超特急とともに走った「水」がルーツ、富士山麓の天然水工場を見る

鉄道 企業動向
「富士號列車食堂みかど」のメニュー
「富士號列車食堂みかど」のメニュー 全 6 枚 拡大写真

山梨県富士吉田市。富士箱根伊豆国立公園内にある富士ミネラルウォーターの工場に、「富士號列車食堂みかど」と記されたメニューが掲げられている。カクテールやレモネードと並んで、「日本エビアン(下部天然鉱泉)八銭」の文字。

特急「富士」食堂車で、8銭で売られていた「日本エビアン」が、富士ミネラルウォーターのルーツだ。4月27日、同社は富士吉田の工場「アクアワークス」をメディアに公開。従業員10人で、年間100万ケースを生産する拠点の内部を見た。

富士ミネラルウォーターの歴史は、80年前にさかのぼる。1929(昭和4)年に創業した堀内合名会社は、富士身延鉄道(現JR東海 身延線)が所有する湧水(山梨県下部湧出名水)を活用し、ミネラルウォーターとして日本で初めて販売を開始。

埼玉・大宮の鉄道博物館には、「東海道本線の特急用1等展望車。桃山式の荘厳な内装を誇る」と紹介されているマイテ39形式客車(マイテ39 11、1930(昭和5)年製造)が展示されている。この車両が連結されていた時代の特急「富士」に、前出の日本エビアン(下部天然鉱泉)が積まれ、25銭したレモネードなどの脇で、天然を売りにした水が8銭で売られていた。

同社と鉄道のつながりはいろいろある。二代目社長の堀内義男氏が、1957年の日本経済新聞紙面につづったエッセイには、満鉄総裁で鉄道院初代総裁の後藤新平とのエピソードが記されていた。

「昭和初年のころ水をビン詰にして売り始めたが悪罵冷笑の的となった。ただ、応援してくれた後藤新平さんのすすめで『水を飲む会』という頒布会を作った。1升ビン10本を3円位で頒布した。会員は300名くらいになり、そのころからボツボツ常用する人が増えてきた」

1941年には、戦時下の敵性語の使用禁止から富士鉱泉水に商標を変更。南海第一線で富士鉱泉水が「出撃前の水盃」として採用され、軍需品のひとつにもなった。

鉄道とは直接関係しないが、プロ野球選手を起用した広告も展開した。1961(昭和36)年の週刊現代のなかで「国鉄スワローズ 金田投手は、試合が終わると五合(九〇〇ml)詰の「富士ミネラルウォーター」を一息に飲みほすのが習慣になって居る」とつづられている。

2016年に竣工し、2年目をむかえるアクアワークス。平日の月~金曜日、10・11・14・153時に見学会(約30分)を開催。入場料は無料。公式ホームページで予約を受け付けている。

超特急とともに走った水を受け継ぐ、富士急グループの天然水工場ではいま、敷地内の深さ200mの井戸から取水したバナジウム含有弱アルカリ性の軟水を使用した水が、「旧工場の1.7倍の生産能力」で製造されている。

富士ミネラルウォーター「アクアワークス」

《レスポンス編集部》

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