寝耳に水!? 廃止渦中の「夕張支線」へ行ってみた

鉄道 企業動向
沼ノ沢~南清水沢間を行く夕張行きの下り列車。
沼ノ沢~南清水沢間を行く夕張行きの下り列車。 全 24 枚 拡大写真

鹿ノ谷は、夕張鉄道が運行していた時代の共同使用駅だったところで、駅舎内はかなり広いが、ここも1線スルー化されており、多数の側線があった線路脇の空き地だけが全盛期の面影を残している。夕張寄りの隣にはおあつらえ向きに線路を望む跨線橋があり、撮影スポットのようになっている。

鹿ノ谷から終点・夕張までは再び徒歩。沼ノ沢~南清水沢間と比べると散歩気分の距離なのでさほど苦痛ではないが、少々、アップダウンがあるので、1km程度のわりには時間がかかった。17時過ぎに着いた夕張駅は三角屋根の瀟洒な駅で、レストランや観光案内所が併設されている。隣には屋台村もあり、財政破綻した夕張を元気づける拠点となっているようだ。

夕張駅は夕張線の開業時に登場しているが、その歴史は目まぐるしく、2度も移転している。初代は「石炭の歴史村」の敷地内に、2代目は市内中心部に近い、旧夕張鉄道夕張本町駅付近にそれぞれあった。1990年、石炭産業から観光産業への脱皮を目指してホテルマウントレースイがオープンすることに伴い、市の中心部から800mほど大きく外れて移転したのが3代目の現駅で、周辺には日帰り湯の「レースイの湯」もあり、市民の社交場になっているようだ。観光客の姿も目立つが、鉄道を利用してということになると、16時31分発の2632Dが出た後は19時28分発の2634Dになるので、推して知るべしだろう。

たまたま観光案内所にいた男性職員に尋ねてみると、廃止の報道があってから、訪ねてくる人が増え始めたという。とくに、筆者が千歳から乗ってきた2629Dで訪れる人が一番多いそうだ。札幌や新千歳空港方面からだと、この列車しか選択肢がないため、必然的にそうなってしまうのだろう。ちょうど夕食時になったので、隣接するレストラン「和(なごみ)」に入った。年配のご夫婦が経営されているレストランで、最終列車が出る直前の19時まで営業しているのはありがたい。

奥様に廃止の件を尋ねてみると、やはり降って湧いたような話で、市民のなかには「相談もなしに」と憤っている人もいるそうだ。今後は喧喧諤諤の議論となりそうな感じもするが、JR北海道と夕張市が新しい公共交通機関のあり方をどう提案するのかにかかっているのではないだろうか。この点については市民も参加しての活発な議論があってもよいと思う。

施設の譲渡が前提なら、JR東日本の気仙沼線や大船渡線のようなBRT(バス高速輸送システム)のような形が真っ先に考えられるが、雪深い夕張ゆえ、市が保有するバス専用道路ということになると、国道や道道では必要がない除雪費が頭の痛い問題になるのかもしれない。すでに鉄道と並行する道路が完備しているだけに、既存のBRTとは異なる付加価値が望まれるのではないだろうか。

そのようなことを考えながら、夕張19時28分発の追分行き2634Dで夕張支線を後にした。乗客はわずか3人で、途中駅での乗降もなかった。追分からは室蘭本線に乗り換え、岩見沢経由で札幌に戻ったが、このルートは、1972年まで札幌~夕張間で運行されていた準急・急行列車『夕張』と同じだ。乗換え時間の関係で『夕張』よりは1時間近く余計にかかっているが、函館本線の野幌(江別市)からショートカットして、室蘭本線の栗山経由で夕張に入っていたかつての夕張鉄道と比べると相当な遠回り。2回乗換えの手間も加わって、軽い疲労感を覚えた。
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《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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