【ボルボ XC90 T8 試乗】T6プラス100万円、プラグイン7シーターという価値…井元康一郎

試乗記 輸入車
ボルボ T8 ツインエンジン インスクリプション
ボルボ T8 ツインエンジン インスクリプション 全 16 枚 拡大写真
ボルボが今年1月に日本市場に投入した大型クロスオーバーSUV『XC90』を短時間テストドライブする機会があったのでリポートする。

XC90はボルボの新世代プラットフォーム「スケーラブルプロダクトアーキテクチャ」採用第1号モデル。全長4950×全幅1960×全高1775mmという寸法は、欧州における乗用車のクラス分けではプレミアムGセグメントに相当するが、搭載エンジンはすべて2リットル直列4気筒と、かなり思い切ったダウンサイジングコンセプトにもとづいて作られている。

試乗車はスポーティグレードの「T6 AWD R-デザイン」とプラグインハイブリッドの「T8 ツインエンジン インスクリプション」。試乗ルートは成田空港近くの市街路、郊外路、高速道路。試乗コンディションは全区間1名乗車、エアコンAUTO、走行モードノーマル、路面ドライ。

T6 R-デザインの次にドライブしたのはT8 ツインエンジン。直4エンジンのスペックはT6と同じ320ps/400Nm(40.8kgm)だが、前後輪にモーターを1基ずつ装備するパラレルハイブリッドシステムを持ち、システム出力は407ps/640Nm(65.3kgm)。ボルボによれば、このT8を単なる環境技術ではなく、V型8気筒に置き換わるパワートレインと考えているのだという。

まずはプラグインハイブリッドのEV走行について。バッテリー残量が少ない状態でスタートしたため、その能力を試した区間は数kmにすぎなかったが、少なくとも市街地走行では信号が青に変わって少々勢い良く飛び出したくらいではエンジンがかかることはなく、電気モーターだけで十分に加速することができた。スロットルを大きく踏み込めばエンジンがかかるが、そのさいのダッシュ力は市街地では危険なほどで、周囲の交通に調和した走りをしているかぎり、EV走行でその領域を使うケースはほとんどないだろう。

東関東自動車道富里インターチェンジで流入路を低速で走行した後、一気に走行車線の流れまで加速してみた。フルパワーでの加速はいかにも300kW級に相応しいもので、2320kgという重いボディをたちまち狙った車速に持っていくことができた。高速巡航時は緩い下り坂やコースティングのような軽負荷のときはEV走行、それ以外はハイブリッド走行という配分になるようだった。

大栄インターチェンジで高速を下り、今度は下道走行。幹線を外れ、神崎町という地区の狭い1車線道路を走ってみた。郊外路走行では、エンジンパワーが発電と走行の両方に振り分けられ、バッテリーの電力量がある程度積み重なるとエンジンが停止してEV走行に切り替わるような制御になる。重量級ボディにパラレルハイブリッドという組み合わせから想像していたより、はるかにストロングハイブリッドらしい走行感だった。また、XC90はボディがスクエアなデザインで、車両感覚がつかみやすい。全幅1960mmという大柄なサイズながら、狭い田舎道でのすれ違いなどにもさほど気を使わなくていいのは美点だと感じられた。

その後、利根川流域から圏央道~東関道を経由して出発地であるラディソンホテル成田に帰着。圏央道神埼インターチェンジでは上り勾配の流入路で再びフルスロットル加速を試してみたが、バッテリー残量が僅少でも一発、二発の全開加速であればフルパワーは十分に出せるようだった。59.6kmを平均車速58km/hで走った結果、燃費計の値は13.5km/リットル。燃料をほとんど使わなかった最初のプラグイン走行の距離を差し引いて計算すると、ちょうど13km/リットル。

この数値はエコランを気にせずに走った結果。田舎道でのハイブリッド走行時にエンジン停止状態でのコースティングを上手く使うなど、ハイブリッドカー的なエコランを心がければ、これよりずっと燃費良く走れそうな感触はあった。ハイブリッド走行時、インパネのパワーメーター内にバッテリー残量に合わせて“これ以上踏み込むとエンジンがかかりますよ”というラインとスロットル開度が表示されるようになっており、エコランはやりやすそうだった。

XC90 T8ツインエンジン インスクリプションの価格はコンベンショナルなエンジン駆動の「T6 インスクリプション」のちょうど100万円高となる1009万円だが、T8はガラスサンルーフが標準といった装備差もあるので、実質的な価格差はもう少し縮まる。日本は一般道、高速道とも制限速度が先進国の中で最も低いので、パワー的には320psのT6でも過剰気味で、ベースモデルである254psのT5 、あるいは日本未導入の235psディーゼルD5でも十分なほど。そのなかで407psのT8を選ぶ意義は、混雑した市街地でも確実にアイドリングストップし、その場合でも空調も完全に効くという快適性と、近距離であればEVとしても運用可能であることが主となろう。また、プラグインハイブリッドとしては珍しく、フル7シーターレイアウトが維持されているので、多人数乗車の機会が多いがクロスオーバーSUVに乗りたいというカスタマーにとっては貴重な選択肢となろう。

■5つ星評価(プレミアムEセグメント基準)
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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