【ムルティストラーダ 1200エンデューロ 550km試乗】ダートエリアへも“ひとっ飛び”の高速巡航力…青木タカオ

モーターサイクル 新型車
高速、ワインディング、舗装林道、市街地でドゥカティ ムルティストラーダ1200エンデューロを徹底試乗した。
高速、ワインディング、舗装林道、市街地でドゥカティ ムルティストラーダ1200エンデューロを徹底試乗した。 全 38 枚 拡大写真

ドゥカティ『ムルティストラーダ1200エンデューロ』を2日間かけて、全行程550kmの道のりで乗り込んだ。市街地、高速道路、ワインディング、オフロードなど、あらゆるシチュエーションで、それも雨が降ったりドライになったりしたなか走ることができた。

アドベンチャーモデルに求められる重要な性能の1つに、高速巡航性の高さがある。

たとえば、200~300km先、あるいは500~600km先という猛者もいるだろう、自分の住む街からうんと離れたオフロードエリアに足を伸ばすとき、高速道路を一気に駆け抜けられるクルージング性能が求められ、それはとても重要だ。

その点、ムルティストラーダ1200エンデューロはハイスピードレンジでの移動が得意で、疲労が少ないままに距離を稼げる。ウインドプロテクション効果が高く、オフロード用ヘルメットにゴーグルという高速走行には不向きな装備であるにも関わらず、頭部や顔面への走行風の直撃が感じられない。バイザーの風切り音もしないなど、開発陣が空力を徹底追求してきたことが想像に容易い。

150psを発揮する1200テスタストレッタDVTエンジンは充分すぎるほどにパワフルだが、不快な振動がなく快適性の高さに貢献している。4種類のライディングモードはフルパワーを発揮する「スポーツ」「ツーリング」のほか、「アーバン」と「エンデューロ」があり、2日間で550kmを走った今回は舗装路では「ツーリング」をメインに使った。スムーズなパワーデリバリーとなって、サスペンションは長時間の走行に適したセットアップだから疲れにくい。

クルーズコントロールも多用し、慣れてしまうと空いている高速道路ではなくてはならないと感じるほど便利。30リットルもの大容量を持つ燃料タンクのおかげで、休憩や給油など不要と言わんばかりに航続距離を伸ばし、高速道路での走行は距離に物足りなさを感じるほどだった。

市街地で感じたのは、低速時のギクシャク感がないこと。これはオフロードでの低速走行を想定し、ギヤ比をショート化しているからで、1速は特にローギヤードになっている。これが渋滞時などでのノロノロ運転に功を成しているから面白い。参考までに、1速2000回転で走ったとき1200/Sだと20km/hだが、1200エンデューロなら16km/hで走れる。徐行時やタイトコーナーでも半クラが不要となり、扱いやすさを際立たせている。

オプションのパニアケースを備え、バンガローで泊まるための荷物とオフロードブーツから履き替えるためのシューズやレインウェア一式をそこに入れたが、積載力は申し分なしで、お土産もまだ入りそう。途中、雨に降られたが、ハードケースだから中身が濡れることもなく、おかげで乾いた清潔な着替えを守ることができた。

そしてワインディングも軽快。モードを「スポーツ」にすると、テスタストレッタエンジンのパワフルさが際立ち、スロットルレスポンスがいっそう鋭い。アクセルをワイドオープンしたときのシャープな吹け上がりは痛快で、足まわりもシャキッとし旋回性が高まる。

路面状況に応じたダンパー特性を瞬時に獲得する「DSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)」と名付けられるセミアクティブサスペンションは、電子制御によるダンパーの自動補正に違和感はなく、無意識なまま最適な減衰力をライダーに提供してくれるから素晴らしい。

たとえばコーナー進入時のブレーキングなら、「スポーツ」ではフロントフォークがカッチリとメリハリのある動きを感じさせるが、「ツーリング」だとしなやかにストロークし、上質なクルーザーのような乗り心地となる。シーンや好みに応じて使い分けることができ、ライディングモードの完成度の高さにはただただ感心するばかりだった。

■5つ星評価(オンロード編)
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
快適性:★★★★★
足着き:★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のバイクカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説。現在、多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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