FCバスに乗って親子でカレーを作る…東京都、2020年までに70台導入計画

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東京駅を出発
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東京都交通局は、3月より実際の営業運行を開始しているFC(燃料電池)バスを使ったバスツアーを、JTBなどの協力のもと実施した。ツアーの特徴はFCV路線バスの試乗に加えて、バスの燃料電池を電源としてキャンプ場での料理を楽しめるというものだ。

ツアーは8月19日、20日、26日の3回が予定されており、その初回となる19日のツアーについて取材することができた。

東京都は3月21日より、都バスの05系統、東京駅丸の内南口からビッグサイトまでの区間において2台のFCバスを導入している。今回のツアーは、東京都の情報発信と、オリンピックに向けて普及を進めるFCバスをアピールする目的で企画された。

車両は日野のハイブリッドバス『ブルーリボン』をベースに、トヨタが『ミライ』のFCVユニットを搭載したモデルとなる。量産・流用を考えてモーター、コンバーター、水素タンク、燃料電池、二次バッテリーなどはミライで使っているコンポーネントを流用している。ただしタンクは600リットルに増量がなされ、24kgまで水素を充填できる。燃料電池とモーターは2系統搭載され、合成された出力がリアタイヤを駆動する。

航続は200kmを目指して開発されている。これは路線バスの1日の運行距離が100km前後であるため、最低でもその倍を確保するためだ。都バスの05系統だと、1日にだいたい50kmほど走行するので、水素の重点は2日に1回、有明にある水素ステーションで帰庫時、回送時に充填を行っている。充填時間は7分程度といいCNGの充填より少し早いくらいだという。

東京都では、今年度中にあと3台のFCバスを導入する予定。2020年のオリンピックまでには最多70台での営業運行を目指すとしている。

「水素のチカラを実感! 親子で行く燃料電池バスツアー」と題されたツアーは、東京駅を朝9時に出発し、水素情報館でのワークショップ、有明の水素ステーションの見学のあと、お昼前に豊洲にあるキャンプ施設「ワイルドマジック」で、調理体験と試食というプログラムが組まれた。

調理は、炭火やガスコンロではなく、IH調理器を利用する。電源は、FCバス後部にあるCHAdeMO互換のアウトレットからDC/ACインバーターを経て、参加者のテントに供給される。FCバスは災害時などは避難所の電源車としても活用できるようになっている。ツアーではこの機能を利用して屋外で快適な調理を楽しもうという趣向だ。

メニューはキャンプの定番であるカレーだが、電気を生かしたものということで「炊き込み東京カレー トマトあん」に参加者は挑戦する。メニューの監修は“料理の鉄人”道場六三郎氏。銀座ろくさん亭から宮永料理長が現場に駆け付け、作り方の指導もしてくれた。料理長によれば、電気を使った調理ということで、鍋で煮込むカレーではなく、炊き込みご飯のように作るカレーに、トマトあんをかけるメニューを考案したという。

調理には、IHクッキングヒーターが4台。業務用炊飯ジャー(2升)1台が利用され、合計の消費電力は7.02kw。FCバスの最大出力が9kw、供給電力量は235kw/hとなっている。今回のツアー行程に加えて2時間弱の調理時間の電力消費には十分余裕があり、水素の消費量は全容量の20~30分の1程度だった(東京都交通局)という。水素重量にして1kg前後、容量にして20リットルちょっと(全容量600リットル)といったところだ。災害時の避難所では4、5日分の電力はまかなえる給電能力があるそうだ。

調理は、宮永料理長やツアースタッフがサポートしてくれる。どの参加者も子どもたちが野菜を切ったり、具材を炒めたり、率先して調理を楽しんでいた。横浜から参加した親子は、水素や燃料電池に興味を持ってほしいと親が申し込んだが、中学1年生の男の子は料理をしたり、味付けを工夫するのが好きだといい、もっぱら調理を楽しんでいた。同じく横浜から参加した小学生の女の子は、通学にバスを使っているそうだが、FCバスは音が静かで乗り心地もよかったと、普通の路線バスとの違いを楽しんでいた。親の反応としては、バス特有のにおいがないのがよいという声も聞かれた。

FCVは、走行部分だけみれば電池で走るEVと同じだ。トルク感や発進のスムースさは大型バスであってもEVのなめらかさを体感できる。シフトチェンジのショックや振動もないので、走行中の不快なゆれやGもなかったそうだ。

グローバルでは急速なEV化の波が起きようとしている。トヨタもEV乗用車の開発を表明するなど、業界ではFCV(乗用車)市場を今後を疑問視する声も聞かれるが、大型バス・トラックのような走行ルートが固定しやすく、大出力が必要な用途ではFCVのメリットは少なくない。トヨタ・日野連合が日本のFCV市場の鍵を握っている。

《中尾真二》

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