【インタビュー】自動車の設計データを「VRED」でマーケティングにも幅広く活用…E-グラフィックス コミュニケーションズの取り組みに迫る

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藤原満氏(制作事業本部 制作局 局長、D-PT/CGクリエイティブ部 部長)
藤原満氏(制作事業本部 制作局 局長、D-PT/CGクリエイティブ部 部長) 全 4 枚 拡大写真

E-グラフィックス コミュニケーションズ(EGC)は、日産自動車の子会社であった日産グラフィックアーツという会社と、日産系広告代理店で、その後TBWAジャパンとなる日放株式会社が合併した企業だ。そして米国広告代理店グループであるオムニコム傘下のTBWAワールドワイドの一員としてマーケティングのプランニングから、クリエイティブや印刷、Web制作までも行う「ワンストップ・マーケティング・サービス」を提供している。

ここでは、EGCの特徴や「VRED」の活用法、今後の展開、そして10月21日に開催される『IMPRESS3D JAPAN 2016』について、同社の制作事業本部 制作局の局長でありD-PT/CGクリエイティブ部の部長である藤原満氏、そして制作事業本部 制作局 D-PT/CGクリエイティブ部の主担/プロデューサーである元村敬氏にお話をうかがった。

◆3Dデータを活用した新たなマーケティング領域を提案するE-グラフィックス コミュニケーションズ

----:まずはEGCについて教えてください。

藤原満氏(以下敬称略):EGCは、TBWAワールドワイドをはじめとする各国の広告会社や印刷会社、コンサルティング会社などで構成された、オムニコムグループの会社です。昭和55年にカタログの印刷を日産グループ内で行おうということで、日産グラフィックアーツという会社が設立され、私はその一員でした。EGCになってからは日産だけでなく、三菱やマツダ、スズキのプロモーションのお手伝いをしています。

----:EGCでは、3Dデータはどのように活用されているのでしょうか。

藤原:90年代後半に、自動車の設計に3D CADが導入されて当社も興味を持ちました。当時は日産の100%子会社だったこともあり、同社のCADを扱う部門と交流できました。CADを学んでプロモーション用のCGアニメーションを作れないかと考えたのがきっかけです。

そもそもCADが導入される以前は、新車の発表までに試作車が2~3回出てきて、その都度スタジオで実物を用いて撮影していました。CADの導入で試作車製造工数が大幅に削減されましたが、撮影用試作車が用意されるのが遅くなり、撮影が間に合わないという問題が生じたのです。そこで、せっかく3Dの設計データがあるのだから、それらをプロモーションや販促の画像制作に活用できないかと、色々と取り組みを進め現在に至っています。

こうした設計データを活用した3DCGでの取り組みは海外でのカタログ制作など、ワールドワイドで展開する際も大いに役立ちますし、実際弊社でも非常にスムーズに進めた事例もあります。ただし、設計部署との連携や仕様確認の煩雑さ、海外子会社との税制等々メーカーには多くのご苦労があるのです。ですので私たちはどのようなフローを構築すれば良いかも各社にコンサルティングをしながら仕事をしています。

----:こうした3Dデータの活用ノウハウがEGCの強みであると。

藤原:そうですね。3Dデータをいろいろなデバイスで展開することでエンドユーザーとのタッチポイントを増やせるということが強みです。現在実際に活用されている具体的な事例としてはWebでのシミュレータがわかりやすいと思います。インテリアからエクステリアまで、ありとあらゆる仕様をデータベース化し、3Dデータを活用することで今までにないユーザー体験をしてもらうことができるようになりました。すでに4Kや8Kといった高精細な画像で、ショールームの大きなディスプレイを使って実物大でシミュレーションする準備もされています。さらにVRを活用すればドアも開くし、車内にも入れる。まさに実車を待たずに体感できるわけです。

元村氏(以下敬称略):私たちはこうした3Dデータの活用手法を「One Source Multi Use」と呼んでいます。メーカーの設計の方と話をして、データを事前にまとめ、それらをもとに先ほどお話したようなプロモーションに活用しているのです。ちなみに最初に頂くデータは、3Dデータには必須の座標情報などが不正確なこともあり仕様も複雑です。そうしたデータを部品表と突き合わせて読み解くことができるのもEGCの強みかもしれませんね。まさにコンピューター上でクルマを組み立てるような作業ですが。

