埼玉県越谷市で2月26日に行われた「U1000 in しらこばと公園」。この日は360ccの軽自動車などに交じって、非常にレアな小排気量の欧州車の姿があった。
鮮やかなブルーのボディカラーで目立っていたのは、ASA『1000GT』(1964年)。エンツォ・フェラーリの希望で、ベルトーネに在籍したジウジアーロがデザインを行ったスモールGT。通称”フェラリーナ”(小さなフェラーリの意)と呼ばれていた。フェラーリが生産した4気筒1000ccエンジンは、SOHCながら97馬力を発生している。シャシーやサスペンションも、エンジンと同じく当時のGT選手権でフェラーリの黄金期を築いたジョット・ビッザリーニによるものだ。
総生産台数は100台ともいわれており、日本に残存するのは4~5台との話も。その超希少なこの個体は、山形県鶴岡市の「チンクエチェント博物館」にあったものを譲り受け、約3年かけてレストアし、ナンバーを取得したという。内装やダッシュボードも1000ccクラスとは思えない造り込みが成されている。「5000回転以上からのエンジン音はまさにフェラーリ」と、オーナーも満足しているようだった。
DAF『44』(1968年)も滅多(めった)にお目に掛かれない希少車。オランダのトラックメーカーが生産した小型のファミリーカーで、水平対向844cc・2気筒の強制空冷エンジンを搭載する。変速機はCVTの元祖である「バリオマチック」が採用され、動力を後輪に伝達するのはベルトドライブという特殊なメカニズムを取り入れていた。この個体はかつて並行輸入で日本に15台入ってきたうちの1台。その後複雑なメカニズムから維持できなくなった車両がほとんどというから、これは博物館級といえるかもしれない。
このほか、以下4台もレアな存在だった。
メッサーシュミット『KR200』(1960年):前1人、後ろ2人の3人乗りというバブルカー。191ccエンジンは10馬力の混合ガソリン仕様。前進4段で、エンジンを逆回転させてそのまま後進4段となる。この個体には当時の真空管ラジオとゼンマイ式の時計がそのまま生きていた。
モーガン『3ホイラー』(1934年):前2輪、後ろ1輪のサイクルカー。V型2気筒OHVエンジンが車体前面にむき出しに搭載される。オーナーによれば、前進は4輪車感覚で運転できるが、バックでの車庫入れなどは後ろ1輪ならではのコツが必要だという。
ヒルマン『インプ』(1967年):ルーツ・グループがBMCミニに対抗して1963年に発表した小型車。ミニとは対照的なリアエンジン方式を採用している。関東の旧車イベントではよく見る個体だが、これも希少な1台。
ジネッタ『G15』(1971年):イギリスのバックヤードビルダーが製造した2シータークーペ。角型断面のラダーフレームにFRPボディを載せ、ヒルマン インプの875ccSOHCユニットをリアに搭載。非力だが590kgと軽量で、オーナーは峠道を楽しんでいるそうだ。