【ダイハツ ブーン&トヨタ パッソ 試乗】装備こそ軽レベルだが、走りと乗り味はしっかり…会田肇

試乗記 国産車
トヨタ パッソ と ダイハツ ブーン シルク
トヨタ パッソ と ダイハツ ブーン シルク 全 27 枚 拡大写真

約6年ぶりにフルチェンジした3代目のトヨタ『パッソ』とダイハツ『ブーン』。先代までと変わって、企画から設計、生産に至る全てをダイハツが行い、トヨタはダイハツから初めてOEMを受ける。軽自動車で培った技術を小型車に反映させる、かつてない手法で両車は誕生したのだ。

コンセプトは「街乗りスマートコンパクト」として、ボディサイズはほぼ据え置かれた一方でホイールベースを50mm延長し、これが大幅な前/後席の間隔拡大につながった。それでいて最小回転半径は4.6mにとどめている。この数値こそ先代よりも若干大きくはなっているが、長くなったホイールベースを踏まえれば、“街乗り”をメインとするコンセプトには名実ともに深化させることができたと言っていいだろう。

ボディタイプは1種類だが、グレード体系は2種類ラインアップされた。パッソは「パッソ」と上級の「パッソ・モーダ)」を、ブーンも「ブーン」と上級の「ブーン・シルク」を用意した。パッソとブーンの違いは基本的にエンブレムとグレード名以外、違いはほぼないと言っていい。強いて違いを言えば、パッソにはディーラーオプションで設定されているリアフォグランプがブーンには用意されていないことぐらいだ。

外観を見て気付くのがウェストラインをグッと低くして、相当意識して視界向上に務めているなぁという点。運転席に座ってそのあたりをチェックしてみると、その予想は大当たり。前後左右の風景が広々と見通せる。前方視界も良好で、何よりボンネットの上端も盛り上がっているので車幅が確認しやすい。まさに“街乗り”に相応しい造り込みがここでもなされているのだ。

室内の質感はそこそこ。ソフトパッドは採用されていなかったが、見た目でチープさは感じさせない。フロントのベンチ型シートも左右がたっぷりとしていて、座り心地も良好。バックシートの高さも充分で、これなら長時間走行にも耐えられるかもしれない。ただ、内装のあちこちで軽自動車からの流用が多いのが見た目にもハッキリとわかるのは興醒めする。ステアリングからエアコンの操作部に至るまでほとんどが現行の軽自動車に装備されているものと共通なのだ。

冒頭でも述べたように、開発そのものが「軽自動車で培った技術を反映」させて造り込まれているのだからある意味仕方がない。品質的にも特に問題があるワケじゃない。でも、もう少し上級車からの落とし込みもあっても良かったのではないだろうか。個人的にはそんな思いを抱いた。

それと寒冷地仕様車を選んだ際の装備がチグハグなのも気になった。バッテリー系やワイパーなどの強化がされているのはもちろんだが、この仕様ではワイパーが氷結しないようワイパー下にヒーターを入れた「ウインドシールドデアイサー」や、後席用のリアヒーターダクトが装備される。その一方で、シートヒーターは運転席のみだし、軽自動車にも設定があるヒーテッドミラーも用意がない。寒冷地での購入者も少なくないこの車両で、この中途半端な装備は首をかしげてしまう。

走りは想像以上にしっかりとしたものになっていた。軽自動車からのアップグレード的に思っていたら良い意味で期待は裏切られる。乗り心地は比較的に硬めではあるものの、市街地の比較的ラフな舗装路でも不快な感じはない。ステアリングを切った時の腰砕けもなく、走行中のフラット感も明らかにレベルが高くなっていたのだ。これはスタビライザーを前後に追加したことが大きいのだという。これで横方向の剛性が格段に向上したのだ。

ブーン&パッソを試乗する前に抱いていたのは「軽自動車とほとんど同じ装備で、ちょっとボディが大きいこの車を選ぶ価値はあるのか」という疑問。正直言って、装備は残念に思うことが多かったけれども、この走りと乗り味には明らかなアドバンテージを感じた。軽自動車の走りに不満を感じ、車室内にもう少し余裕が欲しいと感じたならば、ブーン&パッソは、まさにそういうニーズには最適な車であることは間違いない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

会田肇|AJAJ会員
1956年・茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。大学卒業後、自動車専門誌の編集部に所属し、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビゲーションやITS分野で執筆活動を展開し、それに伴い新型車の試乗もこなす。 

《会田肇》

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