◆「One Source Multi Use」を加速させるオートデスクの「VRED」

----:3Dデータを活用するEGCがVREDを導入したきっかけについて教えてください。

藤原:弊社ではずっと「Maya」を使っていましたが、「VRED」(当時は前身の「ShowCase」)のリリース以来注目していました。導入の大きなきっかけは、2年ほど前にクライアントが「VRED」を開発プロセスに活かすと聞いたことです。また、ほぼすべての自動車メーカーが「VRED」を導入していると聞いて、これは主流になると考えたことも大きかったですね。「VRED」は非常に精密、正確にデータを再現するので、自動車メーカーは開発のシミュレーションに使うんです。たとえば、デザイン検討、そして開発段階での仕上がり精度確認にも向いています。

----:VREDのどのようなところに良さを感じていますか。

藤原:なんといってもレンダリングが高速かつ正確にリアルタイムにできることです。また、背景の入れ替えが容易なこと、それから重要なのがマテリアル(表面材質)をリアルに表現できることです。現在エクステリアのCG表現はドンドン進歩していますが、インテリアはまだ発展途上。エクステリアに比べ部品点数が多いインテリアデータの収集や正誤確認が難しいことが原因ですが、私たちはその苦労を克服している数少ない会社です。「Maya」で精密に作られたモデリングデータを「VRED」で糸の色や縫い目の幅なども細かく再現しています。

----:今後3DCGが活用されることで、どのような変化があるでしょうか?

藤原:既にお話したように、3Dデータはマーケティング部署でも活用すべきです。特にVRですね。ただ、課題はデータが重いことです。ポリゴン化することで軽量になっていますが、VRでサクサク動かすにはまだまだ重い。現在一部で展開されつつある自動車のVRは、おそらく設計データを使っていないと思います。VR用に、別に超軽量データを作っているんですね。そこはジレンマであり、「One Source Multi Use」を実現するための課題でもあります。

また、部品サプライヤーさんなどには、たとえば自動車用のモーターなどを上手く見せる方法をご提案しています。自動車の部品というのは、なかなか外からは見ることはできません。でも3DCGを使うことで、ボディを透過させモーターやその他の部品だけを見せることもできます。しかも動画でどのように動くのかを見せられるので、クルマそのもののプロモーション以外にも大きく役立つと考えています。

またマーケティング用途以外にも、様々な使い道があります。例えば大型建設機械を海外で使用する場合、各パーツを分解して船で輸送して、現地で組み立てる必要があります。現在は複数言語で数百ページにわたるマニュアルを元に組み立てているのですが、このマニュアルも、機械の設計データを活用すれば、VRやタブレットで表現することが可能です。こうした様々なニーズを掘り起こしていきたいと思います。

----:最後に、10月21日の「IMPRESS3D」での講演や展示などについて教えてください。

藤原:ずばり旧来の広告手法、伝達手法が、3Dデータの活用でどう効率化するのか、エンドユーザーとのタッチポイントをいかに増やせばいいのか、というテーマでお話したいと思っています。

元村:デジタルマーケティングの中で、3Dデータがどう活用されているか。そして「VRED」を使った3Dコンテンツ制作実例等を紹介していきます。デジタルマーケティングは幅広いので、その中で3Dを軸に弊社の知見なども含めてお話できればと。ブースでデモもやっていますので、ぜひ立ち寄っていただきたいですね。

藤原:私たちがお話することは既に知識としてある皆様がほとんどだと思いますが、まだまだ3Dデータが整備されていませんし、使い切れていないのが現状です。そういったマーケティングの方に来て欲しいですね。本当の意味でデジタルマーケティングには、どういう準備が必要なのかがわかると思います。ショールームでも、現在は飛び道具のようなものになっていますが、見えない部分にあるものを見せて魅力を伝えたり、タブレットでも動かせたり、今後はより一般的な手法になるはずです。そうした設計データ由来の3DCGだからできることを理解頂ける内容にしたいと思います。

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《吉澤 亨史》

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