ホンダは3月31日、宇都宮市内に開設した企業内託児所を報道陣に公開した。すべてが南向きの保育室は明るく開放的で床暖房も完備、食事は園内調理のため出来立て、園舎の脇には菜園もあり、非常に恵まれた保育環境が整っている。
「すくすく がーでん」と名付けられたホンダ初の企業内託児所は、ホンダの生産技術を担うホンダエンジニアリングの所有地に建てられ、保育室の南側の窓からはホンダエンジニアリングの建屋が見えるロケーションにある。
すくすく がーでんの定員は50名だが、敷地面積は3500平方m、このうち園舎は600平方mとかなり余裕をもった造りとなっている。園舎の西側には約30台の駐車スペースが、南側には遊戯具などが置かれた園庭、そして東側には太陽光パネルや菜園がある。
このうち駐車場に関して、すくすく がーでんの吉澤康太事務長は「送迎のピーク時でもスムーズ、安全な送り迎えが可能。入り口付近にはカーポートを設置しているので雨の日でも濡れることなく園舎に入ることもできる」と語る。
その入り口にはオートロックが備えられており、送り迎えの際、保護者は託児所から配られたセキュリティーカードを使って出入りする仕組みになっているという。「防犯上の理由に加えて、園児の入退園時刻の履歴を管理することにも活用するため」と吉澤事務局長は解説する。
園舎に入ると天井の高い廊下を隔てて右側(南側)に各保育室、左側には事務室やトイレ、調理室、遊戯室などがレイアウトされている。
保育室は入口手前からゼロ歳児から小学校就学前まで年齢ごとに順に分かれているが、それぞれの部屋の間の壁は可動式になっている。その理由を吉澤事務局長は「毎年度ごとに入園者の年齢構成や数が変わることから、その際にハード的な制約から受け入れられないといったことがないよう、各クラスの広さを柔軟に調整できるようにしている」と話した。
すくすく がーでんの保育運営業務自体は、企業や院内の保育サービスを手がけるピジョンハーツが受託しているが、そのピジョンハーツでも保育室間の間仕切りが可動式になっている施設は初めてだという。
また各保育室に床暖房が装備されているのも特徴のひとつだ。吉澤事務局長は「すくすく がーでんは(ガス発電・給湯暖房システム)ホンダ エコウィルや太陽光パネルを設置することで環境にも配慮した施設となっている」とした上で、「各保育室にはエコウィルを利用した床暖房を備えており、一年を通して裸足ですごせるようになっている」と強調した。
床暖の効いた保育室と園庭の間の軒下部分にはデッキテラスがあり、「1歳までの低年齢児は園庭で遊ぶことができないので、天気のいい日にはデッキテラスで保育士と一緒に日向ぼっこをしたり、昼食やおやつを食べたりできるようにしている。また雨の日は窓を開け放して保育室とデッキテラスとを回遊できるようなつくりにもしている」という。
またデッキテラスの片隅には巣やほら穴を意味するDEN(デン)スペースも用意されている。園児同士がけんかして、一人になりたい時に使うスペースで、「逆にこうしたスペースがないとクローゼットや変なところに引きこもってしまうので、安全上の配慮もかねて設けている」という。また「保育士の方からも『私も使って良いですか』という声もある」とか。
さてお待ちかねの昼食は、園内調理のため、常に出来立て手造りのものが味わえるようになっている。調理業務はホンダのグループ会社の社員食堂の運営などを手がけるホンダ開発の管理栄養士が務める。
厨房はオール電化、野菜などの食材や調理台の殺菌消毒には塩を電解して殺菌効果のある水を生成した電解次亜水を使用、アレルギーのある園児向けの食事と通常のメニューを分けられる配膳棚など細部に配慮が施されている。また食育の一環として菜園で栽培される野菜などの収穫物は昼食の食材にも活用されるという。
食事のあとはお昼寝の時間だが、ここにも工夫が施されている。そのひとつが天井の高さだ。天窓を設けた廊下の天井は高く開放感があるが、保育室の天井は低くしてある。というのも「保育室では昼寝する場所にもなるので、その際に自分の家の天井よりも高いと安心して寝られないというアドバイスをピジョン側から受け、あえて少し低くしている」とのことだ。
また昼寝の際、園児は各自が持ち寄った布団などを床に直に敷くケースが多いが、すくすく がーでんでは簡易ベッドのコットを託児所側で用意している。「保育室では昼食もとるので、どうしても食べかす床に落ちていたりすることもある。そこで床から5~10cmの高さのあるコットを使うことで安全で衛生的な環境で昼寝ができるようにしている。またシーツや毛布などのクリーニングも行うことで保護者の負担軽減も図っている」という。
すくすく がーでんの入園対象者はホンダを始めホンダの労働協約適用会社である本田技術研究所、ホンダエンジニアリング、ホンダアクセスの正規・再雇用・嘱託従業員の子どもとなっているが、ホンダの尾高和浩取締役執行役員管理本部長は「状況に応じて考えていきたい」と話す。
また尾高取締役は今後の託児所の展開について「和光に来年の4月開園の予定」と明かしたうえで、「従業員のニーズ、各地域の待機児童の数など様々な状況を合わせて対応をやっていきたい」との考えも示していた。