【アバルト 124スパイダー 試乗】見た目も走りもマツダロードスターとは明確に違う…松下宏

試乗記 輸入車
アバルト124スパイダー
アバルト124スパイダー 全 24 枚 拡大写真

アバルト『124スパイダー』はマツダの『ロードスター』をベースにしたマツダ製のアバルトブランド車だ。単なるOEM供給車ではなく、専用のデザイン、エンジン、足回りなどが与えられ、ロードスターとは明確に異なるクルマになった。

外観デザインはかつてのアバルトモデルからインスピレーションを得たものとされ、前後のデザインなどはロードスターと大きく異なっている。更にボディ各部やインテリアなど、いろいろな部分にサソリのマークが配置されるのも特徴だ。その数は内外装合わせて全部で13個にもなる。

インテリアはホールド性に優れた赤/黒ツートンのレカロ製本革シートがオプション装着され、専用のステアリングホイールや赤い文字盤のスピードメーターが採用されている。

アバルト124スパイダーはマツダ製なので、外国ブランド車ではあるが、右ウインカーの設定だ。この方が操作しやすいので大歓迎だが、ある意味で“外車らしさ”をスポイルするのもまた確かである。

搭載エンジンは1.4リットルの16バルブマルチエア・インタークーラー付きターボで、125kW/250Nmの動力性能を発生する。ロードスターに搭載される1.5リットルエンジンの動力性能が96kW/150Nmであることを考えると、走りのフィールには明確な違いがある。

車両重量はロードスターよりもアバルト124スパイダーの方がざっと100kgくらい重いが、重量増以上に動力性能の向上幅が大きいから、走りのフィールはよりスポーティなものになる。

ちなみにアバルト124スパイダーは前後の車両重量が610kg:520kgで合計1130kg、ロードスターSパッケージは550kg:480kgで合計1030kgである。前後の重量配分はほとんど変わらない比率である。

エンジンはターボ仕様ながら、最近のダウンサイジング直噴ターボと違って低速域から滑らかにトルクを発生するものではない。わずかにラグを感じさせた後で加速がついてくる感じだ。やや古典的ともいえるようなターボ感覚で、懐かしさを感じさせられた。

全体的なエンジンフィールはジェントルな印象があった。アバルトブランド車だったらもっとも荒々しい走りでも良いように思うが、意外に良くしつけられたエンジンフィールだったので、逆に驚かされた。

スポーツモードを選ぶとアクセルワークに対するレスポンスが良くなって元気の良い走りが得られる。走りのフィールはよりアバルトらしいものになるので、ずっとスポーツモードで走りたいような気分になる。

6速MTのトランスミッションはとてもスムーズで、手首を返すような小さな操作ですぽすぽと入る。マニュアル操作が楽しいと思わせるクルマだ。

足回りやステアリング、ブレーキなど、シャシー系についてもアバルト124スパイダーならではの仕様が設定されている。ビルシュタイン製のダンパーはロードスターRS用のビルシュタインとは仕様が異なるとみえて、コーナーでしっかり粘る感じに好感が持てた。ニュートラルで据わりの良いステアリングフィールと合わせ、ワインディングでは気持ち良くコーナーを駆け抜けていくことができた。

コーナーでの走りが、緩やかなロールを見せながらもとても安定した印象を与えるのは、しっかりしたストラットタワーバーが装着されていることも大きいだろう。

ブレンボ製のブレーキも効き味、踏みごたえとも上々で、これもロードスターとは異なるアバルト124スパイダーならではの部分である。

アバルト124スパイダーの価格はロードスターよりも70万円ほど高い390万円弱、6速AT車は400万円弱の設定だ。装備にはそれぞれに勝ち負けがあるが、エンジンと足回りの違いに加え、ブランド代を合わせて70万円なら納得モノだ。

日本はアバルトブランド車の人気が非常に高い国なので、このアバルト124スパイダーも相当に良く売れるものと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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