【インタビュー】日本に拠点も、長城汽車デザインのこれから…デザインディレクター 中島敬氏

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中島敬エグゼクティブ・デザインディレクター
中島敬エグゼクティブ・デザインディレクター 全 23 枚 拡大写真

ここ数年、モーターショーではSUVブランド「哈弗」(HAVAL・ハバル)のみのブースを展開している長城汽車。それではSUV以外の車種はこれからどうなるのか。新たにデザインディレクターに就任した中島敬氏と、ハバルにかかわって来た副デザインディレクターにインタビューした。

◆デザインディレクター2名体制

----:中島さんは長城汽車テクニカルセンターVP(Vice President、副社長に相当)、そして造形設計2部のエグゼクティブ・デザインディレクターということですね。どのような役割を担当しているのですか?

中島敬エグゼクティブディレクター(以下敬称略):長城汽車のデザイン部は、大きく分けて2つのスタジオで構成されています。ピエール(現デザインディレクターのピエール・ルクレール氏)のスタジオと、私が新しく作り上げてゆこうとしているスタジオです。これを両輪のように使って、車種を展開していこうという体制になっています。

----:それぞれのスタジオからデザイン案を出し、競作するということなのでしょうか?

中島:競作もありますが、ハバルは引き続きピエールのスタジオが手がけ、私は新しい車種構成も含めたハバル以外の車種を担当します。今後は、現在の「長城」(GREATWALL=グレートウォール)をあくまで企業ブランドと位置づけ、その傘下にハバルと新しい車種構成を置く体制にしようとしています。

ハバルはSUVに特化したブランドですが、その他の車種をどういった扱いにするかというのは、実はまだはっきりと決まっているわけではありません。これからやろうとしているのが、まさにこの部分。ピエールと私がそれぞれの車種構成を担当し、ブランド戦略やDNA表現をすることになっています。

----:ということは、業務内容はスタジオごとにまったく異なるわけですか?

中島:保定市にある本社スタジオはグローバルデザインセンターという位置づけで、このほか稼働中の上海と、開設準備中の横浜というふたつのサテライトスタジオがあります。そしてハバルは本社と上海スタジオが担当し、それ以外を本社と横浜スタジオでデザインするという体制です。

◆新しいチャレンジを求めて新天地へ

----:車種構成やデザイン戦略そのものをこれからデザインしていこうというわけですね。ちなみに、ディレクターに就任してどれくらいになるのですか?

中島:着任したのが2015年の末ですから、まだ5か月ぐらいですね。ですから現在は、新しいデザイン戦略をどうするか、ということを考えているところです。

----:差し支えなければ、日産自動車から移籍したいきさつなどを教えてください。

中島:日産では史郎さん(中村史郎CCO)といっしょに、いろいろなことをやってきました。しかし新陳代謝や世代交代を進める必要も感じていたし、「日産でやれることはやり切ったかな」と。それで新しいチャレンジを探していました。そして最終的に長城汽車のポジションに興味を持ち、日産を出る決意をしたというわけです。

----:長城汽車の立ち位置に興味があったとは、どういうことなのでしょうか。

中島:合弁事業を展開するメーカーが多い中で、長城汽車は独立した状態のままで成長してきたことが特徴です。日産にいたときは東風日産との仕事をしたこともあり、合弁事業の良い点も難しい点も知っています。その上で、合弁していないメーカーに魅力を感じたんです。それに長城汽車も、これからの発展の準備のために新しいディレクターを求めていました。

----:お互いの、新しいチャレンジを求めるタイミングが合致したわけですね。

中島:私のチームには現在、本社スタジオに30人くらいのデザイナーがいますが、彼らにとってコピーや単なる編集デザイン(良いと思ったディテールを寄せ集めて全体をまとめるデザイン)は過去のもの。みんな、本質的なクリエイション(創造活動)をして新しい車種構成を作っていきたいと考えているんです。私はその手伝いをするということです。

◆ハバルはグローバルなブランドを目指す

----:では次に、国内で絶好調のハバルについても教えてください。

王斌・造形設計部エクステリア副ディレクター(以下敬称略):ハバルというのは、最初は車種の名称でした。それがSUVブームのはじまりのタイミングに発売されたことで大ヒットとなりました。ですから会社としても自然とSUVラインナップに焦点を当てるようになり、その全体をハバルというブランドにしたわけです。

ただしSUVブームになる以前、中国の大衆はセダンを欲しがっていました。ですからSUVブームの次にセダン回帰の流れが来ることも考えられます。だから我々としては次の戦略を立てていく必要を感じています。

中島:いまの中国市場はセダンといえばまだまだステータスを重視したが人気で、後席のキャビン空間を大きくしたものが好まれます。ですが中国でも欧米市場のように、スポーティでスペシャリティ感覚を魅力とするセダンに注目が集まってきています。

----:ハバルはすでにタイなどに組立工場があり、そこから世界各国に輸出されています。今後はどのような展開をするのでしょうか?

王:経営陣は、グローバルブランドとなることを目指しています。ただしそれはステップ・バイ・ステップ。中東をはじめ新興国では販売されていますが、欧米での本格展開はまだまだこれから。現在は一歩ずつ前進しようとしているところです。

◆新時代を迎える長城汽車デザイン

----:今後の新車種の展開が楽しみです。

中島:開発の成果は、順次お見せできるようになるはずです。横浜スタジオの稼働開始とともに、本格的にエンジンを始動するといったところですね。具体的なスケジュールをお教えできないのが残念ですけれども、これからがんばっていきたいですね。

----:やりがいも大きそうですね。

中島:今回の北京ショーについてピエールとも話したところなんです。反響がいくら良くても安心しちゃいけないよね、と。他メーカーもどんどん追い上げて競争が激しくなっていますから、刺激的ですよ。

横浜スタジオは、近いうちに稼働を始めます。そうなれば、私は本社と横浜を行き来することになるでしょう。オープンな雰囲気にして、面白いコンセプトのスタジオにできればいいと思っています。

《古庄 速人》

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