【トヨタ エスティマHV 改良新型】VSホンダ オデッセイHV パッケージング比較

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新型エスティマHV
新型エスティマHV 全 20 枚 拡大写真

2006年のデビュー以来、10年ぶりの大改良を行ったトヨタ『エスティマ』。

その内容はフロントフェース、歩行者保護対応のボンネット、フロントフェンダー、 メーター、センターコンソール、シート生地の変更、トヨタセーフティセンスCの採用、さ らに足回りの改良、パフォーマンスダンパーの追加など多岐に亘るビッグチェンジな のである。

今年の夏以降、日産『セレナ』、ホンダ『フリード』も新型となり、ミニバンブームが再燃すること必至。そこで新しいエスティマと、その直接的ライバルとなるオデッセイを、ミニバン選びでもっとも重要なチェックポイントとなる後席乗降性、居住性で 比較してみた。

まずはスライドドアの開口部。エスティマは幅74cm、高さ110cm。オデッセイは 幅75cm、高さ123cm。開口面積とともに重要なステップの高さ、段差はエスティマが40cm、フロアまでの段差8cm。つまり地上からフロアまでの高さは48cmの2ステップフロアである。オデッセイは同29(アブソルート)~30(標準車)cm。なおかつステップとフロアに段差のないワンステップフロアとなる。

両車ともにパワースライドドア完備で雨の日に傘を差したまま乗車できるなど、大開口スライドドアのメリットは絶大だが、オデッセイのほうがやや乗降しやすいイメージだ。

2列目席は今やファミリーユーザーの標準仕様と言っていいキャプテンシートで比較 。シートサイズ(クッション長/幅/背もたれの高さ)はエスティマが 50/53/62cm。オデッセイが50/50/63cm。どちらも似たようなサイズだが、ここでかけ心地や降車性にかかわる大きなポイントがある。それはフロアからシートクッション先端までの高さ=ヒール段差。これが低いとかけ心地の落ち着き感に欠け、 また立ち上がり性=降車性が悪くなる。エスティマは33cm、オデッセイは35.5cmと、どちらも合格レベルである。

ところで、室内高はエスティマが125.5cm、オデッセイが132.5cm。全高はエスティマ176cm、オデッセイ168.5cm(標準車は169.5cm)と、オデッセイが低いにもかかわらず、なぜか? それはセンタータンクレイアウト採用でワンステップフロアを持つ、低床プラットフォームのオデッセイのフロアがごく低いからだ。

2列目席のかけ心地、居心地は両車、乗用車としてあり得ない広さ、ゆとりがある。 ほとんど新幹線のグランクラス並み、と言ってよい。シートスライド量はエスティマ 80cm、オデッセイ74cm。身長172cmのドライバー基準でその背後に座ると、ひざ回りにエスティマは約80cm、オデッセイも約78cmの空間が確保され、オットマンを出してリラックスすることが可能。リクライニング角度はエスティマのスーパー リラックスシートが180度、プレミアムクレードルシートと呼ばれるシート表皮裏に 3cmのクッションを張り付けたふんわりしたかけ心地を持つオデッセイのほうは170度である。

オデッセイのプレミアムクレードルシートの場合、背もたれを倒すと座面が上昇し、 シートを寝かせても目線が前に向く機能がうれしい。一方、エスティマは2脚のキャプテンシートを中寄せし、ロングスライドする際、中寄せ可能なスライド位置の自由度が高い点が便利だ。

このクラスで2列目席ロングスライド機構を持つミニバンの大きな特徴が、2列目席を 最高端位置にセットしたときの2列目席足元フロアの広さ。エスティマは奥行き最大 98cm、幅136cm。オデッセイは最大奥行き92cm、幅132cmとなり、どちらもお座敷感覚で使える、大型犬2頭がくつろげるほどのフラットスペースとなる。ただし、オデッセイHVはフロア前端が床下にバッテリーを収めたため、やや盛り上がっている(ガソリン車はフラット)。

その点、エスティマHVはバッテリーを1列目席間のフロアコンソール内に収めたため、1列目席の左右スルーができないものの、2列目席フロアは完全にフラットである。

3列目席へのアクセス性は、両車ともに2列目席ウォークインと2-3列目席スルーの両 方で行える。その際の乗降間口はエスティマが27.5cm/16.5cm、オデッセイが 38cm/16cmとなる。当然、室内高にゆとりがあるほうが、より頭をかがめなくて済む 。

身長172cmの乗員が3列目席に座ったときの頭上空間はエスティマ9cm、オデッセイ14.5cm。ひざ回り空間はエスティマの場合、2列目席を最後端位置まで下げると0cm(座れない)。2列目席をひざ回り空間が23cmになるところまで前にスライドさせると8cmになり無理なく着座可能。オデッセイは2列目席が最後端位置でも14cmのゆとりがある。とはいえこれは2列目席のスライド量と関係するので、優劣は付け難い 。むしろかけ心地にかかわるのはフロアからシートクッション先端までの高さ=ヒール段差。エスティマ28.5cm、オデッセイ32.5cmで、太股裏がシートクッション にしっかり密着し、体育座りにならないいす感覚のかけ心地が得られるのはオデッセイのほうだ。

また、3列目席に座った時、2列目席下に靴のつま先が入りやすいのもオデッセイである 。前席シート下に靴のつま先が入りやすいと(空間が大きいと)、足を伸ばし、よりリラックスした着座姿勢が取れるわけだ。

両車ともにHVモデルを選べば車内に100V/1500Wコンセントが備わり、アウトドアではもちろん、災害時にも威力を発揮。車中泊もしやすく、この2台のミニバンは 地震大国日本で頼りになる代表格でもあるわけだ。実際、3.11の東日本大震災発生後、トヨタは日本中からエスティマHVを集め、被災地に明かりをともし、エスティマHV 数台のバッテリーで復興支援コンサートの電源をまかなった、という逸話もあるほどだ。

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。

《青山尚暉》

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