【三菱 アウトランダーPHEV Sエディション 試乗】応援を込めてあえて苦言を…中村孝仁

試乗記 国産車
三菱 アウトランダーPHEV Sエディション
三菱 アウトランダーPHEV Sエディション 全 23 枚 拡大写真

三菱『アウトランダーPHEV』の試乗記をようやく書くことが出来た。何故こうなったか。今から4年前、このクルマが発表され、試乗会が行われた直後にリコールが出され、その時の原稿がお蔵入りになったからだ。

そして、再起をかけたモデルが新たに改良型として今回デビューしたというわけだ。改良のポイントは、従来よりもEV走行時間を長くしたこと。新たにバッテリーセーブモードやチャージモード、そしてEVプライオリティーモードが設定されたこと。それに操縦安定性の向上と安全性向上のためのデバイスが追加されたことなどである。

このクルマ。基本的には限りなくシリーズハイブリッドに近い。即ちそれは、通常走行の大半をモーターで走り、エンジンは発電機として機能する。そしてより多くのパワーを必要とする時に、エンジンパワーがアシストしてこの時はパラレルハイブリッドになる。12KWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、おおよそ60kmのEV走行を可能にしている。新型『プリウスPHV』に次いでEV走行の距離が長いのではないかと思う。しかもそれを1.9トンもあるクルマで達成しているのだから素晴らしい。このEV走行時の快適さは以前書こうと思って書けなかったアウトランダーPHEVの大きな美点で、それを通常使用ならロングドライブに行かない限り、常に享受できるところが最高である。

今回試乗したのは、改良で新たに追加された最上級モデル「Sエディション」。内装のグレードアップの他に、外観でも若干異なっているのだが、最大の肝はビルシュタインダンパーを使用していること。これによってより引き締まった足を実現した。合わせてボディはリアゲート回りを中心に、構造用接着材を使って剛性アップを果たしたという。では、より強化されたボディとより強化された足回りによって、その走りが良好になったか。

今回は高速道路での試乗が出来なかったため、断定はできないが、恐らく高速での乗り味は向上していると思われる。しかし一般道がどうかというと、残念ながらそれは達成されていないように思えた。特に路面の補修跡などを通過する際は、どうしても突き上げ感だけでなく、その後に収束するまでの余韻が残ってしまう。部分部分を強化すると、そこは良くなるだろうが、全体として見た時に入力された力の逃げ場所が無くなって、結果としてそれがアンバランスを生んでしまった印象が否めない。とりわけその補修跡を通過した時などに入力されるステアリングの振動がひどく、あたかもステアリングポスト剛性がないようにすら感じてしまう。

昔のクロカン四駆と呼ばれた時代の4WD車は、本格的オフロードを走るために、大入力が入った際の逃げとして、フロント周りの剛性を意図的に弱めにして捩じられる力を逃がすと言われる。ジープ『ラングラー』や、『ランドローバー』系のクルマが同じような印象の走りをし、初期の『レンジローバー』なども、ステアリングの中心付近のフィーリングは極めて曖昧だった。しかし今、時代は変わり本格的オフロード性能が求められるのはごく限られたモデルだけ。レンジローバーだって今は当時とまるで違う。だが、アウトランダーは今もってその旧態依然としたステアフィールを持っている。どう考えてもアウトランダーはアーバンSUVという性格のクルマなのだから、極めて優れたPHEVの性能を活かすためにもこのあたりは是非改良していただきたい部分である。

改良点といえばもう一つ。今回から新たに「EVプライオリティーボタン」が新設された。その周囲には、セーブモードとチャージモードのボタンもつく。しかし、チャージモードとすると、アイドリングさえストップしなくなるが、これはやり過ぎ。エンジニアの人に聞くと、外部電源に使ったり、アウトドアに使用する際を考慮してと言うが、クルマは本質的には走るのが目的なので、出来ることならそちらを優先していただきたいと思う。

潜在ポテンシャルは非常に高いクルマなので、期待は非常に大きいのだ。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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