【グッドイヤー ベクター4シーズンズ 試乗】雪に弱い都市交通の問題を解決するオールシーズンタイヤ

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グッドイヤー ベクター4シーズンズ ハイブリッド試乗会
グッドイヤー ベクター4シーズンズ ハイブリッド試乗会 全 20 枚 拡大写真

グッドイヤーが8月より発売を開始したオールシーズンタイヤ『ベクター4シーズンズ ハイブリッド』のドライ・ウェット性能を試す試乗会が開催された。

記者は、2月に行われたスキー場での試乗会に参加しており、雪道での性能、冬タイヤとしての性能は体験していた。今回はミニサーキットの特設コースでドライ路面、ウェット路面、そしてコース上に特別に用意された圧雪路でのブレーキテストが体験できるものだ。

試乗車は現行『プリウス』。スキー場での試乗車と同じタイプの車だ。3台用意され、それぞれに、Eグリップ(エコタイヤ)、ベクター4シーズンズ(オールシーズン)、アイスナビ6(スタッドレス)を装着したものを試乗する。

トレッドパターンは、それぞれ用途に合わせた特徴がある。夏タイヤを一般的なタイヤとすれば、スタッドレスはタイヤのエッジ部分が切り立った形で、サイプと呼ばれるギザギザの細いスリットが入っている。ベクター4シーズンズは、よく見るとサイプが確認できるが、ラウンドショルダーと曲線が目立つ独特なブロックパターンで、これまでのタイヤではあまり見かけないデザインだ。

オールシーズンの名が示すとおり、1年を通して使うことができる。雪上性能はチェーンやスパイクタイヤには及ばないが、平均的なスタッドレスタイヤとの比較なら、無理をしなければほとんど同じレベルといってよい。コーナリング、ブレーキなどスタッドレスタイヤの代わりは十分務まる性能を持っている。これは、スキー場での試乗で体験済みだ。

しかし、雪道で性能を発揮するスタッドレスタイヤは、ドライ、ウェットでの性能、ライフに問題がある。スタッドレスタイヤはコンパウンドもソフトなもので、ブロックの剛性も低いため、ドライ路面のコーナリングでの応答性がどうしても劣る。また、ブロック自体の変形による不快なヨー変化もがまんしなければならない。当然通年で履き続けるとタイヤの減りが激しい。

とくに危険なのはウェットだ。雪でOKなら雨は大丈夫ではないかと考えがちだが、スタッドレスタイヤのウェット性能は過信してはならない。路面の排水性が普通のタイヤと比べるとよくないからだ。

試乗コースは、S字、ストレート、ウェットコーナー、スラロームで構成される。これとは別に人工降雪機で作られた圧雪路が用意され、そこでも3種類のタイヤでブレーキテストを行った。

まず、走り出してわかるのはタイヤのノイズだ。スタッドレスをドライの舗装路で走ると、ゴムの振動による微妙な「うなり」音が発生する。プリウスのようなPHVやEVなどエンジン音がしないと、この音は気になる。夏タイヤは聞きなれたロードノイズとなるが、ベクター4シーズンズはこれに近い音だ。

通常の加速、減速の応答性も夏タイヤに近い。スタッドレス特有の「ヨレ」を感じない。この特性はスラロームで顕著だ。パイロンを設置した場所が下りになっているのもあり、同じスピードでパイロンを縫っていくと、スタッドレスは後半きつくなる。ブレーキによる減速が必要だったが、夏タイヤとベクター4シーズンズはほぼ同じ感覚で抜けることができた。

ウェットは左コーナーになっており、ここも下り坂だ。侵入速度は40km/hに合わせたが、下りのためアクセルオフでもスピードは上がっていく。やはりスタッドレスがコーナーの出口でいちばん外側の軌道となり、運転していてもフロントタイヤが滑っているのがわかる。

夏タイヤは出口でスピードが上がっても切り足しでクリアできたが、ベクター4シーズンズは、若干強めの切り足しか、軽いブレーキングが必要だった。といっても、それほど大きな違いではなく、普通のタイヤでウェットを走っている感覚だ。

ドライ・ウェットでは、夏タイヤに近い性能を発揮したベクター4シーズンズだが、特設の圧雪路では、スタッドレスとほぼ同じ停止距離で止まれた。夏タイヤはプリウスのVSCがフル稼働して圧雪路の端で止まった。スタッドレスとベクター4シーズンズは車1台分程度手前で停止した。もちろんVSCなどは働かない。

以上のように、雪道ではスタッドレスにそん色ない性能でありながら、一般的な走行なら夏タイヤとしても使うことができるというメーカーの言い分は間違ってはいないだろう。都市部で年に1、2回の大雪で道路に放置車両があふれ、交通がマヒしてしまう。大雪を予想してタイヤを交換しなくても、このタイヤを装着していれば車を乗り捨てることもないだろう。なにより、交換の手間、タイヤの保管場所など利便性や経済性を考えると、通年で使えるタイヤの意義は高い。本当の大雪や豪雪地帯はスタッドレスでも往生することがあり、チェーンが必須だとすれば、オールシーズンタイヤ+チェーンという組み合わせで十分だ。

試乗会にはグッドイヤー 金原雄次郎社長も来場し、「オールシーズンタイヤを日本に定着させたい」と意気込みを語っていた。しかし、そういう習慣のないユーザーが高性能とはいえオールシーズンタイヤを選ぶモチベーションは高くないかもしれない。定着のためのプランはあるか尋ねてみたところ、金原社長は「売る人の熱意につきると思う。時間はかかるがユーザーへの地道な説明をしていく」と答えた。また、未定ではあるがユーザーが体験できる機会も増やしたい意向もあるそうだ。

《中尾真二》

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