【BMW 530e 試乗】PHEVも結局、使う人によってはハイブリッドと同じ…中村孝仁

試乗記 輸入車
BMW 530e
BMW 530e 全 21 枚 拡大写真

多くの試乗記は、試乗会で短時間試してみるか、あるいは雑誌媒体などでは通常、箱根あたりまで往復してそのクルマを評価する。

しかし、PHEVに関していえば本当なら1週間ぐらい借りて乗ってみないとその本質はわからないと思う。何故ならば、電気が無くなった後のクルマの動きが重要になってくるからだ。クルマの動きというのは、運動性能という意味ではなくて、要するにバッテリーが無くなった時はエンジンとモーターがどのように動くかという意味である。

BMW『530e』を一週間借用して、日常的に使ってみた。因みに我が家には充電設備がない。もし充電するとしたら例えばBMWのディーラーに行くか、市中の200V充電設備がある商業施設などで充電をするということになる。

PHEVの多くは、満充電の場合積極的にバッテリーを優先して使うように設計されているように思える。BMWの場合、オートeドライブ、マックスeドライブ、それにバッテリーコントロールという3つの走行モードがあって、デフォルトはオートeドライブ。つまりスタートボタンを押した時は、このモードが自動的にセレクトされる。そして走り出すとほぼ無音の電気モーターで走行開始。よほどアクセルを踏み込まない限り、エンジンが介入することはない。一応、お役所に届け出たEV走行換算距離というのが52.5kmとある。ただし額面通り50km以上EV走行が出来ると考えるのは早計で、現実的にはエアコンを使ったり、その他電気を消耗しているから、まあその半分も走れば立派なものかもしれない。

今回はおよそ50kmほど走行した後に、とある商業施設の200V充電器を使用して1時間充電を試みた。PHEVを持つうえで重要なことは、この充電施設がどこにあるかをよく知っておくことかもしれない。もしその場所を多く知っていれば、効率的にそれを使ってPHEVの利点を生かせると思う。しかし一方で、僕のようにその施設の存在場所を全く知らず、家にも充電設備が無いような場合、バッテリーを使い切ったらただのハイブリッド車になる。それもほぼバッテリーがないから、実質的には発進の一瞬だけモーターで走るマイルドハイブリッド的なものだ。

このクルマに搭載されるエンジンは2リットル直4、システム全体の出力は252ps、420Nmである。性能的には何ら不満がない。今やBMWのPHEVは、最上級の『7シリーズ』ですら直4搭載なのだから、5シリーズで直4は驚くにあたらないのだが、その静粛性とスムーズネスには正直驚かされる。新しい5シリーズで凄いと感じさせるところは、この静粛性の高さで、それはディーゼルモデルに至るまで共通している。

PHEVは確かにバッテリーコントロールモードを使えば、車上でのチャージが可能だが、それを使うと燃費はてきめんに悪くなって、ガソリンエンジン車よりも負担が大きくなってしまうから、あまり意味をなさない。

PHEVの良いところはただのHVよりは格段にEV走行が出来ることと、そのEV走行を可能にするための充電が可能だということで、閑静な住宅街に住み、早朝ゴルフや深夜になる仕事などの帰宅が多いユーザーにとっては、周囲に配慮して自宅周辺をEVで…と言う使い方にはとても便利で、この点ディーゼルは特に車外音が大きく、こうした地域に住む人にとって肩身が狭い状況になる。

だが、冒頭述べたように充電設備を持たず、周辺に充電施設がないとなると、バッテリーを使い切ったらただのHVであってしかも燃費は決して良くないから、あまり意味のないクルマになる。というわけでPHEVを生かすも殺すも、ユーザーがどのように使うかにかかっているから、その使い方を十分に考えた上で購入した方が良い。因みに、リアにバッテリーを搭載する影響でトランクスペースはだいぶ床面がかさ上げされて、ガソリンやディーゼルモデルと比べて狭くなる。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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