2段ファンネルとエキパイ連結管で全域スムーズ…スズキ GSX-R1000R 新型エンジン実験担当者【インタビュー】

モーターサイクル 新型車
スズキ GSX-R1000R
スズキ GSX-R1000R 全 24 枚 拡大写真

エンジンの回転が低く落ちてしまっても、欲しいぶんだけトルクが出てきてくれる。つまり、高回転でのパワフルさだけでなく、低中速域から高回転域へのスムーズなパワーデリバリーを実現している。新型スズキ『GSX-R1000R』をサーキットで乗ってみて実感したことだ。

開発チームでエンジン実験を担当した杉 芳典さんは、吸・排気の新技術によるところが大きいと教えてくれた。

まず『スズキデュアルステージインテーク(S-DSI)システム』。これは4つある吸気ファンネルのうち、#1と#4シリンダーの2つをデュアルステージとしたスズキ独自の新機構。

#2と#3シリンダーには通常のシングルステージインテークをセットしつつ、#1と#4においては長いファンネルの上に短いファンネルを配置し、2つのファンネルの間にギャップを設け、高回転時にはそこからより多くの吸気ができるようになっている。

通常、吸気ファンネルは空気の流れの物理特性により、短いと高回転域で、長いと低中速域で効果的と考えられている。

S-DSIファンネルは、その両面を持ち合わす。低中速域では長いファンネルのように作動し、高回転域では短いファンネルのような効果をもたらす。

「コア(ファンネル)を2段にすることで中速を盛り上げつつも、高速も犠牲にしない。どの領域でもトルクを出すことに成功しました」(杉さん)

全回転域でのトルク向上という点では、新開発の『スズキエキゾーストチューニングアルファ(SET-A)』の効果も忘れてはならないと、杉さんは言う。

GSX-R1000は従来型でも、エンジン回転数やスロットルポジション、ギヤポジションをセンサーで読み取り、ミッドパイプに内蔵したサーボ制御バルブによって排圧をコントロールしてきた。

新型では、#1と#4、#2と#3シリンダーのエキゾーストパイプを連結菅(バランスチューブ)で繋げ、そこにサーボ制御のバタフライバルブを追加している。

「高回転になってくると、排気の圧力が高まってエキパイの中で詰まってしまいます。それをバランスチューブで連結させることで通路が増え、排圧を下げることができるのです。つまり排気がスムーズに抜けられるので、高回転でのパワーが稼げます」(杉さん)

低回転域ではバタフライバルブを閉じてトルクを引き出し、高回転時にはバルブを開き、容量増加と排圧低減、排気脈動効果によって、よりパワーを向上させる。

新型GSX-R1000はこうした吸・排気における新技術によって、全域での繋がりの良さをライダーに感じさせているのだ。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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