【池原照雄の単眼複眼】ゴーン三菱、コミットメント実現のV字回復へ

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三菱自動車の益子修会長兼社長(右)と日産自動車のカルロス・ゴーン社長
三菱自動車の益子修会長兼社長(右)と日産自動車のカルロス・ゴーン社長 全 2 枚 拡大写真

まずは今期の営業利益で「半返し」

三菱自動車工業の今期(2018年3月期)業績が、軽自動車の燃費不正で赤字転落した17年3月期からV字回復する見通しだ。16年10月に日産自動車に傘下入りして以降、着実に収益改善を進めつつある。12月から三菱自の会長も兼ねている日産のカルロス・ゴーン会長は三菱自への出資に際し、今期以降での急ピッチの業績改善に自信を示していたが、まずは無難な数字が確保できる展開となっている。

三菱自が9日に発表した今期の連結業績予想は、営業利益が前期比約13.7倍の700億円、純利益は前期の1985億円の赤字から680億円の黒字に転換する。営業利益はピークの1384億円(16年3月期)には遠く及ばないものの、その5割強でありいわば「半返し」となる。

業績予想の前提となる今期のグローバル販売計画(小売ベース)は11%増の103万台と、2期ぶりに100万台ラインに戻す。このうち主力のアジアは23%増の38万9000台と、地域別では最も高い伸びを託している。4月に開所式を行ったインドネシア新工場では、9月にアジアで人気のMPV(多目的乗用車)の新モデルを投入する計画となっており、高い期待をかける。

キーマン山下副社長による“日産文化”の移植

ゴーン会長は昨年10月のメディア各社による共同インタビューで、「(17年度での)V字回復への自信はある」と強調し、かつての日産再建時のような手応えを示していた。その自信の裏付けとしては、3つの背景を指摘した。第1が日産からの経営陣派遣による「力強い(経営)体制」、第2がピックアップトラックなどの商品力や東南アジアにおける「三菱自動車の強み」、そして3番目に仏ルノーも含めた提携の「シナジー効果」である。

両社は提携で基本合意した直後の16年6月に、日産が開発部門のトップを務めた経験もある山下光彦氏を三菱自の副社長に派遣。いち早く不正の温床だった開発部門を中心とした体質改善に取り組んできた。ここまでの三菱自再建のキーマンは、ゴーン会長でも、ゴーン会長に慰留されて経営陣に残った益子修社長でもなく山下氏だった。開発部門にとどまらず、「コミットした数字をきちんと達成するという(日産の企業)文化」(益子社長)を移植してきたのだ。

19年度までに過去最高の利益水準に戻す

一方、提携のシナジー効果は、すでに始まった海外で物流共同化や今期から始まる部品・資材の共同購買で着実な効果をもたらす。三菱自は今期に営業損益段階で370億円のコスト低減を見込んでいるが、うち250億円は「日産とのシナジー効果を織り込んだ」(池谷光司副社長)という。

9日の決算発表会見では、益子社長が今年度から19年度までの中期計画の策定を進めていることも明らかにし、最終年度の世界販売は現状より25%多い125万台、売上高営業利益率は6%(今期予想は3.5%)を目指すと表明した。利益率の6%は営業利益がピークだった16年3月期のレベル。益子社長はゴーン会長との話し合いで「まずは、燃費問題の前の利益率に到達することが必要」と、一致しているという。

これがゴーン会長に対する益子社長のコミットメントということになるのだろう。つまり、遅くとも19年度までにピークの営業利益を更新するということだ。ルノー・日産連合の強い後ろ盾と、3社のシナジー追求の効果を勘案すれば、決して高いハードルではない。

《池原照雄》

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