妖怪と仲良くして…水木しげる記念館を訪ねる【ドライブコース探訪】

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水木しげる氏の書斎再現コーナー。まるで今もそこにいるかのようである。
水木しげる氏の書斎再現コーナー。まるで今もそこにいるかのようである。 全 25 枚 拡大写真

ホンダのサブコンパクトクラスミニバン『フリードハイブリッド』で東京~鹿児島3800kmツーリングを行った。東京への帰路は山陰ルートを選択。その道中、鳥取・境港の「水木しげる記念館」に立ち寄った。

一昨年、93歳で没した水木しげる氏は妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」や歴史・戦争漫画「コミック昭和史」など多数のユニークな作品群で知られる漫画家。描いた世界や生涯についてはここに記さずとも散々論評されているが、あえてひとことで言うと、目に見えるものと目に見えないものを同じように大切に扱い、統合して表現した作家である。闇や妖怪を忌避するのではなく、それらと日の当たる場所が一体となって世界が作られているのだから、みんなが仲良くすべき…といった世界観である。

「全国、さらに世界を行脚して妖怪について見聞きし、それを絵にして多くの人の目に触れる機会を作ったのは、水木さんの大きな功績のひとつ。もし水木さんがいなかったら、今日でも妖怪は民俗学の世界にとどまり、一般の人たちは生まれたり住んだりした土地に伝わる話くらいしか知ることができなかった可能性もあると言われています。ゲゲゲの鬼太郎のようなキャラクターだけでなく、水木さんの人間像、また水木さんが研究したもの、存在を感じようとしていたものをできるだけ豊かに感じていただきたいと考えて作ったのが当館の展示です」

館長の庄司行男さんは語る。

水木氏の言葉に「日本の妖怪は誰にも知られず誰からも感謝されないけど、人知れず大切なものを守っているんです」というものがある。その言葉どおり、2012年に増強されたという展示内容は、単なる水木しげる氏の作品やバイオグラフィーにとどまらず、その時代において科学的に説明できない現象を“妖怪”という不思議になぞらえ、恐れながらも共存してきた日本古来の文化の香りを感じさせるものだった。全都道府県に伝わる妖怪の紹介、ジオラマを用いた妖怪の“効能”の再現等々、水木氏のイマジネーションの一端を垣間見る気分にさせられる。

「水木さんは子供たちに妖怪と仲良くしてほしいとも言っていました」と、庄司館長は言う。ここはひとつ、大人も子供の気分になって見学してみるのが良さそうだと思えた。

今日、山陰地方へのアプローチは鳥取、米子、松江など中国山地を横断する自動車道が充実したこともあって、昔に比べるとかなり便利。境港は山陰道、米子自動車道の米子インターを出てから一般道で30~40分程度の距離。東に行けば鳥取砂丘まで約2時間、西に行けば出雲大社まで約1時間半。また、大山や蒜山など高原系のドライブルートもある。1日で巡るのは少々きついが、1・2泊での小旅行にはうってつけだ。ボトルネックのある市街地を迂回すれば交通密度は全般的に低く、ドライブの面でも快適なクルージングが楽しめるだろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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