テスラのイーロン・マスクがトランプ大統領の「戦略的政策フォーラム」に参加する理由

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イーロン・マスク
イーロン・マスク 全 4 枚 拡大写真

ドナルド・トランプ米次期大統領の政権移行チームは14日、大統領の経済助言チーム「戦略的政策フォーラム」の一員として、テスラのイーロン・マスクCEOの参加を発表した。このフォーラムにはGMやUberのトップも名を連ねているが、アメリカのメディアは一連の動きをどのように捉えているのだろうか。

「戦略的政策フォーラム」は、経済成長や雇用創出など、大統領が経済的議題を履行するにあたり、米国トップ企業のビジネスリーダーと、特定の経験と知識を共有する目的で結成された。


ゼネラルモーターズのメアリー・バーラCEO、IBMのジニー・ロメッティCEO、Uberのトラビス・カラニックCEOら錚々たるメンバー16名が名を連ねる政策フォーラムに、テスラのイーロン・マスクCEOが参加する意義について米国のメディアは、テスラはトランプ次期大統領の政策の恩恵にあずかることになる、と見ているようだ。

CNNは13日、政策フォーラムへの参加発表前日の記事で、トランプ氏のエネルギー政策とテスラの電気自動車販売との関連性について解説。次期国務長官に石油大手エクソンモービルのレックス・ティラーソンCEOを起用、さらにオバマ政権が停止していたキーストーンパイプラインとダコタパイプラインの石油プロジェクトの再開を示唆するなど、トランプ氏は明確に化石燃料優遇の方針を打ち出している。

「原油価格が上昇し続ければ、米国のエネルギー会社にとっても、テスラにとっても儲けもの。消費者はガソリン車よりも、テスラの35000ドル程度の手頃な電気自動車を購入するだろう」CNNは、トランプ氏のエネルギー政策が、間接的にテスラの利益につながるシナリオを見る。

Model 3

また、大統領選で自動車をはじめとする製造業の再活性化、雇用創出を公約したトランプ氏にとって、喫緊の課題である雇用問題についても、マスク氏は心強い味方だ。NewYork Timesは5日付記事で、マスク氏が過去10年間に35000の雇用を国内に生み出し、テネシー州に建設中のバッテリー工場Tesla Gigafactoryが、2020年までに6,500人の製造職を雇用する予定であることを報道。テスラ車搭載の部品の95%が米国で製造されることとなり、同社の最先端技術が自動車業界全体の革新を促す状況は、創出する雇用数以上に、製造業の未来を約束するものだ。

さらに、テスラ車を中国で販売する際に、関税やその他の阻害要因がかさんで現地製造の電気自動車よりも40%も価格が高くなる一方で、中国が米国で電気自動車や部品を販売するには「名目上の税金」しかかからない現状を挙げ、テスラの挑戦を「多くの米国の製造業者が直面する貿易問題の縮図」ととらえている。エネルギー関連ニュースサイトOilprice.comも、政策フォーラムへのマスクCEOの参加について、トランプ政権の「再生可能エネルギー産業に歩み寄る姿勢」を示唆するもの、と分析する。

「化石燃料に対するトランプの姿勢がどうあろうと、米国のハイテク企業に『驚異的な技術革新の続行』のためのサポートを約束したことを考えれば、電気自動車が占める位置の重要性を認識している」ことは明らかである。すなわち電気自動車の開発は、「一般的なビジネスと、特に鉱業界の支援という、トランプの二つの優先事項」を矛盾なく推進できる「落とし所」となるといえるだろう。

またリチウムの需要を押し上げるEV革命を政府が支援し、その需要をさらに高めることになる状況からは、あらゆる関連分野が利益を享受できる。トランプ政権は「米国を化石燃料地獄に陥れることはない」と楽観的な見通しを展開している。

ドナルド・トランプ次期大統領とマイク・ペンス次期副大統領

地球温暖化防止のための「パリ協定」に「オープンな考えを持っている」と期待を抱かせながらも、環境保護局長官やエネルギー長官などのポストには、温暖化問題に懐疑的な人物を起用するトランプ次期大統領。再生可能エネルギー産業に対しても、環境保護よりも国益を重視した現実主義的な路線となるだろう。そこにテスラやUberがどのように関わり、新政権と相互に影響を与え合うことになるのか注目される。

《Glycine》

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