【VW up! 試乗】頭の中がグチャグチャになった…中村孝仁

試乗記 輸入車
VW up!
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はっきり言おう。何とも悩ましいクルマであった。1週間で350km弱を走行した。ほとんど町内回り使用で、高速は全体の2割ほど。VW『up!』の話である。

どこがどう悩ましいか。まずはこのクルマをVWとして見た場合、コンパクトでどんなに高くても200万円を切る価格設定。安いモデルだと158万7000円から手に入る。これなら軽自動車を買う懐でVWが買える、となってすわっ販売店に!となる人もいるかもしれない。確かに75psの1リットル3気筒エンジンは、走り方のコツさえつかめば、やはり軽自動車では味わえない大胆な加速も体感できるし、何よりしっかりとしたシャシーと骨格によって、圧倒的に軽自動車よりもどっしりした走行フィーリングを満喫することが出来る。

と、ここまで来るとやっぱりVWブランドだよなって話になり、山椒は小粒でもピリリ、なわけだが、350kmほど走った後の燃費はと言うと、これが12km/リットルそこそこ。えっ?軽と同じように行かないの?12km/リットル?という話になる。運転が下手だから?いえいえ、ごく普通に走りました。省燃費運転はしていないけど…。それに燃料はハイオク。じゃあランニングコスト高いじゃん…って話になってコリャ駄目だと。

しかしまた一方で、コツさえつかめばという前述した部分は、独特なシングルクラッチの電子制御マニュアルにあって、これ、以前は変速の度のトルクの変動が大きく、それにクラッチの断続に時間がかかるもので、隣に乗っているパッセンジャー(隣じゃなくてもいいけど)は、その都度頭を前後に揺さぶられて、そりゃ心地の良いものではなかったのが、改良されたのか、そのトルクの谷をだいぶ感じなくなっている。だから、ATモードでも普通に法定速度内で走る分には何の痛痒もない。そして、もっと活発に走らせたいと思ったら、例えばATモードの場合は変速させたい時に意図的にアクセルを緩める。そうすればATモードでも意図した通りに走らせることが出来るし、そもそもマニュアルなのだから、初めからマニュアルで走ればこれはなかなか面白い。で、同時にシャシーがしっかりしているから峠をカっ飛んでもそれなりに楽しめるから、やっぱりいいね…。

でも4ドアのくせして、リアウィンドーは下に開かず横開き。ほんのちょっとしか開かないじゃん。おまけにこの季節、真夏の太陽が照り付けるとエアコンをLoに設定しても、効かないじゃん…夕方涼しくなるとやっとこさちょうど良い。温度も上げてそれでも18.5度くらいかな。だからエアコンは常に全開。うーんこれじゃあ…。

等々、いいところと悪いところが頭の中を交錯してもうグチャグチャなのであった。

今回の大きな改良ポイントは外観の小変更もさることながら、スマホとのコネクティビティーが強化された点にある。専用のスマホホルダーを用意すれば、その下からUSBコネクタに接続し、電池の心配なしに各種機能が使える。そしてmap+moreというアプリをスマホ内にダウンロードしておけば、スマホ内の音楽再生や、専用ナビの使用、車両走行データやタコメーターや水温計の表示などが可能となっている。

というわけでナビだけだったら、従来からスマホ内のナビを使えばよいのだが、スマホと連動する5インチのコンポジションフォンというディスプレイが付いたおかげで、スマホをここでコントロールすることが出来る。これは大きな進歩で実際に使ってみても、スマホのサイズが小さくてナビが読み取りづらいことを除けば、結構ビルトインのインフォテイメントシステムと同等の機能が使えるから便利。やっぱりいいなぁ…と。

新たにコーナリングライトも付いたし、コンパクトカーだけのことはある…と思ってみたりはするのだが、コンポジションフォンはオプションだから、上乗せすれば結局高くなって200万円越え、となるとチョイノリ中古の『ポロ』に手が出ちゃう。うーんやっぱりダメか…等々、別に買うわけでもないのに随分と悩ましい状況にさせたクルマではありました。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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