トヨタ自動車は12月6日、来年から本格展開が始まる次世代パワートレインの概要を発表した。初出となるのは直噴2.5リットル直列4気筒ミラーサイクルエンジンで、次期『カムリ』に搭載されるものとみられる。これを皮切りに2021年までの5年間で19機種のエンジンを投入するという。エンジンの開発は手間と時間がかかるものであることを勘案すると、更新のスピード感は異例と言える。
新エンジンにはトヨタが「D-4S」という商品名で展開している、直噴とポート噴射の2系統を持つ方式が採用される。これまでD-4Sはスポーツカーや高級車など付加価値の高いモデルのエンジンのみに採用されてきたが、今後は実用エンジンへの適用が進むことになりそうだ。さらに低フリクション化、ミラーサイクル、吸気効率とシリンダー内の渦の強さの両立など、さまざまな効率アップ策が施され、熱効率はノーマル版で最高40%、ハイブリッド版で同41%を達成するという。他社から画期的なユニットが先に出てこないかぎり、量産ガソリンエンジンとしては世界トップランナーとなる見通し。
新エンジンで注目すべきはピーク熱効率だけではない。トヨタは低中回転域の熱効率マップも公表したが、それを見ると従来型エンジンが苦手としていた低負荷域においても効率が非常に良く、通常の2.5リットル級エンジンだと20%前後に落ちかねない発生トルク60Nm(6.1kgm)あたりでも広い範囲で30%以上を維持している。
技術発表でこのような実数の明確な資料を提示する時は、メーカーサイドがよほどの自信を持っていることが多く、オンロードでのパフォーマンスには期待が持てる。質量1500kg程度のモデルに搭載した場合、長距離ドライブでは悠々と20km/リットルを上回ることができるのではないかと予想される。トヨタのエンジニアによれば、市街地走行を模したテストドライブでも従来型に対し、2割ないしそれ以上の燃費向上効果が得られているというから楽しみだ。
また、熱効率の良い範囲が広がることは、ハイブリッドの技術トレンドに変化をもたらす可能性もある。次期カムリのハイブリッドシステムは現行『プリウス』で初採用された改良型「THSII」の仕組みが使われることになっているが、2モーター式はエンジンの熱効率の良い範囲が狭いという難題を解決するためのものであって、熱効率の良い範囲が広くなると、軽量、低コストな1モーターでも十分に良い燃費値が得られる可能性が高い。今後の展開は要注目だろう。