現状の人工知能にパーソナライズ機能の実装が難しいわけ

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
ーンド・ヴァイル氏(オートモーティブ・ビジネスユニット シニア・バイスプレジデント兼ゼネラル・マネージャー)
ーンド・ヴァイル氏(オートモーティブ・ビジネスユニット シニア・バイスプレジデント兼ゼネラル・マネージャー) 全 3 枚 拡大写真

ニュアンス・コミュニケーションズは、音声合成・音声認識技術を医療・金融など幅広く展開しているが、自動車分野では、ドライブアシスタントとして対話インターフェイスを持った人工知能の研究・開発も続けている。

【画像全3枚】

同社が研究しているドライブアシスタントは、人間との自然な対話から必要な命令を理解し、それを実行に移すことができる。例えば、カーナビのルート設定だけでなく、メールの作成・送信、電話の発信、スケジュールの確認・設定、レストランを探す、予約する、車のメンテナンスデータを調べる、といったことだ。

同社では、ディープラーニング(多層的な機械学習)をベースに、自然言語処理、対話コンテキストの認識、適切なクラウドサービスとの連携、クラウドナレッジの参照といった技術を研究している。その中には、ユーザーの好みや行動パターンに応じたレコメンドや判断をする「パーソナライズ」も含まれている。

しかし、パーソナライズを自動的に行うことは、現在の人工知能技術では実装が難しい。現在、AI、人工知能といったとき、その背後にあるソフトウェアは、機械学習、ディープラーニングといった技術を実装したものになる。機械学習というが、「学習」は事前に用意した膨大な入力データを処理させることで行う。学習されたアルゴリズム部分は切り離されて機器に実装される。そのため、ユーザーが使った結果の「学習」は行われない。

ニュアンスのアーンド・ヴァイル氏(オートモーティブ・ビジネスユニット シニア・バイスプレジデント兼ゼネラル・マネージャー)は、「本当の意味での自律的な機械学習はまだ実現されていません。現在は、まず音声が何を言っているかを認識し、次にそれが誰なのかを認識するといったパーソナライズ機能を、段階的に実現していっています。」と説明する。

ユーザーがよく行く店を記憶しておき、レコメンドするくらいは可能だ。しかし、取引先の「鈴木さん」と休日の会話やSMSにでてくる「鈴木さん」が別人だとして、その区別を機械学習に反映させることは難しい。機械学習の出力を、事前に設定したパーソナライズ情報によって補正することは可能だが、それには、平日昼間の鈴木さんとSMSの鈴木さんは別人であることをユーザーが設定するか、過去の操作履歴から判断することになる。

この場合、パーソナライズ情報をどこに保存するか、どのように管理するかという問題も発生する。これらの情報は個人情報も含まれるため、データの保存には法的な制限など注意が必要だ。クラウド保管も慎重に行う必要がある。いずれにせよ、個人情報の持ち主は本人であって、自動車メーカーでもAIベンダーでもない。

同社 エリック・モンタギュー氏(プロダクト・マーケティング及びオートモーティブ戦略部門 シニア・ディレクター)は「パーソナライズで重要なのは、データの保存方法、期間などが適切であることです。保存場所はクラウドより車の中のほうが適切でしょう。なにより企業の信頼性がないとユーザーはデータの保存を許可してくれません。」と語り、パーソナライズは技術的な問題だけではないとの認識を示した。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. フィアット『トポリーノ』に「Vilebrequin」、地中海沿岸のライフスタイルを表現
  2. 『セリカ』が復活、トヨタGRに大きな動きが!…7月のスクープ記事ベスト5
  3. トヨタ『カローラスポーツ』、日本にない2.0リットルエンジン搭載…米国2027年型
  4. トヨタ『ヤリス クロス』、「GR SPORT」を一部改良…10.5インチHDディスプレイを標準装備
  5. トヨタ『セリカ』ついに復活へ、GRスポーツ戦略は3本柱に?
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 3000アンペアの急速充電に世界初成功、電動トラックの未来を切り開く…MAN
  2. 中国サプライヤーが日本市場へ本格攻勢、“長期戦略”と“チャイナスピード”両立する「DESAY SV」次の一手とは
  3. 機械式駐車場の最適化コンサル、マンション管理組合向けに新サービス開始…さくら事務所
  4. 大和ハウスベンチャーズ、自動運転幹線輸送のT2に出資…レベル4実現へ
  5. 【バッテリー リスキリング講座】車載用全固体電池の開発状況と今後の展望
ランキングをもっと見る