【レンジローバー ヴェラール 試乗】ランドローバー系モデルでは最高の完成度…中村孝仁

試乗記 輸入車
レンジローバー ヴェラール
レンジローバー ヴェラール 全 19 枚 拡大写真

本家の『レンジローバー』とサイズを比較した時、予想外にそれほど大きくは変わらないという印象を持った。全高以外は。

全長で標準ボディのレンジローバーと比較した場合、『ヴェラール』は202mm短い。一方で、全幅は逆に47mm大きい。そして全高が実に200mmもヴェラールが低いのだ。と思っていたら、これはウェブサイト上での話で、紙ものの諸元を見ると、レンジローバーと比較して全長では185mm短く、全幅は逆に55mmレンジより狭いことになっている。それに全高も180mm低いということになった。因みにレンジローバーの方はウェブ上での諸元である。まあ、レンジローバーを大きく見せている原因は偏にこの全高の高さにあると言っても過言ではないのだが、一体どちらが正しいのか??という印象である。

プラットフォームはジャガー『XE』、『XF』、『F-PACE』と同じものが採用されている。当然のことだがアルミストラクチャ。同じアルミストラクチャでもヴェラールのそれは、レンジローバーのそれよりもひと世代新しい。

F-PACEと同じプラットフォームだと、じゃあF-PACEと何が違うの?ってことになるのだが、あちらはやはりスポーツ性を重視してか、通常は10:90という後輪に多くのトルクを配するFRに近い走りであるのに対し、ヴェラールの方はと言うと、常に50:50のトルク配分を持ち、SUVブランド、ランドローバーとしての面目躍如と言ったところ。

同じエンジンを搭載するF-PACEと比較した場合、車重は80kgヴェラールが重い。しかし、ジャガーよりほんの1年ほど後から出てきたヴェラールだが、その佇まい(これはジャガーとランドローバーの文化の違い)と言い、インテリアのモダンさと言い、走りの落ち着き感と言い、同じジャガー・ランドローバーという会社の中で同じプラットフォームを使いながら、すべてが全然違う。ジャガーさんゴメンナサイ、こりゃヴェラールの勝ちだわ。

インテリアのモダンさも、はっきり言ってドキドキしてしまうほど新鮮だった。今やメーターのみならず、インフォテイメント系もすべてディスプレイ方式になっている昨今のヨーロッパ高級車。中でもヴェラールの処理方法は個人的には最善。

センターコンソールに上下ふたつのタッチスクリーン式ディスプレイを備え、そのいずれも電源が切れている時はブラックアウトされて、美しいキャメルカラーの本革ダッシュに溶け込んでいた。エンジンをオンにすると上側のディスプレイは僅かにバーチカルに立ち上がり、ナビ画面を映し出す。下側はドライブモードやエアコン設定画面となっており、タッチ操作もスイッチ操作も可能だ。ドライブモードはダイナミック、エコ、コンフォートの3つからチョイスできる。そしてダイナミックの階層の下に実はインディビデュアルモードが隠れていて、自分の好みの設定にすることが出来る。この階層の仕組みはわかりづらく、同時に使いづらかった。

ラゲッジスペースの構造は写真で見る限りF-PACEと全く同じ。しかし、何故か容量はヴェラールの方が少し大きい。

試乗車は380psのV6エンジン搭載車。乗り出してすぐに感じることは、これまでのどのランドローバー車(レンジローバーを含む)よりもスムーズで上質だということ。快適さここに極まれりで、いつまでも乗っていたくなるほど心地よかった。路面コンタクト性の高さと安心感の高さはF-PACE以上。ただし、ダイナミックとコンフォートの乗り味にほとんど差がないのはいかがなものかと思う。そもそもレンジローバーの良さは、あの緩いソフトな走りにもあると思うので、ヴェラールもコンフォート側はもう少し緩さを表現しても良かったのではなかったかと思う。

いずれにしてもヴェラールの出来は、現行ランドローバーラインナップでは最高の完成度を持っているといえる。とはいえお値段、スタートプライスこそ699万円で、上級モデルは1526万円というなかなかの価格。仮に699万円は適正だとして、ACCは最上級グレードにしか標準装備されないというのはいかがなものかと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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