【MotoGP 直前インタビュー】優勝のイメージはできている!!…中上貴晶選手の足あと

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2016年オランダGP (c) ヴェガ・インターナショナル / IDEMITSU Honda Team ASIA
2016年オランダGP (c) ヴェガ・インターナショナル / IDEMITSU Honda Team ASIA 全 7 枚 拡大写真

いよいよMotoGP日本グランプリ開催が迫ってきた。今大会の注目は、間違いなくMoto2クラスの中上貴晶だ。オランダグランプリで優勝を遂げ、その後もアグレッシブ&パワフルなライディングが続いている。そして中上は「日本グランプリで優勝するイメージはできている」と力強く語ってくれた。

■4歳の誕生日に始まったレース人生

4歳の誕生日に両親からポケバイをプレゼントされた中上は、その後にポケバイ、ミニバイクレースを経て13歳で全日本GP125に参戦。そして2005年末に若手ライダー育成のMotoGPアカデミーのテストを受けて見事に合格。2006年は、MotoGPアカデミーの生徒としてCEV(スペイン選手権)の125ccクラスに参戦する。

この年のチャンピオンはポル・エスパルガロで、マルク・マルケス、スコット・レディング、ティト・ラバットといった、現在のMotoGPクラスで活躍するライダーたちとともにウデを磨いていた。一方でこの2006年に参戦した全日本GP125でチャンピオンを獲得している。「このころですね、世界グランプリを現実的に意識し始めたのは」(中上)。

2007年、CEVに絞りレース活動を続け、この年の世界グランプリ最終戦ヴァレンシアのMoto3クラスにスポット参戦する。だが、ここで中上はレベルの違いに愕然とする。「CEVでもそうでしたが、Moto3クラスも通用しませんでした。言葉の壁もあったし、気持ちだけでは乗り切れないスキルの差がありました」(中上)。

しかし、このヴァレンシアでのスポット参戦を契機に、2008年、2009年に世界グランプリMoto3クラスにフル参戦する。だが、現実は厳しかった。「当時のバイクは型落ちで、世界のトップライダーが集まるグランプリでは通用しなかった。でも、それ以上に厳しかったのは、やはり言葉の壁でした。チームとコミュニケーションをとるためには英語は必須でしたが、自分の意見を伝えられないのだから、バイクは良くなるわけがありません」(中上)。

■ツインリンクもてぎの医務室で得た復帰へのルート

2010年のシートを失った中上は、例えようのない悔しさとともに全日本に戻りST600クラスに参戦。そして2011年はMoto2クラスに近いJ-GP2クラスに参戦する。そしてこのJ-GP2クラス参戦が、中上復活へのプロローグとなった。

この年、日本グランプリのMoto2クラスに、代役ライダーとして出場した中上。もちろんMoto2マシンを走らせるのは初めてだった。「レースウイークの木曜日に初めてMoto2マシンにまたがり、ポジション合わせをして、金曜日から走行が始まりましたが、実際、ものすごく乗りにくかった。それで、決勝日のウォームアップ走行で転倒してしまい、左肩胛骨を折ってしまったんです。すべてが終わったと医務室でうなだれていたら、そこにチーム監督がやってきて、ウインターテストに参加してほしいとオファーがあったんです。何が起きているのか理解できないまま、医務室で参加のサインをしたんです。そしてそのテストでまずまずのタイムを出すことができて、2011年からMoto2クラスに復帰することになりました」(中上)。

実は、日本グランプリの金曜日と土曜日の走行で、中上は何度となく上位に匹敵するタイムをマークしており、イタルトランス・レーシングのチーム監督はそれを見逃さず、中上を高く評価していたのだ。そして2012年、2013年と2年間イタルトランス・レーシングチームでMoto2クラスを戦い、2013年には第9戦インディアナポリスグランプリからチェコ、イギリス、サンマリノと4戦連続で2位の表彰台に立った。しかし、この年に優勝することはできず、誰もが2014年の中上の戦いに期待した。だが、それは叶わなかった。

■母国グランプリで国旗掲揚と国歌を歌いたい

2014年、IDEMITSU Honda Team ASIAに移籍した中上。しかし、そこにはこれまでにない苦悩が待ち受けていた。「2014年は、本当に厳しいシーズンでした。ポールポジションも獲れず、表彰台に立つことすらできませんでした。一生懸命に走っても、まったく結果がついてこない。そして2015年は、少しは良くなったけれど、理想にはほど遠い状態でした。悩み続けた2年間で、解決策もなく、ただレースに出場しているだけという感じで本当に辛かった」(中上)。

迎えた2016年、チーフメカニックがスペイン人のファウスト・ベンチベンニに代わり、これが中上の再浮上のきっかけとなった。「元々はサスペンションメーカーの人で、今年からIDEMITSU Honda Team ASIAに来てもらいました。当然、サスペンションの情報をたくさん持っているのですが、何よりも常に冷静に物事の状況判断ができる人で、とても相性がいいんです。僕のインプレッションを、僕のライディングスタイルに当てはめながら理解して、そしてセットアップしてくれているので全幅の信頼を寄せています」(中上)。ずれていた歯車が、ようやくかみ合い始め、そしてオランダグランプリで初優勝を達成。いよいよ日本グランプリでの優勝に期待が高まる状況だ。

「日本グランプリは、母国レースなので、もちろんここで勝ってセンターポールに日の丸を掲揚して、君が代を聴きたいし歌いたい。毎年、日本グランプリが近づくと、いろいろなメディアの取材で勝ちたいと言ってきましたが、今年は、これまでとは違って日本グランプリで勝つことを現実的に見られるようになっている自分がいます」(中上)。

流ちょうな英語でインタビューに受け答えする中上に、もはや言葉の壁はない。信頼できるチーフメカニックを得て、戦いの準備も整っている。10月16日、中上の歓喜の瞬間を我々も共有しよう!!

《佐久間光政》

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