【KTM 1190アドベンチャーR 動画試乗】電制パワーでダートも楽々、KTMの哲学が光る…佐川健太郎

モーターサイクル 新型車
KTM 1190アドベンチャーR
KTM 1190アドベンチャーR 全 18 枚 拡大写真

東京モーターサイクルショーでお披露目された新型アドベンチャーシリーズの国内投入も近いと噂される中、あらためてKTMの現行オフロード系最高峰モデル、『1190アドベンチャーR』に試乗してみた。

KTMはモトクロスやエンデューロなどの活躍で知られるように、元々オフロード系モデルに強いメーカーというイメージがある。その最たるものが、ダカールラリー16連覇の金字塔だろう。今でこそ、レギュレーションで450cc単気筒マシンに規制されているダカールラリーだが、過去には1000ccクラスのほぼ無差別級マシンによって競われていた時代もあった。その頃のモンスターマシンのイメージを色濃く投影したモデルがアドベンチャーシリーズと言っていい。「1190アドベンチャーR」はその中でも、最もオフロード色の強いモデルである。

最高出力150psを発揮する排気量1190ccのV型2気筒エンジンに235kg(満タン時)の車重、シート高890mmというスペックは、まるでビッグネイキッドに高下駄を履かせたようなイメージである。たしかに足着きは身長179cmの自分でも両足ツンツンだ。であるが、実際に乗ってみるとハンドリングは想像していた以上に軽やかで、エンジンも非常に滑らか。マイルドと言っていいほどだ。鼓動感も洗練されていて刺々しい感じやガサツさは一切なく、どの回転数からでも実にスムーズにパワーが出てくる。気持ちのいいエンジンだ。

フロント21インチでこれだけの車格となると、とても小回りなどできないと思いきや、実はスラロームなども得意。長い前後サスペンションによる路面追従性の良さ生かしてグリップの悪い路面でも安心してスロットルを開けていける。極低速でも粘るエンジン特性により、ハンドルも切れるのでUターンも意外にやりやすい。さらに高速道路では余裕のパワーと乗り心地の良さ、調整式スクリーンによるエアプロテクション効果などにより、快適無比な高速クルーズが楽しめる。とにかく疲れないのだ。そこに大陸横断ツアラーとしての一面を垣間見ることができる。

そして、真骨頂はやはりオフロード。フラットダートはもちろんのこと、所々に拳大の石が転がるガレた林道でもスロットルさえ開けていれば大丈夫。しなやかなWP製前後サスペンションとMTC(トラクションコントロール)による緻密なスライド制御によって、易々と安全に走破できてしまう。しかも純正装着のロードタイヤでだ! ちなみにライディングモードは4種類(スポーツ、ストリート、オフロード、レイン)設定されているが、自分的には「レイン」、つまり最もトラコンの介入度が高くパワーも穏やかな設定が走りやすかった。ダートでも扱いやすいABSも含めて、最新の電子制御による絶大な威力にはあらためて感心させられた。

車格や足着き性なども含め、軽々しく万人向けとは言えないが、それでもこれだけの巨大マシンをダートでも扱える楽しさと充実感は格別のものがある。ダカールで勝ち続けるKTMの哲学をリアルに感じられるモデルだ。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
走破性:★★★★★
快適度:★★★★★
タンデム:★★★★
オススメ度:★★★★★

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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