【インタビュー】ホンダ 神子柴専務「連続的な新商品で好循環ができてきた」…“屋台骨”の北米事業

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ホンダの北米地域本部長で米国ホンダ社長も務める神子柴寿昭専務執行役員
ホンダの北米地域本部長で米国ホンダ社長も務める神子柴寿昭専務執行役員 全 8 枚 拡大写真

やや陰りが出ている米国新車市場だが、日本メーカーは総じて健闘が目立つ。2015年に過去最高の販売を達成したホンダも『シビック』などのヒットで好調だ。このほど都内の本社で報道各社の共同取材に応じた神子柴寿昭専務執行役員(北米地域本部長兼米国ホンダ社長)に、市場動向や北米事業の舵取りを聞いた。

16年の米市場は1740万台レベルと高水準

----:今年4月に北米担当に着任されて半年ほどですが、八郷隆弘社長による新体制での変化や成果は出始めていますか。

神子柴専務:色々仕込んでいるが、具体的な成果として現れてくるのはこれからだと思う。ただ、北米で言えば昨年フルモデルチェンジしたシビックがお陰さまで好評をいただき、北米のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞して販売実績もずっと好調に推移している。加えて『パイロット』や夏に新モデルとなったピックアップトラックの『リッジライン』、これから出てくる『CR-V』、『オデッセイ』と連続的に新商品の投入ができ、いい循環をつくり出せている。

ホンダは世界6極体制でオペレーションしてきているわけだが、リーマン・ショックまでのやや北米一辺倒という形から、新興国を含めた世界各地域の独自性を尊重して地域の専用車へとシフトした時期があった。それはそれで中国の専用車のように成果が出ている。だが、八郷が「6極体制の進化」と申しているように、もう一度、グローバルで使えるものはグローバル車として各地域で活躍させていき、加えて地域のお客様のご要望にも応えていくということをやっており、われわれ(北米)の重点もそのようにシフトしてきている。

----:米国の新車市場をどう見ていますか。

神子柴:年初は1760万台くらいと申し上げていたが、直近を見ていると今年は1740万台くらいかなと。最高だった15年の1747万台を若干下回るが、見方としては史上第2位になるわけだし、今後も1600万台から1700万台、あるいは1700万台を超える水準で推移するだろうと見ている。これは市場としてかなりいい水準である。
元々は今年がピークになり、そこから高いレベルだが緩やかに落ちて行くと想定していたが、ピークが1年早まって15年になった。来年17年は、今年から微減くらいかなと、大きくはそう見ている。

ライトトラックの旺盛な需要に手を打つ

----:足元では6割程度が、ピックアップトラックやSUV系の「ライトトラック」となっている。この傾向は続くのでしょうか。

神子柴:原油価格の動きによっては変わってくると思う。しかし、今のような価格推移だとライトトラックが、もう少し伸びるかもしれない。現に10月単月では62~63%くらいとなった。

----:ホンダはライトトラックの供給力を高めるため、北米の工場間
で生産機種の変更に着手している。それによってライトトラックの比率はどの程度に高まるのでしょう。

神子柴:ホンダのライトトラックの販売は、需要はあるものの生産が頭打ちで、市場のように6対4に追い付いていない。比率はほぼ5対5で乗用車系が若干多い。このため、CR-Vをインディアナ工場でも生産したり、アキュラブランドの『MDX』をオハイオ州のイーストリバティ工場に移管したりといった手を打っていく。北米トータルの生産キャパシティ(192万3000台)を増やすことはしないが、日本での乗用車系の生産分担などもからめ、増えつつあるライトトラックの旺盛な需要に対応していく。こうした動きは、原油価格が急激に変わらない限り、マーケットに合わせた正しい動きだろうと思っている。

----:ライトトラックの生産比率は6割程度まで高めるのですか。

神子柴:キャパシティとしてはそこまでは難しく、なかなか行かないと思うが、増産対応でできるだけ近づけたい。一方で乗用車系ではシビックも『アコード』もよく売れている。これらの生産を落とすことは考えていない。

「シェアリング」は必ずしも新車販売にマイナスではない

----:ホンダの米国販売は15年に過去最高となりましたが、今年もこれまでの勢いでは最高更新となりそうです。

神子柴:まだ2か月残しているので、ゲタを履くまで分からないが、恐らく昨年を上回って過去最高にできるのではないか。あと2か月を乗り切って170万台(15年は約159万台)に近づく数字ができるのではと思っている。

----:ライドシェアリングやカーシェアリングなど米国はシェアリング・エコノミーが進みつつありますが、新車販売への影響をどう見ていますか。

神子柴:これは両面あると見ている。何も手を打っていかなければシェアだとかレンタルだとかが増えていく。一方で、必ずしもシェアリングの業態が出てきたからといってマイナスにはならない。クルマが必要なことには変わらないからだ。新しいビジネスモデルを勉強しながら、すでにおやりになっている自動車メーカーもあるが、何ができるのかを見てこの先は対応していくことになる。こうした(シェアリングの)動きが、ネガティブにならないように対応する。新しい業態を敵視するのでなく、ウィン・ウィンのビジネスモデルができるのであれば取り組んでいく。

----:北米でのプレゼンスをどのようにして高めていきますか。

神子柴:ホンダが北米のマーケットでプレゼンスを築き上げてきた背景には、1980年代、90年代に商品が高い品質の評価も伴って積み上がってきたということがある。その点、外部で評価していただく品質の調査がこのところ芳しくない。われわれが望んでいるところより低い。そこは失ってはいけない米国のホンダの伝統でもあるので、もう一度強化していきたい。就任以来、この点にも力を入れている。

北米はホンダのなかでも1番の屋台骨であり、貢献が大きい地域なので、(プレゼンスを)確固たるもにしなければいけない。事業活動は結果なので北米がけん引役を果たし、ホンダ全体の収益に、より貢献できるようにしたい。

《池原照雄》

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