全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)開幕戦「NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」は24日、決勝日を迎え、山本尚貴が昨年の最終戦第2レースに続くポール・トゥ・ウィンを達成した。2位は国本雄資、3位はF1帰りの新人ストフェル・バンドーン。
前日の予選終了後に雨が降ったものの、決勝日も鈴鹿サーキットの天候は曇り時々晴れ、路面はドライ。ただ予選日同様、陽の照り具合による温度変動が小さくはない印象で、さらにこの日は風も強く、マシンの空力面への影響もまた小さくはなかったようだ。2輪併催であることの路面への影響や、もちろんヨコハマ製ワンメイクタイヤでの初レースということも含めて、いつも以上に皆が“未知”の要素を多く抱えた状況で決勝250kmレース(43周)が始まる。
しかしながら、レース展開の基本構図は前年までと大きくは変わらなかった。燃費面で1回のピットストップは必要になるなか、そこでタイヤを交換するか、しないか(あるいは交換本数をアレンジするか)というのが戦略の根幹で、あとは前後を走るライバルとのピットタイミングの駆け引きに勝敗が集約される、そういった高度で緻密な“いつも通り”の攻防戦が展開された。こうなると、予選下位からの巻き返しは雨でも降らないことには難しい。
スタートに大きな波乱はなく、ポールポジションの#16 山本尚貴(TEAM 無限/ホンダ)が先頭、これに予選2位だった#2 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)が続き、3番手には予選4位の#41 S.バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)がつけた。そして結局、表彰台はこの3者がそのままの順位で得ることになる。
#16 山本はピットタイミングで1周だけ先頭を譲ったのみのポール・トゥ・ウィン。しかし、快勝ではあっても楽勝ではなかった。朝の30分間のフリー走行では、なんと最下位19番手タイム。順位を気にするセッションではないが、山本も、そして盟友である担当エンジニアの阿部和也氏も、実際に朝はセットアップ面で苦しんでいた旨をレース後に語っている。だが、「決勝直前の8分間の走行で復活しましたね」(山本)。
思えば前日のポール獲得も、金曜の練習走行19番手、土曜朝のフリー走行16番手からの、Q1~Q3オールトップタイム完全ポール奪取だった。本番に向けての合わせこみの力を山本、阿部エンジニア、そしてチームが発揮したからこそのポールと優勝。昨年の最終戦鈴鹿(2レース制)の第2レースに続くポール・トゥ・ウィンで、3年ぶりの王座獲得に向け山本は最高のスタートを切った(通算3勝目)。
山本尚貴のコメント
「ようやく1レース制で初めて優勝でき、嬉しいです。とにかく勝ちたかったので。金曜の時点ではポールや優勝を狙えるポテンシャルは感じられなかったんですけど、僕とチームとホンダ、皆があきらめずに週末を戦った結果だと思います。九州で大変な思いをされているみなさんのなかにも、僕に力を送ってくれたファンの方々がたくさんいることを僕は知っています。こうしてポール・トゥ・ウィンを決めることができ、何かをプレゼントできたんじゃないかな、と思います」
山本はブリヂストンタイヤでの最終レースと、ヨコハマタイヤでの最初のレースにポール・トゥ・ウィンで連勝したことになる。チーム無限の手塚長孝監督は、「まったくラクではなかったですが、記録にも記憶にも残る戦いができたと思います」と喜んだ。
2位は#2 国本。「なんとか2位になれて嬉しいです」という実感からは、今日は山本には対抗できなかった状況が窺えるが、悲願のシリーズ戦初優勝に大きく近づいた雰囲気の今季オープニングレースだった。3位は#41 バンドーン。F.アロンソの代打でF1デビューを飾ったバーレーンGPでは10位入賞、SFデビュー戦では3位表彰台である。レース後のバンドーンは、「いいウィークエンドだった。ミスのないレースができたと思う」と満足感を滲ませていた。
決勝4~6位は以下の通り。
4位 #34 小暮卓史(DRAGO CORSE/ホンダ)
5位 #10 塚越広大(REAL RACING/ホンダ)
6位 #3 J.ロシター(KONDO RACING/トヨタ)
波乱の予選で中団~下位に沈んだ(山本以外の)チャンピオン経験者たちのなかで入賞したのは、7位の#36 A.ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)のみ。#19 J-P.デ.オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)、#1 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)、#37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)は10~12位だった。今日の展開のなかでは、彼らといえどもジャンプアップは難しかった。
予選3位の新人#20 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)はフォーメーションラップ発進時にスタート手順(作業)違反があり、ペナルティストップ10秒を受けるなどして決勝14位。また、予選8位だった#8 小林可夢偉(SUNOCO TEAM LEMANS/トヨタ)はピットストップ後にタイヤがしっかり装着されていないという状況に遭遇、大きく遅れて最終的には完走最下位の16位だった。
次戦に向けても様々な焦点が生まれた今季のSF。第2戦は岡山国際サーキットに舞台を移し、5月28~29日に開催される。