【ホンダ N-BOXカスタム 試乗】高いのにはそれなりのワケがある…中村孝仁

試乗記 国産車
ホンダ N-BOXカスタム
ホンダ N-BOXカスタム 全 24 枚 拡大写真

ホンダ『N-BOX』と『N-BOXカスタム』、せいぜい顔が違う程度で、エンジンもトランスミッションも基本同じものだから、あとは装備の差だけでしょ?多くの人はそう思うだろう。

しかし、少し高いのは単に装備の差だけじゃなくて、それなりに訳があった。装備上の違いとしてはフロントグリルが大きく異なり、メッキの加飾を多用。そして9灯式のLEDライトを装備するのはカスタムの大きな特徴だ。また、流れるウィンカーであるシーケンシャルターンシグナル採用は、ホンダの軽では初のものだそうである。

インテリアを見てもインパネやドア・グラブハンドル周りにメタリック仕上げのプラスチック加飾を施しているが、これは個人的には少々下品に感じてしまった。ドアオープナーの上には小物入れが用意される。女性の髪留めなどを入れるために便利なのだそうだが、ちょうどアシストグリップ代わりに使え、つい手をそこに突っ込んでドアを開けようとしてしまうのだが、内側の手触りがなんともよろしくなかった。まあ、本来の使い方ではないのだから仕方ないのだろうが、ちょいと考えを巡らして欲しかった部分である。

フロントシートがセパレートだったカスタムの助手席は、前後に57cmも稼働するスーパースライドシート。シートのスライドは通常の椅子の下のレバーの他に、シートバック背後にもついている。これがないと一番前にやったときは椅子の下のレバーに手が届かないほどシートが前に行く。その広がったスペースを使うと、後席からドライバーズシートへアクセスできたり、場合によっては子供を着替えさせたりもできそうだ。我が家も最近家族の形態が変わり、小さな子供がいるのでこうしたことにも頭を巡らせることができる。このアイデアは骨格の強さを保ったまま、空間を確保できるから便利そうである。

その骨格。単に軽量化されただけではなく、軽初となるトラス構造のサイドフレームを使ったり、密閉性の高いシーム溶接と高粘度接着剤を併用した接合を使い、さらにはハイテン材を骨格にも用いるなどした結果、現実的には150kg程の軽量化を達成しているそうだが、それにホンダセンシングの標準装備化などの追加装備を施した結果、差し引きとして80kgの軽量化に収まったという。

試乗したカスタムのエンジンは43ps、65NmのNAユニット。さすがに65ps、104Nmのターボと字面だけで比較してしまうと随分の差に感じるが、実際街中を普通に流す程度では、数値ほどの差を感じない。この差を痛感するのは高速の本線への流入といったフル加速を必要とするシーンと、パーシャルから前車を追い越そうとする場合などで、状況的にはそれほど多くないような気がしたので、まあ、NAでも十分という気がする。

ではカスタムと普通のN-BOXでは一体どこが違うのか。前述した顔の違いや加飾の違い以外にあるのか。実はある。それが静粛性だ。つまりカスタムには防音材をノーマルN-BOX以上に奢っているということで、とりわけエンジンルームから室内への音の侵入は、カスタムの方が顕著に小さかった。防音材の違いは主としてルーフやフロアなどだそうだが、より静かなモデルを求めたければ、カスタムというチョイスが正解で、単にデザインの差だけではない。同じグレード同士で比較すると、カスタムの方が20万円ほど高い設定だが、高いにはそれなりにワケがあるということである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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