自動運転と都市デザイン---システムに必要なものは? 市民の声を聞く

自動車 テクノロジー ITS
自動車工業会 三崎匡美主査
自動車工業会 三崎匡美主査 全 17 枚 拡大写真

3日、東京モーターショーシンポジウムのひとつとして、内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIPプログラム)のうち、自動走行システムプログラムが主催する市民ダイアログが東京ビッグサイトで開催された。テーマは「モビリティと都市デザイン」、その中で自動走行システムの在り方を探る。

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SIPは、エレクトロニクス、エネルギー、インフラ、サイバーセキュリティなど日本再生の鍵を握る分野について、産学連携によってイノベーションを起そうという取り組み。SIPが取り組む課題は11あり、自動走行システムはそのひとつだ。

シンポジウムの前半は、自動車工業会 三崎匡美主査、SIP自動走行システムプログラム 葛巻清吾プログラムディレクター、日本大学 理工学部 岸井隆幸教授らのプレゼンテーションがあり、後半は一般市民10名とシンポジウムプレゼンターらの公開討論会、すなわち市民ダイアログが行われた。

10名の市民は、大学生、AI研究者、起業家、鉄道会社、デザイナー、不動産、コンサルタントなど、幅広い層にわたるが、なんらかの形で都市計画やモビリティにかかわっている人たちだ。プレゼンターは、SIP自動走行プログラム サブプログラムディレクター 有本建男氏、葛巻氏、岸井氏の3名。ダイアログのモデレータはSIP-adus推進委員会 清水和夫氏および岩貞るみこ氏が務めた。

●自工会の中長期ビジョン:飛躍的に進化したモビリティ社会

自動車工業会 三崎主査のセッションは、自工会の中長期モビリティビジョンを紹介するものだった。自工会は、安全性の向上や環境性能、移動効率、情緒的価値といった普遍的なミッションを持っている。その中、課題先進国でもある日本は、さまざまな問題に直面し、モビリティ社会にも変革が起きている。

そのため、中長期ビジョンでは、「モビリティの進化を通じて人々のくらしに感動を与える」ことを目指し、社会変化に対応する10の重点課題を設定している。たとえば安全な移動、環境負荷低減、物流の効率化、多様化する価値観への対応などだ。最終的には2030年の「飛躍的に進化したモビリティ社会」を実現するという。そ

のためには、2020年のオリパラショーケースをマイルストーンにし、モビリティ革命のためのインフラ整備、社会的受容の醸成、法整備などを進めているとした。

●SIP自動走行システムプログラムが目指すもの

続く葛巻プログラムディレクター(PD)のセッションはSIP自動走行システムの活動概要となる。当該プログラムでは、PDを中心に自動走行システム実現に向けて、産学官連携の基礎研究から事業化までを考えている。

取り組みの前提には事故削減、渋滞対策、自動走行システムの早期実現、交通弱者対策など大義があるが、特区制度活用など官とのつながりや業界横断の活動を生かすため、ダイナミックマップやセキュリティおよびHMIの標準化ガイドラインといった協調領域ので取り組みを中心としている。

また出口戦略では、自動走行について、SEAの自動運転レベル(1~5)と、それが適用される条件の有無(レベル)に応じて考える必要があるとする。この関係によって、自動車はオーナーカーとしての側面から、モビリティサービスとしての側面まで意味が変化するからだ。例えばレベル5を実現したクルマでも利用場所が制限される、制御できるならオーナーカーの延長であり、ほぼ制限なくレベル5が適用できる(無人カー)なら、公共交通や移動サービスのためのクルマとなる。

●都市とモビリティ:これからの課題は物流と駐車場

岸井教授のセッションは、都市とモビリティの関係を歴史的にひも解くものだった。

産業革命後のイギリスは都市部の人口集中や公害などから、いわゆる田園都市計画(Garden City)が提唱された。鉄道を整備し郊外都市をつくるというものだ。その後自動車が発明されると、自動車専用道路と居住地や都市の道路を分離する構想(近隣住区理論)も生まれた。人口密度が低い欧米ではこの都市計画はうまくいったが、日本では機能していない面もあるとした。

これからのモビリティと街づくりで、重要なのは空間マネジメントだという。自動車の保有台数が増え、渋滞や事故のような問題に対応するため、都市デザインでは道路を時間によって用途を制限したり、交通手段を制限するような管理が不可欠となる。とくに問題になるのは、駐車場、物流、道路再配分だという。自家用車は都市への流入は制限できても物流、公共交通はできない。宅配のようなラストワンマイルの問題もある。

これらの課題には、ビッグデータやIoTの活用が鍵をにぎるとし、全員が知恵を出し合う必要があるとした。

●自動走行システムというアプリが動く基盤が「都市」

市民ダイアログは、特定の結論を導くものではないが、これからの街づくり、都市の在り方において、自動車、自動走行システムに必要なものはなにか、などが議論された。さまざまな意見が、まさに市民の声として出された。その中から特徴的な意見をいくつか拾ってみたい。

まず、都市デザインやこれからのモビリティに関する意見としては、以下のようなものがあった。

「移動しながらお風呂に入れるクルマがあると便利。動くゴミ箱も面白いと思う」
「東京は車いすでの移動は、時間が読めない。非常にストレス」
「都市デザインをスマートフォンにたとえるなら、自動走行システムはスマホアプリ。OSに相当する基盤が都市デザイン」
「クルマの良さは人や荷物を載せておけること」
「課題が大きい新興国では、技術革新が一気に進むことがある。都市デザインや自動走行システムでも起きる可能性がある」
「2030年は将来ではない。いまから準備しておかないとまちづくりは間に合わない」
「都市計画は10年、30年という単位。自動走行などモビリティ革命の進行速度の差を考えないと、都市計画がそのときの自動車に合ってないかもしれない」

●モビリティ革命には働き方を変える必要がある

都市やモビリティに対する課題についての意見もだされた。

「電車の混雑や渋滞は、同じ時間、同じ曜日で行動するから。働き方を変える必要がある」
「働き方を変えるということは、家族や住まいに対する考え方も変える必要があるかもしれない」
「自動走行システムは、移動効率よりも、雇用に与える影響も議論すべき。どんな仕事がなくなり、どんな雇用が生まれるのか」
「街づくりと仕事を作ることは一体である」
「AI研究では人手不足。仕事が減るというより変わっていくものとしてとらえるべき」

●誰かが取り残されないようにしてほしい

最後に、自動走行システムが普及するために必要なことという視点で出された意見。

「自動走行システムやIoTでなにができるかを最初から決める必要はない。できることをやってみて、応用や広がりはみんなが考えてくれる」
「車いすは法律で6km/h以上出してはいけないことになっている。信号で走る歩行者はもっとスピードをだしているのにおかしい」
「走行データなどがすべてセンシングされることになるが、その意味や、そうすることで何が便利になるか安全になるかを明確にし、情報提供のコンセンサスを作る必要がある」
「多様性は重要で、自動走行システムが普及するとき、おいていかれる人がでないようにすることが大事」

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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