【安全の舞台裏 JAL】滑走路を逸脱、海上へ---救難訓練体験

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ラフトへの移乗訓練
ラフトへの移乗訓練 全 12 枚 拡大写真

航空会社では運航の安全を堅持するため、乗務員が常日頃から救難訓練を行なっている。日本航空(JAL)がこの訓練を媒体に体験させてくれるという。概要説明が終わりいよいよ実技だ。記者は客室救難訓練の実技を乗客役として体験した。

体験した訓練課目はラフト(ゴム製いかだ)による水上への避難、スライドによる地上への避難、酸素マスクの展開落下、非常食の試食。案内をしてくださったのは安全訓練グループの藤原万利子インストラクターと管野美紀子インストラクターの2人。

実技を始める前に準備体操をして体をほぐす。階段を使って“地上”へ降りると、床は全面にマットが敷かれ、階段の手すりなど要所にもマットが張られている。体操はラジオ体操で、音声は海外の乗務員向けに動作の指示や掛け声が英語になっている。聞き慣れた日本語バージョンよりややテンポが速いようだ。記者の普段の運動が不足しているせいでそう感じたのではない。

最初の実技はラフトによる水上への避難。機内に戻りシートベルトを締めて座席で待機する。前方の動画ディスプレイ画面から、海岸にある空港へ着陸するシチュエーションだということがわかる。

着地した直後機体が向きを変えてしまい、滑走路から外れて海へ向かう。効果音付き。と、その瞬間、乗務員(の役のインストラクター)は「頭を下げて! Heads Down!」と大声で叫び、乗客に衝撃防止姿勢をとるよう指示する。肉声なのは、一刻を争うためと、客室乗務員自身も衝撃防止姿勢をとるためである。初期訓練で新人が苦労するのが、この大声を出すということだそうだ。

機体の姿勢が安定したら、乗客乗員はライフベストを身につける。膨らます前はペラペラのシートに何本かのストラップが繋がっている状態で、前後を確認したり、ストラップの先を見つけるのにちょっと手間取った。頭から被ったり、バックルを締めるといった個々の作業はごく簡単なので、落ち着こう。

ラフトに乗り移る直前にライフベストを膨らます。
乗務員は乗客に説明しながら自らのライフベストを装着すると、ドアを開けてラフトを展開する準備をする。機外に火災や燃料漏れがないか、ラフトを展開するスペースがあるか、水位は問題ないかなど窓から安全を確認、次いでドアモードがオートマチックになっていることを確認、ドアを開ける。ドアを開けるとドア内部に格納されていたラフトに一気に空気が送り込まれて、水面に展開される仕組み。

機内放送でも耳にするドアモードの「オートマチック」とは、ラフトの「自動」展開のことなのだ。通常の乗り降りではドアを「マニュアル」モードにして、ドアを開けてもラフトが展開しないようにしておく。今回は訓練なので、展開済みのラフトがプールに浮いている。また、訓練用機体はボーイング777を模しているが、ラフト訓練用のドアは787仕様になっていて、2種類のドア訓練ができる。

ライフベストはドアから脱出する直前で膨らます。紐を引くと、シリンダーに圧縮されていた炭酸ガス(二酸化炭素)がライフベストを膨張させる。これも簡単な動作で、瞬時に膨らむ。座席や通路で膨らますと身動きが取りづらくなるし、足元も見えにくくなるので、機外に出る直前まで膨らまさないこと。

ラフトへの移乗訓練
ライフベストを着て水に浮くところまでは体験しなかったが、浮力は充分にありそう。かなり膨張するため首回りはちょっときつい。

ラフトに移乗する。船底がブヨブヨして歩きにくいのは想定内、素材そのものも滑りやすいので注意が必要だ。素材が滑りやすいのはラフトがスライドも兼ねているからで、このラフトはより正確には「スライドラフト」と呼ばれる。翼の上の非常口のスライドはスライド単機能なので「スライド」だけで呼ばれる。

ラフトは、船底が柔らかい以外、全体の構造はしっかりしている。人が乗り移る時やラフト内を移動するときは不安定になり注意が必要だ。B777のスライドラフトの定員は最大81人、サバイバルキットは搭載されているが、非常食は機内から搬出する。

★客室乗務員は大声を出す訓練をする。
★ライフベストの装着は簡単なので慌てない。
★ライフベストは機内で膨らますと動きにくいし、周りも見えにくい。

取材協力:JAL(施設見学)

【安全の舞台裏 JAL】救難訓練体験
1. ビルの中に飛行機があった![リンク]
3. スライドは安心感があるけど速い[リンク]
4. 非常食を噛みしめる[リンク]

《高木啓》

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