【池原照雄の単眼複眼】スズキ、次世代技術の“ロスタイム”埋める…トヨタとの提携

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トヨタ自動車の豊田章男社長(向かって左)とスズキの鈴木修会長 《撮影 池原照雄》
トヨタ自動車の豊田章男社長(向かって左)とスズキの鈴木修会長 《撮影 池原照雄》 全 4 枚 拡大写真
◆伝統的技術だけでは行き詰るとの危機感

トヨタ自動車とスズキが業務提携に動き始めた。電動化や自動運転といった先進分野の開発競争が激化するなか、相互で補完できる分野を探していく。独VW(フォルクスワーゲン)との提携が対立で終わったスズキにとって、先進技術の後ろ盾となる存在は不可欠だった。また、「アライアンスが苦手な会社」(豊田章男社長)というトヨタにも、自社技術の陣営拡大にスズキの参画は心強い。一方で、手厚い資本提携を含む濃密な関係への発展は、スズキが「独立した企業として経営していく覚悟」(鈴木修会長)なので、可能性は低いだろう。

スズキはVWと提携に合意した2009年から15年の解消に至るまで、次世代技術への対応戦略という点では時間を浪費した。この間、安全運転技術は自動運転技術のステージへと向かい、電動化つまり環境対応技術ではハイブリッド車(HV)からプラグインハイブリッド車(PHV)や燃料電池車(FCV)の市販へと展開が進んだ。そのスピードは速く、まさに「伝統的な自動車技術を磨くだけでは行き詰まるという危機感を抱いている」(鈴木会長)という状況が現出したのだ。

◆まずPHVなど電動化技術の導入から?

一方の豊田社長も、自動車業界の環境が激変するなかでは「変化を予測する精度を上げるのでなく、変化に対応する力を磨くことが重要」と強調。次世代技術の開発では「個別の取り組みに加え、同じ志をもった仲間づくりが重要」との認識を示す。日本の自動車産業のライバルであり、産官学が一体となって技術開発や標準化を推進するドイツの自動車産業を念頭に置いたものだろう。

提携の対象はこれからとなるが、筆者は早期にスズキが技術サポートを受ける可能性が高いのは電動化分野であり、欧州メーカーの製品投入が相次ぐPHVなどと見ている。さらに、自動ブレーキによる安全運転支援から高速道路での運転支援へと転じてきた自動運転技術も協業メリットが大きい。高速道路内の単一車線で、いわゆる「準自動運転」(4段階の「レベル2」に相当)ができる技術はスズキも早期に商品化できるだろうが、センサーやプロセッサーなどシステムの共用化に踏み込めばコストや将来の展開スピードでも効果が期待できる。

10月12日の豊田社長と鈴木会長の記者会見では、当然のことながら資本提携の可能性も問われたが、この段階では両首脳とも「ゆっくり考えます」としか答えようがなかった。仮に将来、両社が株式を持ち合うことがあってもごくわずか、象徴的なものにとどまるのではないか。

◆軽自動車7割のシェアは資本提携の足かせに

資本提携に対するトヨタの考え方もここ10年で変わってきている。00年代にトヨタは富士重工業(スバル)、いすゞ自動車と業務提携する際に両社に出資し、現在もそれぞれ16%、6%の出資を保持している。「出資は信頼関係の担保になる」(当時の首脳)との考え方だったが、現在は必ずしもそうではない。15年に包括提携で合意したマツダとは、ここまでは出資の伴わない状況で、「両トップの信頼関係を基に」(マツダ関係者)、協業の検討を進めている。

スズキとは資本提携もそうだが、業務提携の内容も慎重にならざるを得ない要素もある。国内では軽自動車でスズキとトヨタの完全子会社であるダイハツ工業が大きなシェアをもつからだ。今年1~9月の販売シェアは、両社合計で64%。生産ベースではダイハツはトヨタ、富士重に、スズキはマツダ、日産自動車、三菱自動車にOEM(相手先ブランド生産)供給しており、その分を合わせると2社で70%を超える。

両社の関係者が「軽自動車の値引き販売を是正しようと思っている」などと会話すれば、独禁法上はクロの容疑になる。そこはもちろん、「公正で自由な競争が前提。必要があれば公正取引員会などにも相談していきたい」(豊田社長)と、慎重を期す構えだ。もっとも、スズキはVWとの提携で資本の持ち合いには散々懲りている。「独立経営」を堅持するうえでも資本提携には距離を置きたいところだろう。

《池原照雄》

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