担当の垣根を越え、究極を目指した…スズキ GSX-R1000R 新型車両開発者【インタビュー】

モーターサイクル 新型車
GSX-R1000R
GSX-R1000R 全 20 枚 拡大写真

ニューモデルの開発はエンジニアたちがエンジン、車体、足まわり、電装など各パートに分かれて、それぞれが行っていくというのが従来のセオリーであったが、スズキの新型『GSX-R1000R』ではそういった垣根はなかった。

車両開発課長の佐原伸一さんは言う。

「お互いに意見を出し合って、エンジンやシャシー単体ではなく、新しいGSX-R1000Rをつくろうとチームが団結しました。そういうチームワークみたいなものは意識したところがあります」(佐原さん)

もちろん担当部門は開発チーム内で分けられていたが、その役割は絶えずクロスオーバーし合っていたという。

車体設計を担当した畑中明政さんはプレス発表会でこう話した。

「エンジン設計に何度も何度もプレッシャーを与え続けて……、あっ、いえチームを組んで、レイアウト上、エンジンの前後長を短縮してもらいました」(畑中さん)

「その結果、前輪の接地点からスイングアームピポットまでを20mm短縮することができ、ライダーが前輪そしてステアリングからの情報を掴みやすくなりました。さらにスイングアームを35mm延長することができ、ライダーがリアまわりの挙動を把握しやすくなったのです」(畑中さん)

「走る、曲がる、止まるという基本性能を突き詰めたとき、昔の意識でしたら、走る=エンジン(設計者で)、曲がる=車体(設計者で)という感覚があったんですが、いまはもうどちらかだけではできない時代になってきているんだと思います」(佐原さん)

最新のスーパースポーツのエンジンは200ps近いハイパワーで、シャシーやサスペンションの高性能化はもちろん、電子制御、タイヤも複雑に関わってくる。

新型GSX-R1000Rではエンジン設計者がパワーフィールだけでなく、「曲がる」「止まる」ためにシリンダーの前傾角を変更して前後長を短縮するなどレイアウトについても徹底追求した。

「でも譲らない、絶対に妥協しないってことが大切なんですよ。たとえば、車体をスリムにしたいと言ってきても、馬力を出したいからエアクリーナーボックスの容量は欲しいですとか……。そこで、両立するにはどうするかっていうのを、各パートでとことん新型GSX-R1000Rではやってきたんです」(佐原さん)

意見やアイデアが担当や部署という隔たりを越えてどんどん飛び出し、チーム内で共有して妥協なしに明確なゴールを目指す。製品に限らず、いいものが生まれるときはそうなのかもしれない。

新型GSX-R1000Rは、そうしてリリースされた。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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