【ボルボ V60ポールスター 試乗】そのパフォーマンス、舐めてかかると大変なことに…中村孝仁

試乗記 輸入車
ボルボ V60ポールスター
ボルボ V60ポールスター 全 17 枚 拡大写真

ごついボルボが戻ってきた。そう感じさせてくれるのがポールスターの存在である。すでに何度かレポートしているように、ポールスターは新たなボルボの高性能部門。しかし、ごついボルボとはそれを指すわけではない。

ボルボには80年代からツーリングカーにレーシングマシンを送り込む伝統がある。古くは『240ターボ』、その後『850』時代には何とワゴンでレースにも参加した。その後『S40』、『C30』などを経て今、『S60』をベースとしたポールスター・シアン・レーシングが今年からWTCCに参戦している。ごついというのはこのレーシングマシンである。

今回のボルボレーシングで潔いと思うのは、他メーカーがレース専用のエンジンブロックを開発してレースに臨む中、ボルボは何と市販用のドライブeのブロックをそのまま使っているというのである。まだまだ頂点を極めるところには達していないが、今年はまずはデータ収集。そして来年はポディウムの頂点を狙い、再来年にWTCCチャンピオンを取りに行くという3年がかりのスケジュールを立てている。これまでも240やS40が華々しい活躍をし、98年にはS40でBTCCチャンピオンを獲得しているから、その実力は折り紙付きだ。そんなごついボルボが戻ってきたというわけである。

そして今回、これまでと大きく異なっているのは、そうしたレーシングフィールドのテクノロジーが市販車両にもフィードバックされ、それがボルボ・ポールスターとして結実していることである。メルセデスで言えばAMG、BMWで言えばMに相当する社内ブランド、それがボルボではポールスターというわけである。

ポールスターブランドは昨年も「S60/V60」にコンプリートカーが設定されていた。昨年のそれは直列6気筒3リットルユニットを搭載したものだったが、2017年モデルとして新たに登場したのは、レーシングマシンと同じ2リットルのドライブeユニットをベースとした直列4気筒にエンジンを変え、同時にトランスミッションもポールスターがキャリブレーションを行ったアイシン製の8速ATが組み合わされる。このほか、昨年までは電動油圧だったパワーステアリングもフル電動のものに改められた。

技術の進化は2リットル4気筒でツインチャージャーのユニットでも、3リットル6気筒ツインスクロールターボの性能を凌ぐ、367ps、470Nmのパフォーマンスを絞り出すに至った。ここまでパワフルなクルマを試すにはやはりサーキットがいいわけだが、そうはいってもこのクルマはロードカーである。そこで、一般道を貸し切り状態にしてワンウェイの完全クローズド状態で思う存分走らせてくださいという最高のオファーを戴いた。片側1車線ずつのルートはサーキットよろしく2車線をフルに使える。しかも路面は一般道だから、アンジュレーションもあればバンプもあるということで、乗り心地まで試せるというまたとない機会となった。

ボディは新たにフロントで21kg、リアで33kgダウンフォースが増えている。当然、安定性に大きく寄与していることは間違いないのだが、やはりそこはクローズされたとはいえサーキットではなく一般道の路面。ダウンフォースの有効性を感じるまでには至らない。しかし、そうしたアンジュレーションや路面の繋ぎなどがあるにもかかわらず、極めて安定したドライビングが楽しめ、何よりも乗り心地を全く損なっていない。だから、ごく普通にデイリーユースに使ったとしても、締めあげられたサスペンションに悲鳴を上げることなど皆無というわけである。

8速のトランスミッションはごく普通にATモードで走るほかに、左に倒してマニュアルモードにすればそのままスポーツモードに早変わり。さらに複数の作業を行うことで言わばレースモードの「スポーツ+」というモードに切り替わる。シフトチェンジはエンジン回転4000rpm以上で行われるそうで、試してみたがアクセル開度が大きい場合はほぼ、レブリミットまで吹け上がった後にシフトアップする。ただし、AT状態でないとこのモードは作用しないということなので、頻繁にシフトしたい状況ではやはりマニュアルモードがドライブしていて楽しい。

サスペンションは例によってオーリンズの可変ダンパーがセットされている。仕様を変えるにはディーラーに持ち込む必要があるが、好みで数段階に切り替えることが出来る。少し気になっていたのはそのサウンド。やはり6と4では6の方が気持ち良い音がするのだが、4気筒のほぼほぼレーシングサウンドに近い(ただし音量は低い)そのサウンドは、実に痛快で心地よかった。

かつてはボーリングカー(つまらないクルマ)という良からぬニックネームを頂戴したボルボだが、今、そんなことを言う人は世界中に誰もいないだろう。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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