寝耳に水!? 廃止渦中の「夕張支線」へ行ってみた

鉄道 企業動向
沼ノ沢~南清水沢間を行く夕張行きの下り列車。
沼ノ沢~南清水沢間を行く夕張行きの下り列車。 全 24 枚 拡大写真

今回の夕張支線行きでは、新夕張駅を除く全駅を訪ねることにした。ちょうど「青春18きっぷ」の日数が残っていたので、各駅を列車で自由に行き来できるはずなのだが、残念ながら列車本数が少ないのが仇になり、沼ノ沢から南清水沢までと鹿ノ谷から夕張までは徒歩にせざるを得なかった。鹿ノ谷~夕張間はわずか1.3kmなので気は楽だが、沼ノ沢~南清水沢間は4kmあり、普段歩かない人にはやや苦痛かもしれない。しかもアップダウンが多いので、夏場はかなりきつい。夕張支線でもっとも駅間営業距離が長い区間は清水沢~鹿ノ谷間の6.6kmだが、こちらはひと山越えるので勾配がきつく、よほど歩きに自信がある人以外は徒歩は避けたほうが賢明かもしれない。

そんなわけで、行程の都合で最初に訪れたのが清水沢駅。夕張支線最大の中間駅で、1987年まではここから私鉄の三菱石炭鉱業が分岐。三菱大夕張鉱から産出された石炭を国鉄に中継するため多数の側線が備わっていた。通票(タブレット)閉塞が残っていた2004年までは列車交換が可能だったが、現在は1線スルー化され、余計な線路はすべて撤去されている。そのため、ホームと駅舎の間は広大な空間と化し、その間に連絡通路が設けられる形となっている。駅は昨年に無人化され、出札窓口も撤去されてしまった。ただ、駅前には夕張支線最大の中間駅であった面影が残っており、文具店や旅館、駅前食堂が静かに営業していた。廃止されれば、駅前食堂が「駅」があったことを示す唯一の存在になるのかもしれない。

次に訪れた沼ノ沢駅は、かつて真谷地まで延びていた専用鉄道が発着していた。ホームの新夕張寄りには石積みの側線ホームが残っており、往時の賑わいを偲ぶことができる。無人駅ではあるが「レストランおーやま」という洋食店が併設されていたので、食事のついでに廃止後の行く末を尋ねてみたところ「現時点ではまったく見当もつかない」と言われた。おそらく現在はJR北海道から賃借していると思われるが、駅施設が市の所有になれば、いろいろと状況が変わってくるのかもしれない。夕張支線の存亡は店にとっても相当気になることであるに違いない。

沼ノ沢駅から並行する国道452号(通称・夕張国道)を歩いて1時間ほどで辿り着いた南清水沢駅は、三角屋根の小ぶりな駅で、国鉄時代は女性駅員が配置されたことで話題になった。ここは簡易委託駅で窓口が設けられているが、筆者が着いた15時過ぎはすでに営業を終えていた。窓口は現在も女性により運営されており、1840円までの乗車券(大人用)が端末発売されている。新千歳空港までのきっぷ以外はすべて金額式ということだ。入場券や硬券、補充券は発売していない。

この駅の近くには、夕張市内唯一の高校である北海道夕張高校がある。筆者が訪れた時はちょうど下校時刻に差しかかっていたが、隣の清水沢市街まではさほど距離がないせいか、南清水沢駅に隣接する踏切を渡り徒歩で下校する生徒がほとんど。いわゆる汽車通で乗り込んだ生徒は9人ほどだった。

南清水沢からは再び夕張行きの下り列車に乗り、鹿ノ谷へ。清水沢からは勾配をぐんぐん上りながら右手に渓流を望み、ときおり、廃止された夕張鉄道の線路跡を活用したサイクリングロードも見えてくる。夕張支線最大の難所かつハイライトと言える区間で、徒歩で越えるのはかなりきついと実感した。しかし、廃線跡マニアにとっては、サイクリングロードから夕張鉄道の跡を偲ぶことができる絶好の区間であるのかもしれない。

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《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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