな反応を示してくれるのだ。だから運転していてとても楽しい。変速もスムーズで、トルクも十分あって3気筒エンジンであることのマイナス面も感じさせなかった。

これが1.2リットル「XG」に乗り換えるとその走りの違いに驚きを隠せない。CVTならではの特性故に、踏み込んでもエンジンの回転に速度が付いてこないのだ。クルージング主体なら十分な実力なのかもしれないが、少しでも走りを楽しみたいというなら迷うことなく「XT」を選ぶべきだろう。

とはいえ、1.0リットル「XT」は税制面で一切優遇がないのも事実。しかもガソリンはハイオクとなる。1.0リットルクラスでハイオクを使うとなると抵抗を感じる人も少なくないだろう。そうなると装備面や走りで見劣りしても、価格が標準車で30万円安い1.2リットル「XG」が選択肢として入ってくることになる。この辺りはなかなか悩ましい判断となるだろう。

■5つ星評価(XT)
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

会田肇|AJAJ会員
1956年・茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。大学卒業後、自動車専門誌の編集部に所属し、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビゲーションやITS分野で執筆活動を展開し、それに伴い新型車の試乗もこなす。 

《会田肇》

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