【意外なヒット】日産 フェアレディZ 初代…苦し紛れだった?

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日産フェアレディZ初代
日産フェアレディZ初代 全 2 枚 拡大写真

年末年始の読み物「意外なヒット」シリーズ。名前を聞けば誰もが知っているヒット作ながら、実は発表当時にはそこまでは期待されていなかったモデルを紹介していきます。日産で開発陣の予想を上回るヒット作を問われれば、初代『フェアレディZ』を挙げます。

自動車メーカーにとってのスポーツカーとは、高性能イメージを世に示すフラッグシップとしての役割を期待されこそすれ、販売面での期待は大きくありませんでした。しかし、初代フェアレディZはその固定観念を大きく覆し、10年間のモデルライフでスポーツカーとしては当時異例中の異例となる、全世界販売台数55万台を記録しました。

ではなぜ、フェアレディZはそのような大成功を収めるに至ったのか、その特徴を見ていきましょう。

初代フェアレディZで注目すべきは、その外観です。ロングノーズショートデッキの古典的スタイルではありますが、使い古された言葉で表すなら、流麗でまさに地を這うようなデザインです。これは開発を指示した当時の米国日産社長である片山氏の、「ジャガー『Eタイプ』のような車を造ってくれ」という注文によるものでした。

ジャガーEタイプと言えば当時から世界一美しい車と言われていた高級スポーツカーです。その美しき車をお手本にするのは当然の発想ですが、もともと安価で信頼性の高いスポーツカーを造ることが目的のプロジェクトだったため、大変無茶な注文でした。

デザインチームはわかりやすいかっこよさを目指し、まずはボンネットを徹底的に低くしました。しかし、いざ直列6気筒エンジンを収めた場合、ボンネットが閉まらなくなりました。問題解決のために、ボンネットにエンジンの先端を逃がす盛り上がりを設けたのですが、これが今日に至るまでZをZたらしめるデザインアイデンティティとなったことは、皮肉な話です。そのような開発陣の努力により、美しくも力強いスタイルが構築されました。

次に、スポーツカーに必要不可欠な、性能について注目しましょう。まずハンドリングについて、ここでも先の注文でありましたジャガーEタイプがベンチマークとされました。結果、まだ一般的ではなかった四輪独立懸架を備え、低い車高と相まって世界一流の性能を手に入れました。

次にエンジンですが、開発費を抑えるため、『セドリック』等に搭載されていた2リッターL型直列6気筒エンジンを採用しました。しかしさすがに北米向けとしてはパワー不足が指摘されており、苦肉の策として排気量を2.4リッターへ拡大しでトルクを太らせました。しかし、このトルクフルなエンジン特性が実用域で扱いやすく、結果的に高性能でも複雑なエンジンを積むポルシェやジャガーに対するアドバンテージとなりました。

最後に、スポーツカーの性能と相反する日常性についても触れていきます。先述したエンジンに限らず、コストを意識した選択と集中によるシンプルな設計のおかげで、信頼性と整備性を高めることができました。このことはアメリカ市場で成功するためには必要不可欠な要素の一つでした。また、フェアレディZの特徴として、ハッチバックの採用がありますが、これはスーパーマーケットで一週間分の食料を購入するアメリカ人のライフスタイルを実現するための選択です。

片山氏の無茶な注文から始まり、開発陣の執念で「美しさ、速さ、使い勝手の良さ」を具現化したフェアレディZは売れない理由が見つかりませんでした。その後の成功は最初に述べたとおりで、日産だけでなくスポーツカー全体のイメージリーダーとなったのでした。

《山里真元》

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