【マツダ ロードスターRF 試乗】2リットルエンジンに感じる“ゆとり”こそが武器…中村孝仁

試乗記 国産車
マツダ ロードスターRF
マツダ ロードスターRF 全 17 枚 拡大写真

社内呼称NDの『ロードスター』がデビューした時、その搭載エンジンが1.5リットル、131psという、少し物足りないスペックだったことに、若干の不満を抱いたユーザーも少なくなかったのではないかと思う。

結論から行けば想定されるパワー不足は、コンパクトなボディと優れた足が織りなす爽快感で、ある意味帳消しとなったように思うのだが、実は本当はもう少しゆとりが欲しいというのが、偽らざるところでもあったように思う。

そんな時、リトラクタブルルーフを持つ『ロードスターRF』は、アメリカで販売されるロードスターと同じ、2リットルユニットを搭載してデビューした。パワーにして27ps、トルクにして50Nmアップとなっている。これは乗ればだいぶ力持ち感が強いのだが、実際には横並びで比較してみないとなかなかわからないもので、正直明確な差はわからなかった。

RFで期待されるもう一つのメリットは、ソフトトップではなく一応メタルルーフが付くのだから、より静粛性が向上しているだろうということである。ただ、どうもこれも横並びで比較してみないとわからないようで、実際1週間試乗させていただいたが、ソフトトップの静粛性を忘れているためか、メタルルーフになっても静粛性が高いとは思えなかった。

試乗したのは「VS」と呼ばれる中間グレードで、これが「RS」という最上級グレードになると、ルーフ内貼りが若干異なり、より静粛性が高まると聞いているが、所詮大した違いはないように思え、実際高速道路で巡行してみても、オーディオを愉しもうという雰囲気にはなれないレベルの静粛性である。

メタルルーフになる(しかも電動)ことで、当然ながらソフトトップよりは格段に重くなり、グレードによって異なるがほぼ70kgの差がある。その重量増を2リットルエンジンで補おうというわけだが、個人的な印象としては少しおつりが来ているように思えた。つまり、2リットルは単にパワフルだというだけでなく、快適なクルージングにも一役買っていて、実際RFの場合はAT比率が高くなるという。今回はマニュアル装備車を拝借したが、言われてみれば、こちらはATでも快適で楽しく乗れるかな?と思えた。勿論運動性能がソフトトップと比べて鈍重になったからATでいいやという感覚ではなく、メタルルーフゆえのクルーザー的イメージがそうさせているのであって、攻めれば依然として実に楽しいハンドリングを味合わせてくれる。そうした意味では根本的な走りの印象はソフトトップと大きくは変わらない。

だが、1週間という比較的長めのスパンで借りたRFは一度、大きな欠点を露呈した。それは雨対策が十分でないということ。ルーフサイドが丸くツルンとしていて、少し強い雨が降っていたりすると、ドアを開けた瞬間にその雨はすべて室内にしたたり落ち、マズいことにそれはシートの上に落ちてしまうのである。勿論傘をさしても有効な手段にはなり得ず、結果として雨の日はシートをふくためのウェスの用意が必須となる。まあ、スポーツカーだし、雨の日は乗るのを控えろ、ということか。

その欠点はともかくとして、500km弱を走破した結果思えたことは、やはりマツダの提唱するドライビングポジションがすこぶる馴染みやすく、疲れを伴わないということである。特にマニュアルで渋滞に突っ込むと暗澹たる気持ちになるのだが、今回は気持ちはそうでも予想外に疲れなかった。やはりドライビングポジションがすごく大事だということを実感した次第である。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 :★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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