【ホンダ フィットRS 試乗】その名前、過度の期待は禁物です…中村孝仁

試乗記 国産車
ホンダ フィット RS 改良新型
ホンダ フィット RS 改良新型 全 11 枚 拡大写真

「RS」のネーミングは古の時代からホンダ高性能モデルに使われた伝統のもの。中年以上のおじさんが思い出すのは『シビックRS』であろう。

当時のRSは、足もいじればエンジンもいじって、名実ともにスポーツモデルを名乗って憚らなかったものである。翻って最新の『フィットRS』、カタログのどこをどう見てもそれらしいチューンナップが施されているという記述はない。おまけに乗ってみても、既存のモデルとの差別化は非常に難しい(というか、ほぼ無い)ほど、マイルドな仕立てとなっていた。

少なくともエンジンに関する限りは、既存の1.5リットルガソリン仕様の『15XL』と何ら変わるところはなく、RSが唯一他グレードと異なるのは、6速MTの用意があるということだけである。

正直、入念な取材をしてちゃんと足の違いを聞けばよかったのだが、3台続けて試乗してください、となると、なかなかそうもいかず、言い訳になるが結局足回りに関するお話は聞けずじまい。そこで、配布された資料やカタログ、それに技術説明で語られた文言と、説明に使われたディスプレイの写真を見返してみても、RSに専用の足回りが奢られているという話は一切出てこない。

というわけで、RSと言ってもこれはあくまでも外観をスポーティーに仕立てた雰囲気重視のスポーティーバーションと思わざるを得ないわけである。今回のフィット、マイナーチェンジにもかかわらず、骨格の見直しから制振、防音などのために普通はやらないであろうというような、かなり大がかりな変更を加えてきた。そのため、その乗り心地、静粛性、剛性感などは明らかにグレードアップされており、RSでももちろんその恩恵にあずかっている。

現行フィットRSのネーミングに込められた意味が語られていないが、古のシビックの時代は、高性能化されていてもその意味はロード・セイリング、即ち、道路をヨットのようにセイリングするという意味が込められたものであった。まあ、当時はその意味と性能がだいぶかけ離れていて、明らかに硬派なファンが乗るモデルに仕上がっていたのだが、今のフィットRSにおいては、まさしくそのロード・セイリングという意味合いが相応しいように思う。

最近日本市場ではめっきりマニュアルミッションを搭載するモデルが減ってきた。そんな中では貴重な1台なのだが、クラッチは非常に軽く、それ自体は否定するものではないのだが、反力もほとんどないから果たしてどこで繋がるのか、最初のうちはエンジン回転を上げ過ぎてしまうケースが多発。かなり冷や汗ものの恥ずかしい走りをしてしまったが、そんなものはモノの10分も走れば慣れてしまう。

でも、シフトフィールも正直クリック感に乏しくて、しかもストロークもかなりあるから、どちらかと言えばスポーティーなMTとは言いづらい。同じガソリン仕様の「15XL」がCVTの設定しかないからそれから比べたらはるかに面白いし、操る感覚を持てることも確かだが、性能的には一緒。「よーいどん」したら、無段変速の分、クラッチによるトルク変動もないからあちらの方が速いかもしれない。CVTじゃなくてDCTをRSに設定したらよいのにと思ってもみた。

というわけで、RSと言っても決してスポーティーな走りが出来るモデルではなく、一つはマニュアルが設定されていて、「操る感」を楽しめること。少し派手な外観とトリム、それにステンレスのスポーツペダル(これは他グレードにも設定があるが)などがRSの特徴で、間違っても走りに大きな特徴があるとは感じない。だから、その名前から過度な期待を持ってはいけないのである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 :★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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