産業技術総合研究所(産総研)省エネルギー研究部門 周豪慎首席研究員とエネルギー界面技術グループ 王雅蓉博士は6月8日、三菱自動車と共同で、世界で初めて正極側の活物質に共融系液体を利用した二次電池を開発したと発表した。
産総研は次世代リチウムイオン電池の実用化を目指しており、現在、ハイブリッド系リチウム-空気電池や非水系リチウム-空気電池、リチウム-硫黄電池、ナトリウムイオン電池と共に、安価で環境に優しい共融系液体を用いた電池(共融系電池)の研究開発を進めている。
今回の共融系電池の開発では、正極の活物質である塩化鉄水和物(FeCl3・6H2O)の結晶粒子に、尿素(CO(NH2)2)の固体粉末を混合して共融系液体とした。2種類の物質は常温ではそれぞれ固体だが、共融点組成で混合すると凝固点が大幅に低下して約-7度まで固化しなくなる。
正極側にこの共融系液体を用い、負極側にはリチウムイオン電池では一般的な金属リチウムと有機系の電解液を用いて共融系電池を試作。25度と40度での充放電特性を測定したところ、初期放電電圧が約3.4V、正極側の容量が40度では141mAh/cm3で、今回用いた共融系液体が正極の活物質としてほぼ理論値に近い理想的な動作をした。この共融系電池では、正極側の電解液を別途必要とせず、また固体で問題になる構造劣化が生じない点が、電池を構成する上での大きな利点となる。
なお、今回の研究成果は、6月3日に英国の学術誌「Energy & Environmental Science」のオンライン版に掲載された。